因縁カナダをノートライに抑える快勝
仮想・南アフリカ戦で攻守に手応え

米国太平洋時間の18日(日本時間19日)、アメリカ西海岸カリフォルニア州サンノゼでワールドラグビー パシフィック・ネーションズカップ(PNC)日本—カナダ戦が行われ、日本は前半13分のWTB藤田慶和のトライとFB五郎丸歩ゲームキャプテンの5PGで20—6のスコアで快勝を収めた。

トライは前半13分のWTB藤田の1本だけだったが、卓越したゲームコントロールとディフェンスでカナダに完勝photo by Kenji Demura (RJP)

トライは前半13分のWTB藤田の1本だけだったが、卓越したゲームコントロールとDFでカナダに完勝
photo by RJP Kenji Demura

 

「フィジカルである必要があるし、ソリッドなディフェンスを続ける姿勢も必要。アタックではボールを動かし続けること」(エディー・ジョーンズHC)

9月18日に開幕するラグビーワールドカップ(RWC)イングランド大会開幕までちょうど2ヶ月。

フィジカルな対戦相手であるということもあって、2ヶ月後に南イングランドのブライトンで対戦する南アフリカを仮想した試合でもあったカナダ戦。

日本代表にとっては、豪雨のため途中打ち切りとなった5月23日の香港とのアウェー戦以来の実戦でもあったが、立ち上がりから指揮官が求めた3要素で合格点と言えるパフォーマンスを出しながら、自分たちのペースで試合を進めた。

昨年の対戦で、試合の入りに失敗して9—25と大きくリードされた苦い経験もあり「最初の20分だけでいい」(FB五郎丸ゲームキャプテン)というくらい意識されていた立ち上がりの時間帯から、フィジカル面でしっかり対抗して、セットプレーは安定。キープしたボールはどんどん動かして、相手ディフェンスに揺さぶりをかけていく意図通りのアタックが炸裂する。

日本は前半4分にFB五郎丸ゲームキャプテンのPGで先制するが、そのペナルティも「試合を通してしっかりプレッシャーをかけることができた」(PR平島久照)というスクラムをしっかり組んだ後、ブラインドWTBの藤田慶和が内側にスペースをアタックして大きくゲイン。さらにSO立川が縦を突いた後に、大きくボールを逆サイドに動かしてWTB福岡堅樹がカナダゴールに迫った密集で起きたものだった。

さらに、13分にはラインアウトを起点にまずはNO8ヘイデン・ホップグッドがフィジカルに前に出た後、ラックからの素早い球出しでBKへ。

スーパーラグビーのワラタスから戻り、このカナダ戦が今年の日本代表での初めての試合だったCTB松島幸太朗が、日本のスピードについていけない相手ディフェンスラインにできたギャップを抜群のコース取りとスピードで抜き去ってチャンスを拡大し、「あそこはちょっと感じた」という藤田がこれまたいいコース取りで寄って行ったところにラストパスを出して、トライを決めた。

「(ワラタスで)アタックで一番勉強になったのはランコース」という松島の成長ぶり、そしてひとりのプレーにまわりが反応するチームとしてのコミュニケーション能力が高まっていることを感じさせる見事なアタックだった。

WTB藤田のトライをお膳立てした快走(写真)だけではなくディフェンスでも成長した姿を披露したCTB松島photo by Kenji Demura (RJP)

WTB藤田のトライをお膳立てした快走(写真)だけではなくDFでも成長した姿を披露したCTB松島
photo by RJP Kenji Demura

 

先発10番、12番不在の状況でも
しっかりゲームをコントロール

結局、トライはこの1本だけに終わったが、試合後、ジョーンズHCが「昨年の逆転勝ちはラッキーだった面もあったが、今回は日本がカナダよりも強いチームだったことははっきりしていた」と総括したとおり、間違いなく80分間を通して試合を支配していたのは日本だった。

顔面を強打したSO立川理道が前半10分で早くも退き、同33分にはインサイドCTB田村優が危険なタックルのためシンビンとなった。

先発の10番と12番が揃ってピッチからいなくなった状況でも試合をしっかりコントロールできた点こそ、日本代表の成長の証しとも言えた。

立川に代わって、前半10分から指令塔を務めた廣瀬俊朗は「ゲームコントロールとスキルのところを気つけて入った。出せるものは出せた」というプレーぶりでチームを落ち着かせ、「久しぶりのSOとして長い時間のプレーだったが、よくやってくれた」とジョーンズHCからも高い評価を得るパフォーマンスを見せた。

前半33分からの14人対15人の状況では、自陣ラインアウトからモールを組んだり、角度も距離もある地点からもPGを狙ったり、時間を稼ぐゲームパフォーマンスも見せて、カナダに得点を与えなかった。

後半に入っても、トライこそ奪えなかったものの、日本がゲームコントロールしている状況は変わらず、試合終了間際にカナダに自陣ゴール前に釘付けにされても「個人のタックルのところとサポートのところの両方が良かった」(SO廣瀬)というディフェンス力は崩れず、ノートライに抑えての快勝をものにした。

「対南アフリカということを考えるなら、もっとスピードある状態でボールを動かしていかないと。もっと正確に」と、試合後ジョーンズHCは新たな課題にも言及したが、その一方で厳しい状況にもパニックにならずに80分間、試合を支配した選手たちの満足度は高かった。

「今日は合格点が与えられると思うし、満足している。(ジョーンズHCの語った課題も)チャンスは作れているし、これから精度を上げていけばいい。合格の中でプラスアルファの宿題みたいなものでしょう。ピークはワールドカップに持っていけばいいのも確かだし(FB五郎丸ゲームキャプテン)」

過去2大会のW杯で引き分けている「ライバル」(LO大野均)相手に、着実な成長ぶりを見せつけた日本のPNC第2戦は9月のW杯で対戦することが決まっているアメリカとの直接対決(現地時間24日=日本時間25日、サクラメント)となる。

text&photo by Kenji Demura

80分間エネルギッシュにプレーしたFLブロードハースト。「復帰組では松島とブロードハーストが一番良かった」(ジョーンズHC)photo by Kenji Demura (RJP)

80分間エネルギッシュにプレーしたFLブロードハースト。「復帰組では松島とブロードハーストが一番良かった」(ジョーンズHC)
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