日本らしいアタックで追いつめるも

判断ミスから失トライ重ね後半失速

23日、イングランド西部グロスターでラグビーワールドカップ(RWC)2015プールB、スコットランド対日本戦が行われ、前半はモールでトライを奪うなど互角に戦えた日本だったが、後半、「判断ミス」(FLリーチ マイケルキャプテン)が相次ぐ展開となり、スコットランドに5トライを重ねられて10—45で敗れた。本大会での成績を1勝1敗勝ち点4とした日本は、10月3日、ミルトンキーンズでサモアとプールB第3戦を戦う予定となっている。

南アフリカ戦から中3日という厳しい条件の下、スコットランドを追いつめきれなかった日本

南アフリカ戦から中3日という厳しい条件の下、スコットランドを追いつめきれなかった日本
photo by Kenji Demura

間違いなくRWC史上最大のアップセットだった南アフリカ戦勝利から中3日で迎えたスコットランド戦。

過去のRWCでニュージーランドとオーストラリアにしか負けていなかった真の強豪を奈落の底に突き落としたテンポのいい日本のアタックはこの日も欧州6ヶ国対抗の雄を度々追いつめた。

 

何度もスコットランド陣深くまで攻め込みながら、奪ったトライは前半15分にモールで押し切った1本のみ。

前半15分のモールでのトライで勢いに乗ったかと思われたが、最終的にはトライはこの1本のみに終わった

前半15分のモールでのトライで勢いに乗ったかと思われたが、最終的にはトライはこの1本のみに終わった

photo by Kenji Demura

一方、「2ヶ月半、日本の試合のビデオを見て研究してきた」(スコットランド代表バーン・コッター監督)というスコットランドは、半ば予想されていたとおりキック(ハイパント)を多用して日本にプレッシャーをかけていくスタイルで主導権を握る。

 

立ち上がりの時間帯はスクラムでも反則を 取られたこともあって、3分、12分、18分、 20分と、スコットランドSHグレイグ・レイドロー主将に4PGを決められて、前半は7—12で折り返した。

 

「ひとつがチャンスをものにし、もうひとつは

そうじゃなかった」(ジョーンズHC)

 

「ハーフタイム時点では勝つチャンスがあった」

試合後の記者会見でエディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチが振り返ったとおり、得点こそ前述のとおりモールによる1本だけだったものの、南アフリカ戦でも前半はリードされていたし、「ジャパンのテンポになればどんどん前に行けるとわかった」(SO立川理道)とアタック面での手応えも感じていた。

前半最後のプレーでは、スコットランドが日本ゴールに迫ったが、WTBトミー・シーモアにFB五郎丸歩がしっかりタックルを決めて、トライを許さないでハーフタイムを迎えるなど、流れ的にはいいかたちで後半へ(前半終了時点でのスコアは7—12)。

ハーフタイム前の流れのままに、後半に入っても日本が自分たちのペースでアタックを続ける時間帯が続いた。

特に、目立ったのが、南アフリカ戦の終盤に途中出場して、相手ディフェンスをズタズタにしたNO8アマナキ・レレィ・マフィの突破力。

後半開始からわずかな時間帯に2度のブレイクを見せたマフィに引っ張られるように、一気にスコットランド陣に攻め込んだ日本は6分にFB五郎丸歩がPGを決めて2点差に追い上げたが、そのPKを勝ち取った一連のプレーでマフィが負傷。そのまま退場を余儀なくされてしまう。

間違いなく、このゲームの一番の牽引役だったマフィがグラウンドを去ったのを境に、日本はそれまで持っていた勢いを失ってしまう。

前半からチームを勢いづける突破を繰り返したNO8マフィだが、後半開始早々、無念の負傷退

前半からチームを勢いづける突破を繰り返したNO8マフィだが、後半開始早々、無念の負傷退場

photo by Kenji Demura

 

「前半は前にも出られていたし、後半の最初もナキ(=NO8マフィ)が抜けて、でもゴール前で取り切れなかった。そこで取れていれば試合の流れは変わっていた。

(PGを決めた)その後のキックオフになった時に、僕のイメージでは敵陣で勝負と思っていたが、チャンスがあったので自陣から回して、ミスが起きた。自陣で相手ボールになってしまった。そこがキーポイントだった」

 

SH田中史朗がそう冷静に振り返ったとおり、前述のPGの後のキックオフで自陣から積極的に攻めた日本ボールをターンオーバーしたスコットランドがしつこくFWで攻めた後、最後は外のスペースに1対1の場面をつくってFLジョン・ハーディが左隅にトライ。

 

「疲れは関係ない」

ジョーンズHCもリーチキャプテンも否定したが、もちろん南アフリカ戦から中3日という厳しい条件が影響を与えた面があったのも確かだろう。

「タックルがよく、ボールをスローダウンにしてきた。2人目のタックルが厳しかった」(ジョーンズHC)

「後半、スコットランドがブレイクダウンで絡んできて、スローテンポにしてきていた」(SO立川)

そんな証言どおり、後半になって、より「対日本」を意識した戦いを徹底してきたスコットランドに対して、日本はアタックしながらもなかなか前に出られなくなり、焦りから判断ミスを重ねる悪循環に陥ってしまう。

敵陣深くまで攻め込んだ後にパスをインターセプトされたものなど、後半だけで5トライを奪われ、最終的には10—45にまで点差を広げられた。

「ひとつのチームがチャンスをものにして、もうひとつはそうじゃなかった」

ジョーンズHCはそんなふうに、スコットランド戦をサマリー。

「(南アフリカ戦と)一番違ったのは22m入ってからポイントを取れなかったこと。南アフリカ戦ではPGで3点を重ねて、モールでもトライを取った。今回はチャレンジしたけど、トライを取れなかった。

4年間、練習してきてもこの結果。しょうがない」

悔しさを押し隠すように、そう総括したリーチキャプテンをはじめ、チームに誰一人として、両チームの間に35点もの差があるとは思っていない。それは、この日イングランドでもラグビータウンとして知られるグロスターに集ったファンにも共通する認識だろう。

あと数m、あと数㎝が遠く……何度もスコットランドゴールに迫ったが取りきれないシーンが続いた

あと数m、あと数㎝が遠く……何度もスコットランドゴールに迫ったが取りきれないシーンが続いた

photo by Kenji Demura

 

確かに、体のコンディションの問題もあるだろうが、それよりも問題だったのは、ずっと焦点を合わせてきた南アフリカ戦に比べ、「準備の時間が少なかった」(PR山下裕史)点かもしれない。

その点では、初戦だった日本対策をしっかり立ててきたスコットランドに比べて劣っていたのは否めない。

「準々決勝に進出すること。最も印象に残るチームとして認識されること」

ジョーンズHCが掲げるRWC2015での目標達成のため、中9日という体も心も頭もしっかり準備できる日程で戦える次のサモア戦こそ勝負の一戦となる。

text by Kenji Demura

2年前の対戦では2トライを奪ったWTB福岡も決定的な走りは披露できず

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photo by Kenji Demura