日本特有の速さ、低さ、細部へのこだわりを生かし

世界王者に対する史上最大のアップセットを狙う

フランス時間の30日、「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ2018」が開幕する。今季、同チャンピオンシップへの再昇格を果たしたU20日本代表はニュージーランド、オーストラリア、ウェールズという強豪チームと同じA組で総当たりのプール戦で戦い、「トップ8入り」を目指すことになる。

大会初日で日本が対戦するのは前回覇者というだけではなく、08年に同大会が創設されて以来、計6度世界一に輝いてきた絶対王者のニュージーランド(フランス時間30日21時=日本時間31日4時キックオフ/仏南西部ナルボンヌ)。

いきなり世界一のチームとの対戦となるが、U20日本代表が狙うのは、2015年のラグビーワールドカップで日本代表がやってのけたような、世界を驚かせる大アップセットだ。

「どう本気で番狂わせを起こすのかということを、『アップセット』という言葉を使ってミーティングで言い続けてきた。本人たちはその気になっている」(遠藤ヘッドコーチ)

昨年、下部大会であるワールドラグビーU20トロフィーで優勝し、チャンピオンシップへの再昇格を果たしたばかりの日本が、絶対王者であるニュージーランドを倒せば、実質的には2015年9月19日にイングランド南部のブライトンで起きたこと以上のアップセットになるのも確かだろう。

攻守に日本らしいラグビーで王者ニュージランドに挑むU20日本代表 photo by Kenji Demura

ではどうやって、世界一のチームを倒すのか。
遠藤HCが中心となってつくり上げているのは「U20なので、よりディティールにこだわる」ラグビーだ。
「ディティールではジャパンを超える」
常にそんな言葉を発しながら、世界と戦える日本ラグビーのブラッシュアップに取り組んできた。
「フル代表のやっている『アグレッシブなアタッキングラグビーを仕掛けて、アンストラクチャーのところで勝負』というのは変わらない。
去年は蹴って、ターンオーバーになった時のアタックオプション自体は一種類で、プレッシャーをかけられたり、雨が降ったりしたら、できないアタッキングラグビーだった。
今年は状況や点差などによって違うアタック、違うラグビーができるようにつくってきた。状況によってはもっとゲインライン際を抉っていったり、みんなが順目に沸いていくアタックだったり。3種類くらいつくった」

CTBフィフィタの突破力も日本のアタックの幅を広げるためにも重要になる photo by Kenji Demura

「体の大きさでは劣るが、自分たちは1対1で勝つチーム。

ニュージーランドにも1対1で勝つ」(FL岡山キャプテン)

もちろん、日本が世界で戦う上ではより重要性が高いディフェンスに関しても、徹底的にこだわってきた。
「防御における最大のポイントはいかに前に出て、タックルに入れるか。ワン・オン・ワンでゲインラインまで攻められてタックルすれば、タックル成功率自体は100%だが、それよりも狙って前に出て、ひとりは外されても、もうひとりがしっかりタックルに入る。その場合、タックル成功率では50%だが、そっちの方がいいという考え方。
前に出る準備動作。セットスピード上げるところなど、相当細かくやった。まだまだナチュラルにはできていない部分、意識しないとできない部分もあるが、前に出て圧をかけられるディフェンスができてきている。
このチームはディフェンスを得意とする選手が多いし、みんな守りに多くの時間を割いたことを粋に感じてくれた」

そんなふうにU20日本代表が目指す前に出るディフェンスを体現する存在でもある167㎝の小柄なFL、岡山仙治キャプテンは「体の大きさでは劣る部分あるが、自分たちは1対1で勝つチーム。相手がニュージーランでも1対1で勝つ」と、胸を張る。
「相手がどこのチームでも、しっかり前に出て、低いタックルで倒す。そこの部分は変わらず、アグレッシブに前に出て低いタックルを見せていきたい。
ニュージーランドはアンストラクチャーが得意なチーム。相手のミスボールからトライまで持っていく。僕らもアンストラクチャーから仕掛けるラグビーずっと練習してきたし、そこで僕らが上回るような試合をしたい」

167㎝のサイズながらFL岡山主将は常に低いプレーでチームに勢いを与える

リーダーのひとりであるCTB森勇登も「ディフェンスではがむしゃらに。アタックでは冷静にディシジョン。1対1にこだわっていきたい」と、世界でもワン・オン・ワンでしっかり勝負する重要性を強調する。
「ニュージーランドは外に振ってくるし、ディフェンスは難しいが、チェーンを崩さないようにしていけば大丈夫。ゾーン、区域で、戦い方を間違わずにやっていけば、いいアタックができて、トライまでいける。
去年のチャンピオンに対して、チームの目標であるチャンレンジということを忘れずに、しっかり練習してきたことをやるだけ」

「ニュージーランドは世界一のスピードでやっていると思うが、自分たちはその上をいく。
1対1が最初から起きていて、同じ条件で1対1をヨーイドンでやったら、重たくては速い方が勝つだろうが、そうではなくて、最後までどこからがヨーイドンがわからなくて、最後にヨーイドンとなる局面をつくれば、集中力、キメの細かさとか、日本人にしかできない伝統工芸ができる。そこを追求したつもり。最後の最後まで2オプション持ちながらで行って、実際にボールはひとつなので最後にはワン・オン・ワンになる。そこはこだわった」(遠藤HC)

「ディティールでジャパンを超える」ことを植え付けてきた遠藤HC。十分な手応えを感じている

速さ、低さ、細部へのこだわり。
日本ラグビーの特徴を前面に出した戦いぶりに関しては、フランス入り前に行ったアイルランド遠征でも手応えをつかんだ。
世界王者に対して日本流にワン・オン・ワンを制して、史上最大のアップセットを狙う。

text by Kenji Demura