ニュージーランド代表オールブラックス、オーストラリア代表ワラビーズによる定期戦は、1931年、ニュージーランド総督だったブレディスロー卿が優勝杯を寄贈したところから、「ブレディスローカップ」と呼ばれるようになった。以降、毎年2~4試合のカップ争奪戦が行われている。その魅力、両国のライバル意識について、神戸製鋼コベルコスティーラーズの両国代表OB、ダン・カーター(ニュージーランド代表112キャップ)、アンドリュー・エリス(ニュージーランド代表28キャップ)、アダム・アシュリークーパー(オーストラリア代表116キャップ)が語ってくれた。

構成◎村上晃一/写真◎タナカヒデヒロ

 

──ニュージーランドの選手とってオールブラックスとはどんな存在なのですか。

ダン・カーター(DC) ニュージーランドではラグビーは宗教のようなものです。子供たちはオールブラックスになりたいと思ってラグビーを始めます。ほとんどのニュージーランド人が週末の予定を決めるときはまずオールブラックスの試合を見る時間以外で予定を入れます。子供の頃からそういう環境で育つと、オールブラックスでプレーするときは特別な気持ちになります。

──オーストラリアの選手にとってのワラビーズはどんな存在ですか。

アダム・アシュリークーパー(クーピー) オーストラリアは、ニュージーランドとは事情が違っていて、たくさんのスポーツの人気があります。ラグビーリーグ(13人制ラグビー)、オーストラリアン・ルールズ、クリケットなどです。オーストラリアのラグビー選手にとっての頂点がワラビーズだということです。

──では、ワラビーズの選手にとって、オールブラックスとはどんな存在ですか。

クーピー 私が知る限り、スポーツの中でもっとも大きなライバル意識が存在していると思います。オールブラックスと戦う時はライバル心が燃え上がりますし、とても大きなテストマッチ(国代表同士の試合)だと感じます。

──ラグビーに限らず、オーストラリアとニュージーランドはどんな関係なのですか。

アンドリュー・エリス(アンディ) オーストラリアとニュージーランドは、さまざまなスポーツでライバル関係があります。国として考えると、オーストラリアは我々のお兄さんのような存在です。だからこそ競争すると激しくなる。兄弟であり、ベストフレンドであり、ライバルでもあるという関係です。

──ブレディスローカップは、対南アフリカ、対イングランドなど他の強豪国と戦う時とは、また違った気持ちで戦っているということですね。

クーピー 先日、DCとそんな話をしました。オールブラックスが、ブレディスローカップを奪還したときの話をDCから聞いたのですが、ロッカールームでカップを持って泣き出した選手がいたそうです。両国の選手にとって、ブレディスローカップは、ラグビーワールドカップ(RWC)の次に大事なものなのです。

DC RWCが行われる以外の年では、オールブラックスにとって一番大事なのがブレディスローカップです。カップをワラビーズから奪い返した2003年、私はオールブラックスのメンバーでした。その重要性を理解していたつもりでしたが、ベテラン選手が感極まっているのを見て、ブレディスローカップをニュージーランドに残すため、必要なことはすべてすると決意をしました(※1998~2002年は、ワラビーズがカップを保持。2003年以降はオールブラックスが保持し続けている)。

アンディ ワラビーズと試合をするときは、事前の一週間の練習に緊張感があります。ワラビーズに負けたら、お父さんに叱られますから(笑)。

──オールブラックスは、2003年からブレディスローカップを保持しています。なぜワラビーズは彼らに勝つことができないのですか。

クーピー 私は、2005年から11年間、国代表レベルで戦っていました。その間、ブレディスローカップを勝ち取ることはできませんでした。数試合は勝っているのですが、勝った試合を振り返ると、正確にプレーできていました。オールブラックスは相手のミスから自分たちのペースを作っていきます。攻守の切り替え、カウンターアタックは、どのチームよりも優れています。オールブラックスに勝つためには、ミスなく完璧にプレーしなくてはいけないのです。

──今回、日本で開催される意義について聞かせてください。

DC 両国にとっては、RWCの前に日本の文化に触れ、環境に慣れることもでき、よい準備になるでしょう。

クーピー RWCが日本で行われるという宣伝にもなりますね。私は、2008年、ブレディスローカップが初めて海外で行われた試合(香港スタジアム)に出場しています。とても良い経験でした。

アンディ エキサイティングな内容になるでしょうし、日本の皆さんにとっては、RWCではこんな試合が続くのだという意識が高まると思います。観戦を楽しんでいただきたいですね。

 

※この座談会の完全版は、10月中旬発行予定のJRFUメンバーズクラブ会報誌に掲載されます。

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