少数精鋭主義スコッド編成で
経験値を高めた4年間の軌跡

日本代表のエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が、就任以来何度も言及してきたのが「チームの総キャップ数」だ。

「ワールドカップ(W杯)で優勝するチームは先発15人の総キャップ数が600前後。1人平均40キャップ程度。それだけのインターナショナル試合の経験値が必要になる」というのだ。8月31日のW杯メンバー発表会見では「600という数字には届かなかったけれど、経験値の高いメンバーも含んだスコッドを編成できた」と話した。

そんなジョーンズHCの狙いは、4年間のテストマッチで起用した選手の数にも表れている。

同じくW杯とW杯の間、1人のHCが指揮を執ったという意味で、ジョン・カーワン(JK)時代の08~11年と、エディー・ジョーンズ時代の12~15年を比較してみた。

JK時代の4年間は、テストマッチ39試合に78人の選手を起用した。途中出場も含め、1試合で出場した選手は平均20人。起用された選手1人あたりの平均キャップ数は10だった。

対してエディー・ジョーンズ時代の4年間は、テストマッチは44試合と増えているのに、出場した選手は66人とJK時代の4年間よりも少ないのだ。1試合平均の出場選手数は21人と、JK時代から微増にとどまるが、1人あたりの平均キャップ数は14と、JK時代を大きく上回る。少数精鋭主義で、テストマッチの経験値を高めてきたのがエディー・ジョーンズジャパンの足取りと言えそうだ。

それぞれのジャパンのキャップ数ランキングにもそれは現れている。

エディー・ジョーンズジャパンの4年間で最も多くのテストマッチに出場したのはFB五郎丸歩の42試合で、畠山健介41、大野均40試合と続く。この3人は、4年間のテストマッチのうち90%以上に出場した。4位の立川理道は39試合で89%。

JK時代の最多は菊谷崇で、テストマッチ39試合中34試合に出場、皆勤率は87%だったが、エディー・ジョーンズジャパンではJK時代1位の菊谷を超える皆勤率の選手が4人もいたわけだ。80%以上の人数は、JK時代はCTBニコラスライアン(82%)を加えた2人だけだったのに対し、エディー・ジョーンズジャパンはPR山下裕史とSH日和佐篤(84%)、LO伊藤鐘史(80%)を加えた7人にのぼった。4年間、一貫したコーチングとS&Cも含めたトレーニング指導を受けてきた選手たちが、同じ顔触れでテストマッチの真剣勝負を戦う経験を重ねることで、チームとしての試合の経験値を高める。それが、一時世界ランク9位まで躍進する快進撃に繫がったと言えそうだ。

それはペア記録にも現れていて、大野均&トンプソンルークはLOでのペア出場がジョージア戦で24試合に達した(同時先発出場のみ)。従来、日本代表のLOペア記録は林敏之&大八木淳史が1983年から1991年にかけて重ねた19試合だったから、24年ぶりに記録を塗り替えたわけだ。林&大八木の最後のペア出場は1991年W杯のジンバブエ戦。日本にとってW杯唯一の勝利だ。それから24年、伝説の名ロックの記録を塗り替えたペアが、日本を24年ぶりのW杯勝利に導くか?

text by Nobuhiko Otomo

エディ・ジョーンズジャパンのキャップ数ランク
(2012年4月~2015年9月ジョージア戦まで44試合)

順位 氏名 試合数 ポジション 皆勤率
1 五郎丸歩 42 FB 95.5
2 畠山健介 41 PR 93.2
3 大野 均 40 LO 90.9
4 立川理道 39 SO 88.6
5 山下裕史 37 PR 84.1
日和佐篤 37 SH 84.1
7 伊藤鐘史 35 LO 79.5
8 田村 優 33 CTB 75
9 ツイヘンドリック 32 FL 72.7
10 木津武士 30 HO 68.2

ジョン・カーワンジャパンのキャップ数ランク
(2008年4月~2011年8月アメリカ戦まで39試合)

順位 氏名 試合数 ポジション 皆勤率
1 菊谷 崇 34 FL、No8 87.2
2 ニコラスライアン 32 CTB 82.1
3 北川俊澄 31 LO 79.5
4 ウェブ将武 30 FB、SO 76.9
5 田中史朗 28 SH 71.8
ジェームズ・アレジ 28 SO 71.8
7 大野 均 27 LO 69.2
8 トンプソンルーク 25 LO 64.1
9 小野澤宏時 24 WTB 61.5
平島久照 24 PR 61.5