目の肥えた地元ファンを引きつけながらも1点差の惜敗
トライ数で上回りながらも中盤を制せず8強入り逃がす
「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ2018」参加のためフランスに滞在中のU20日本代表が、現地時間の7日(日本時間8日)、プール戦最終戦となるU20ウェールズ代表戦を戦った。日本は前半11分のWTBハラトア・ヴァイレアの先制トライを皮切りに計3トライを挙げたものの、PGチャンスを確実に狙ってきたウェールズの手堅い試合運びに逆転を許し、17—18と1点差での惜敗となった。
この結果、同チャンピオンシップ後半戦のノックアウトステージで日本は9—12位決定トーナメントで戦うことになり、次戦は現地時間の12日(日本時間13日)のジョージア戦が予定されている。
初戦のニュージーランド戦では、開始10分で3トライを奪われ、続くオーストラリア戦でも前半3分、7分と連続トライを許した。
「試合の入りを修正する」(FL岡山仙治キャプテン)のは、日本が強豪国と対等に渡り合っていくための絶対条件であることを体に染み込ませて臨んだウェールズ戦。
U20日本代表は完璧と言っていい立ち上がりを見せることに成功する。
いきなり自陣に攻め込まれた日本だったが、まずは相手の力量を試すかのようにモールを組み、ダイレクトプレー中心に攻めてきたウェールズのアタックを粘りのディフェンスで守り切り、得点を許さない。
「試合の入り。攻め込まれたときのディフェンスでしっかり粘る。そこはしっかりできていた」(FL山本凱)という手応えを感じながら最初の10分間を守り切った日本は、敵陣に入ったスクラムからSO侭田洋翔が飛ばしパスをWTBヴァイレアに通して先制トライを奪い、フランスの中でも最もラグビーが盛んな都市と言っていいペルピニャンの目の肥えたファンを驚かせた。
16分にスクラムから狭いサイドを相手WTBに破られてトライを許すが、23分にはラインアウトからモールを組んでトライを奪い、再びリードする(10−7)。
「中盤を制する」(遠藤HC)
ニュージーランド、オーストラリアと戦った上で、日本がウェールズを倒すために強調したテーマだった。
時間帯であり、エリアでもあり、「真ん中を制してこそ、自分たちのラグビーが世界に対してアピールしていける」という意思表明とも言えた。
そんな思いを持って、「本気で勝ちにいった」(岡山キャプテン)ウェールズ戦だったが、結論から言うなら、この試合の中盤を制する戦いに日本は勝つことはできなかった。
「ラグビーの試合を制する時の中盤の大事さ。まだ、我慢比べを制することができていない。キックを蹴り合う中で、タックルミスとか、セットプレーのミス、キックそのものの判断のミス。まだまだ上のレベルへ成長して行けるというのも感じた」(遠藤HC)
立ち上がりから、日本の粘りのディフェンスに苦しんでいたウェールズは、落ち着いた判断で前半31分、36分と確実にPGを刻んで再逆転に成功。
前半終了間際には、日本ゴール前でウェールズがスクラムからアタックを重ねるが、日本は再びゴール前での守りの集中力を高めてしのぎ、13—10とウェールズの3点リードで前半を終了した。
「僕の中では『ここがあかんかった』というのはない」(岡山主将)
後半に入っても、前半途中から劣勢になっていたスクラムでプレッシャーをかけられ、ラインアウトからのモールも押し込めなくなるなど、日本が攻めあぐむ中、12分に日本のドロップアウトから相手WTBに走られて、ウェールズに2トライ目を許して、点差を8点に広げられる。
それでもFW第1列を入れ替えたあとの終盤の時間帯は再び日本セットプレーが安定するようになり、「後半修正して、ロングキックを多めに蹴っていった」(HC森勇登)というキッキングゲームも機能し始めて、試合の終盤は敵陣でウェールズにプレッシャーをかけ続ける展開となる。
日本にこの日3本目となる追撃トライが出たのは後半35分。
敵陣深くのPK からCTBシオエリ・ヴァカラヒが強引に突っ込み、そのまま近場のアタックを続けて、最後はこの日はWTBで起用されていたシオサイア・フィフィタがインゴールで押さえたことが認められた。
CTB森が蹴ったコンバージョンも決まり、17—18と1点に追い上げたが残り時間は3分ほど。
このあとのキックオフからのボールを日本は生かし切れず、そのままウェールズが日本陣でボールをキープする時間が続く。80分間が経過したあと、ようやく相手のミスから日本が最後のボールを得たが、自陣から出られないまま試合終了。
試合途中から、U20日本代表の果敢なラグビーの虜となっていた感じのペルピニャンの観衆にもため息が広がるかたちで、日本は1点差で金星を逃すかたちとなった。
「いいラグビーをしたら、観客が味方になってくれるというのも証明できたし、試合中、日本を応援してくれる声も聞こえていた。これがラグビーのいいところというのを感じながらプレーできたが、その応援に応えるためにも結果を出したかった。本気で勝ちにいったので、本当に悔しい」
岡山キャプテンは「僕の中では『ここがあかんかった』というのはない」と、チームとしてすべてを出しきった上での敗戦の悔しさをそう語る。
遠藤HCも「選手はやり切った」と、すべてを出しきってきれた選手たちを労いながらも、わずか1点、相手を上回れなかった要因に関しては冷静に以下のように振り返った。
「中盤の支配を完全にはできなかったこと。最後にツケがきた。『中盤を制する』という目標自体、選手が立てたもの。それができないとどうなるかというのがわかったと思う。こんなに厳しいんだぞというのを今日学べたし、それを活かさない手はない」
「1対1でも勝てるチーム」(岡山キャプテン)を標榜し、実際、アタックでもディフェンスも十分通用した。
それは、試合途中から「ジャポン、ジャポン」と完全に日本の応援に回っていたペルピニャンの観衆の反応が証明してもいる。
残り2試合、世界の強豪相手に結果を出していくためには「ジャパン、ディテールにこだわるチーム。ディテールにこだわりきる」(FL山本)ことができるかどうか。
この日も途中から不安定になったセットプレー、ドミネートできなくなったモール、キック精度やプレッシャーを受けた時にミスを起こさないプレーの選択など、まだまだ高めるべきディテールがあるのは確か。
途中、PGを刻んで得点を重ねたウェールズに対して、日本は「トライをとるのに時間かけすぎた」(CTB森)ことで、トライ数で上回りながら1点差で敗れた要因の精査も必要だろう。
「勝ちにこだわろうと言って、勝ちにいった試合で負けてしまった悔しさをみんな味わった。得るものは大きかったし、次の試合では、勝ちにこだわるというのをさらに出せる」
間違いなく誰よりも体を張り続けている岡山キャプテンがそう宣言するとおり、プール戦で世界に対するチャレンジを続けてきたチームはノックアウトステージで結果を出す下地ができつつあるのを感じながら、勝てば残留決定のU20ジョージア代表戦に臨む。
photo and text by Kenji Demura