残り10分まで10点リードもジョージアに痛恨の逆転負け

チャンピオンシップ残留を賭けアイルランドとの最終決戦へ

 

「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ2018」参加のためフランスに滞在中のU20日本代表は、現地時間の12日(日本時間13日)、ノックアウトステージ初戦の対U20ジョージア代表戦を戦い、後半31分まで22-1210点リードしていたものの、試合終了3分前にジョージアに逆転トライを決められ、痛恨の逆転負けを喫した。

この結果、最終日にはU20アイルランド代表との11位決定戦を戦い、勝てば残留、負ければワールドラグビーU20トロフィーに降格となる厳しい状況に追い込まれた。

 

最初の2試合で出た「試合の入り」の課題を修正して、プール戦最終戦で戦ったウェールズに対しては立ち上がりにディフェンスで粘ってリズムを掴んだ。

最終的には1点差で敗れたとはいえ、トライ数で上回るなど、勝ちに等しい内容だったウェールズ戦を経て、自分たちのラグビーが世界の強豪にも十分通用する自信を持って臨んだジョージア戦でも、日本は立ち上がりに試合の主導権を握ることに成功する。

 

強力FWのジョージアに対し、いきなりモールを押し込み、スクラムも安定。

5分にCTB森勇登が狙ったPGは外れたものの、7分には前に出る圧力で相手のキックミスを誘った後、敵陣22m内で相手ボールのラインアウトをスチール。最後はPR石田楽人がラックからのダイレクトプレーでインゴールに飛び込んで先制した。

直後のキックオフからジョージアFWにお返しをされるようにゲインを重ねられ、日本も粘りのディフェンスでよく耐えたが、最後は巨漢 PRにトライラインを超えられ同点に。

 PR石田のトライで先制するなど、前半は随所に日本らしいラグビーを見せてリードした

それでも、20分にはCTB森がPGを加えて勝ち越した後、序盤でのやりとりでFW陣が自信を感じていた日本は29分に敵陣深くでのPKチャンスにスクラムを選択。WTBシオサイア・フィフィタがジョージアゴールに迫った後、ラックからSH藤原忍→SO侭田洋翔→CTB森→WTBハラトア・ヴァイレアとパスをつなぎ、勝ち越しに成功する。

ジョージアFWにシンビン退場者があり、日本は一気に引き離すチャンスだったが、逆に37分に7人のジョージアFWにスクラムを押された後、ブラインドサイドを攻められてWTBにトライを返され、5点差に追い上げられて、ハーフタイムを迎えた。

 

 

「アイルランドに勝つためにいいトレーニングをして、

チーム一丸になって勝ちにいきたい」(岡山主将)

 

「前半は全体的には良かったがもっと取れる場面はあった」

遠藤哲ヘッドコーチがそう語るとおり、ひとり多い状況でもっと得点を重ねたかった日本。

それでも、サイドが入れ替わった後半開始直後に自陣からFB山沢京平がキックで敵陣に入り、さらに自ら敵陣でもう一度ドリブルしたボールをインゴールで抑えて10点差に引き離した。

 泣いても笑ってもあと1試合。「成長するチーム」を証明して残留を勝ち取る

試合はこの後2212のまま約30分間スコアは動かなかったが、後半途中から吹き始めた強風が日本にとって激しい逆風になったこともあり、基本的に日本陣でのプレーが続くかたちとなった。

「自分たちで規律の部分を守れず、後半は敵陣で戦うことができなくなってしまった。自陣でペナルティして、自滅するような後半になってしまった。スクラムで自分たちが高くなったり、ラインアウトで競られたり、ディテールのところでジョージアに負けた」

試合後、FL岡山仙治キャプテンがそう語ったとおり、前半はPKでも自信を持って選択する場面さえあったスクラムでも、ラインアウトでもプレッシャーを受けるかたちとなり、さらにボールを持っても前述の風の影響で有効なキックも使えず、前半は前に、低くと、意思統一されていたディフェンスがバラバラになっていく。

 

途中、日本にもシンビン退場者が出た影響もあって、「ハーフがいなくなって、いままでやったことのないような展開。あせってしまった。慌ててしまった」(同キャプテン)。

 

後半、圧倒的に攻めていたジョージアもミス自体は多く、日本の10点リードのまま最後の10分間となったが、あえてFWにこだわらずにBKで勝負してきたジョージアのアタックに「平常心でいられなかった」(遠藤HC)日本のディフェンスは対応できず、後半31分、同37分とトライを重ねられ、1コンバージョンの差で逆転を許しての悔しすぎる敗戦となった。

 

912位トーナメントでは1勝すれば残留が確定するため、劇的な逆転勝ちを収めたジョージアの選手たちが試合終了と同時にまるで優勝したかのように喜びを爆発させる一方、日本の選手たちはショックの余りしばらくその場から動けない様子だった。

試合後もしばらくそのまま動けない選手が多かった。この悔しさをアイルランド戦にぶつける

 

「勝てるゲームを落とした。ジョージアの選手たちが喜んでいるのを見て、本当は自分たちがそうならなければいけなかったのに、悔しい」

 

この日も間違いなく誰よりも走り、誰よりも体を張り続けたFL岡山キャプテンしばらくその場に立ち尽くしたままだったが、試合後かつてダン・カーターもプレーした名門クラブUSAPUnion Sportive Arlequins Perpignan - Roussillon)の本拠地であるエメ・ジラール競技場のロッカールームから出てきた時には、悔しさに溢れた表情ながらも最終戦となる5日後に控えるアイルランド戦に向けて気持ちの切り替えができているようでもあった。

 

「勝ちがほしい。来年もこのチームでできる選手がいるので、僕らがつなげられるように、勝ちを目指す。アイルランドに勝つために、いいトレーニングをして、チーム一丸になって勝ちにいきたい。

ジョージア戦では自陣で長い時間アタックしてしまったりしたので、自陣でのアタックでの敵陣の入り方をもう一度確認。そこからやっていきたい。次の試合では、みんな全力でDFにいくと思うので、そこで外されても僕が全部カバーできるくらいのハードワークをする。絶対勝ちます」

 

勝てば残留、負ければ降格。

「1試合、1試合成長するチーム」(岡山キャプテン)は、最大限のプレッシャーの中、「やっているラグビーは間違っていない」(遠藤HC)を証明するために、フランス入り前に立ち寄り、60分間の実戦形式のやりとりでトライ数37だったアイルランドを「速さ、低さ、細部へのこだわり」を徹底したラグビーで倒し、胸を張って日本に帰るつもりだ。

泣いても笑ってもあと1試合。「成長するチーム」を証明して残留を勝ち取る

 

photo and text by Kenji Demura