世紀のアップセットを成し遂げたフランスを抑え豪州が2度目のW杯王者に
NZはまたも王座にたどり着けず、期待を集めた平尾ジャパンも3戦3敗で沈む

五輪、サッカーW杯などに匹敵する事業規模の大会へ

第4回ワールドカップはウェールズを中心に、欧州5カ国を舞台に開催された。ウェールズではこの大会に向け、首都カーディフのアームズ・パークにあったナショナルスタジアムを解体し、収容8万人、開閉式屋根を持つ最新鋭の巨大スタジアム「ミレニアム・スタジアム」を新設した。それは、ラグビーワールドカップが、オリンピック、サッカーのワールドカップなどと同様に、新たなインフラ整備を伴う大事業に発展してきたことを示していた。

前回大会では、「モチベーションが上がらない」と言われてきた3位決定戦に意義を持たせるため、次回大会へのシード権を3位までに限定。その結果、ウェールズ大会にシード権を得たのは95年大会で決勝を戦った南アフリカとNZ、3位のフランス、そして開催国のウェールズのみ。4位のイングランド、準々決勝で敗れたオーストラリアやスコットランド、アイルランド、サモアも大陸別の予選に出場することになった。

前回大会でNZに17対145の大敗を喫した日本は、平尾誠二監督のもと、アンドリュー・マコーミックを初めての外国出身キャプテンに据え、前回大会ではオールブラックスで出場していたNO8ジェイミー・ジョセフ、SHグレアム・バショップを代表に加える大胆な用兵を断行。大会前のパシフィックリム選手権では初めてサモアを破るなど初優勝を飾ったが、本大会でのサモアは一変。あからさまな激しいコンタクトで、日本のペースを崩しに来た。サモアに9対43で敗れた日本は、続くウェールズにはCTB元木由記雄の連続タックルで奪ったターンオーバーからWTB大畑大介が大会屈指の鮮烈なトライを決めるが、15対64で大敗。最後のアルゼンチン戦も12対33のノートライ負け。過去3大会は全ての試合でトライを挙げてきた日本だったが、3試合で僅か2トライと、力を出せずに大会を終えた。

圧倒的な個性が塊となってNZを葬ったフランスも豪州の最先端ラグビーを打ち破れず

ワールドカップは、この大会から出場枠を20に拡大。大会は4カ国×5プールで1次リーグを行い(ホストの5協会に1プールずつが割り当てられた)、各組1位は自動的に決勝トーナメント進出。各組2位は、勝ち点、得失点差などで決定した「3位ベスト」を加えた6チームで「準々決勝プレーオフ」を行い、勝者3チームが8強入りするという複雑なフォーマットで行われた。

この大会最大の「事件」は、優勝候補筆頭と呼ばれたオールブラックスの敗退だった。ロムー、ウィルソン、カレンの超攻撃的バックスリーを軸に、1次リーグでは3試合で平均55得点。準々決勝でもスコットランドを30対18と退けたが、準決勝ではフランスを相手に、最大14点差をつけながら31対43の逆転負け。フランスは、大会途中の追加招集ながら猛タックルを連発したSHガルティエ、DGとPGで瞬く間に点差を縮めたSOラメゾンというHB団の冷静なゲームメーク、僅かなチャンスに瞬時に反応したドミニシ、ベルナサルの両WTBなど個性的な名手たちが、強烈な存在感を見せつけた。

優勝は、そのフランスを決勝で35対12で下したオーストラリア。準決勝では前回覇者・南アフリカを息詰まる延長戦の末に27対21で下す勝負強さを見せた。91年大会の優勝を知るLOイールズ主将、HOキアンズ、CTBホランのベテラン勢と、SHグレーガンとSOラーカムのHB団など中堅・若手が絶妙に溶け合った上に、FLフィネガンをスーパーサブで起用するなど、導入間もない選手の自由入れ替え制度もフルに活用したマックイン監督の手腕も光った。

大会に強烈なインパクトを残したのはアルゼンチン。1次リーグでは日本と同じD組の3位ながら『3位ベスト』の切符を掴むと、アイルランドとのでプレーオフは後半48分まで続いた激戦を守りきり、初の8強進出を果たした。得点王を獲得したSOケサダの、両腕をダラリとぶら下げ、ゆっくりと時間をかけて蹴るプレースキック、情熱的なプレーでFWをリードしたSHピチョットのパフォーマンスも印象的だった。

text by Nobuhiko Otomo


 

■成績・日本代表メンバー

※メンバー表内のC=主将 キャップ数は大会開幕時のもの

past_4_details