WRWC出場を決めたフィジー戦後半の内容を最初から!

アウェーで香港を圧倒してこそ本大会勝利が見えてくる

 

17日、女子ラグビーワールドカップ (WRWC)2017 アジア・オセアニア地区予選、日本対香港戦が香港フットボールクラブで行われる。

 

13日に行われた対フィジー戦で、日本は55−0で快勝。

日本、香港、フィジーの3カ国の総当たりで争われる本予選は1位と2位に来年8月にアイルランドで開催される女子ラグビーワールドカップ 2017への出場権が与えられるが、すでに大会初戦で香港に敗れていたフィジーはこれで3位が確定。

日本と香港のアイルランド行きが決まった。

 

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フィジーを下してWRWC出場を決めた日本。17日に控える香港戦では内容が伴った快勝が求められる
photo by Kenji Demura

 

「素直に嬉しい」

実に4大会ぶりとなるWRWC出場を決めたフィジー戦直後、ホッとした表情でそう語ったPR斎藤聖奈主将だったが、話が試合内容に及ぶと、ことに前半の内容に関しては反省しきりだった。

「前半は自滅。ボールをポンポンとパスしてパスミスで自滅。ペナルティもあったし、(点数を離しても)安心する感じはなかった。前半は落ち着けなかった」

 

テストマッチとしては5月に行われた女子アジアチャンピオンシップの香港戦(ホーム&アウェー)以来。

その上、「国内でもプレッシャーのかかるゲームを経験していない」(有水剛志ヘッドコーチ)という状況でいきなりWRWC予選に臨むことになったメンバーに緊張するなという方が無理だろう。

 

立ち上がりから敵陣に攻め込んだ日本はいきなりのPGチャンスはショットを選択せずにラインアウトからモールで攻めたが、取り切れないとみるや、確実にFB清水麻有のPGで先制(前半4分)。

 

「(試合前は)緊張しちゃっていましたけど、プレーが始まったら、緊張は忘れて、自分らしいプレーができた」という清水は10分にNO8マテイトンガ・ボギドゥラウマイナダヴェ、SO山中美緒などの突破からできたチャンスにCTB冨田真紀子からパスをもらい、フィジーDF2人を外側に振り切ってトライ。

 

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FB清水が全21得点を稼ぎ出したフィジー戦前半だったが、チーム全体の動きには課題が残った
photo by Kenji Demura

 

35分にもトライを奪った他、3PGと1ゴールを決めた清水が全得点を記録するかたちで21−0で前半を折り返した日本だったが、その得点差ほどには内容は一方的ではなかった。

 

「プレッシャーがかかって、いつもはしないようなプレーをしだした。ギリギリのパスをしだしたり、ハンドリングエラーがあそこまでとは……。ハーフタイムで修正したのも、丁寧なパス、丁寧なキャッチ。そこだけ」(有水HC)

 

自分たちのミスもあって攻め込まれるシーンもあった前半だったが、「(フィジーの選手は)大きいし、重いし、一瞬のスピードも速くてゲインされたけど、みんなで守りきってトライを取られなかった」と、全得点を記録した清水がアタックよりもDF面を強調したように、要所でビッグタックルも決まり、苦しみながらも失点は0に抑えた。

 

「香港に合わせてプレーしないで、ワールドカップ水準のプレーをする」(斎藤主将)

 

苦しかった40分間を無失点で乗り切り、ハーフタイムでの修正点も落ち着いて確認できた後半は、斎藤主将が「自分たちのラグビーができたと思います」と言い切る内容で、2分に敵陣22m付近のスクラムからのサインプレーでSO山中→WTB谷口令子とつないでフィジーゴールを陥れたのを皮切りに、目指している「運動量で相手に走り勝つ高速ファイズアタック」が炸裂して計6トライを重ねた。

 

「最初から後半のようなプレーをしないといけない」(有水HC)

 

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フィジー戦後半はWTB谷口を皮切りに6トライを重ね、日本らしい高速アタックが炸裂した
photo by Kenji Demura

 

3大会連続してWRWC出場を逃していた日本だったが、14年に就任以来、有水HCが強調してきたのは「我々の目標はラグビーワールドカップ出場ではなく、ラグビーワールドカップでの勝利」。

 

その意味では、悲願のWRWC出場を決めたとはいえ、フィジー戦での内容では世界とは戦えないことは明らかでもある。

 

「緊張以前に、このチームはどの試合でも前半は苦戦する。やるべきことができていない。そこを断ち切らない限り、ラグビーワールドカップの勝ちにはつながらない。前半の入りが課題」(HO鈴木実沙紀)

 

元々、今予選での目標は2勝。

苦しい面も多かったフィジー戦を経験した後だけに、香港戦では「目標はラグビーワールドカップでの勝利」と胸を張って言える内容での勝利が求められることになる。

 

「香港のホームでの戦いだけに、相手には実力以上のものが出るはず。その香港をアウェーで圧倒できるようにならないと、ラグビーワールドカップでの勝利は見えてこない。香港と日本のラグビースタイルは似ている部分があるが、精度で上回って、倒したい」(有水HC)

 

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高校2年生のSH津久井も後半は日本のテンポアップに貢献。香港戦では「最初から出せるようにしたい」
photo by Kenji Demura

 

前述のとおり、香港とは5月にホームアウェー戦を戦い、2勝。アウェー戦では39—3というスコアで勝利を収めている。

 

「ラグビーワールドカップで勝つというのをベースにして香港戦に臨みたい。まだまだラグビーワールドカップで勝つには修正しなければいけないことがたくさんある。全員の意識を変えないと。香港に合わせてプレーしないで、ラグビーワールドカップ水準のプレーをする。自分たちで課題として挙げているのは、早いセット。セット負けしない。DFでもセット勝ちしてDFから仕掛けていく」(PR斎藤主将)

 

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あくまでも目標はWRWCでの勝利。中3日でのアウェー戦で香港を圧倒し、アイルランドを見据える
photo by Kenji Demura

 

ホームチームが中6日なのに対して、日本は中3日。

そんな悪条件にもかかわらず、7ヶ月前を上回る内容での勝利が求められる香港戦こそ、悲願のラグビーワールドカップ出場権を手にしたチームが、本当の目標達成に近づくために非常に大きな意味を持つ試合になる。

 

 

text by Kenji Demura