マッチレポート

粘り強いディフェンスと勢いのあるランナーが相手を上回った明治大学が、大学選手権では13回目となる“早明”対決を制し、2年連続の決勝進出を果たした。

開始僅か45秒、自陣深い位置でFB山沢京平のキックを相手FB河瀬諒介にチャージされ、そのままトライ(ゴール成功)されるという、明治にとってはショッキングなプレーで試合はスタートした。しかし明治は、この失点で開き直ったかのように自陣から展開して攻め入り、相手ゴール前でPKを得てすぐに3点を返した。23分には早稲田のキックをフェアキャッチしたところから速攻、準々決勝からの好調を維持しているWTB髙橋汰地が相手ゴール前まで大きくゲイン。そこからの展開で逆サイドのWTB山﨑洋之が右中間に飛び込んで(ゴール成功)1010の五分に戻す。更に明治は前半終了直前にもハイパントからチャンスを掴み、CTB射場大輔が強さを見せて逆転トライ(ゴール成功)して折り返した。

後半開始から20分間は、今季のシナリオ通りのプレーを展開した明治にとって、クライマックスの時間帯。どこか懐かしい“メイジ!メイジ!”という声援を受けた明治は、長く続いた早稲田の攻撃を守り切り、22m付近のラックでターンオーバー。そこからSH福田主将のリードで一気に切り返し、相手陣ゴール前へ。正面近くで得たPKではスクラムを選択。NO8坂和樹が持ち出し、最後はHO武井日向がポスト近くに押さえ、早稲田を突き離した。その後早稲田に1トライ1ゴールを与えたが、34分には相手ゴール前での執拗なサイドアタックから坂が飛び込んだ(ゴール成功)。最後またも早稲田に4点差に詰められる1トライ1ゴールされたが逃げきった。これで大学選手権での早明対決は、明治の8勝、早稲田の5勝となった。

敗れた早稲田は、幸先よいスタートを切りながらも、明治のディフェンスの前に決定的な場面を作り切れず。また、ディフェンスでも力強い走りを見せる明治ランナーの突破を許していた。後半には今季ディフェンスでの貢献が目立っていたCTB桑山淳生が明治のディフェンスを引きずってトライ、また終了間際にはこの日初めて明治を崩してWTB佐々木尚が飛び込んだが、遅かった。SH齋藤直人は、難しい位置からのものを含めた5回のゴールキックを全て成功させ、最後まで逆転勝利の可能性を残したが報われなかった。


記者会見レポート

◎早稲田大学


○相良南海夫監督
「結果に対しては非常に残念に思っています。ただ、正月を越えて大学選手権準決勝という舞台で、明治さんと対戦することができたこと、こうして超満員になる中で早明戦らしい両校の意地と意地がぶつかり合う、最後まで分からない試合をした両校のフィフティーンに感謝したいです。本当に良いゲームになって良かったと思います」

ー明治のディフェンスが上回ったのか?
「対抗戦の早明戦があって、大学選手権でも早明戦があって、早稲田としては緩急をつけられたらよかったかと思います。基本的に自らのミスで終わるというケース、ターンオーバーされて終わるというケースが非常に多かったので。客観的に見るとやはり、明治さんがこの試合を取るんだという意地、迫力を感じたような気がします。そういう意味で、お互いに本当に意地をぶつけ合ったところに、やはり去年のファイナリストである明治大学さんに、我々がちょっと気圧されたかなという印象です」

ーキックオフのトスについては?
「基本的に選手に任せていますが、我々としては明治さんみたいな相手だと厳しいので、風上が取れて良かったなと思いました」

ーディフェンスをテーマにしたのに取られすぎでは?
「1トライ目、髙橋君に持って行かれたのはディフェンスそのものと言うよりも、ちょっとした反応とか、ふと抜けてしまった時に仕掛けられたと言うか、それが前半顕著だった。後半、もっと研ぎ澄まして集中しなければならないというようなことは修正したが、どこか安心してしまうところを、全部仕掛けられた気がします。あとは、早稲田のタックルそのものが悪かったように見えたところもあるかもしれませんが、明治さんがやはり迫力があったんじゃないかと思います」

ー日体大に負けてからのチームの成長は?
「最悪のスタートをしたが、一つ一つテーマを設けて、1試合1試合成長を確認して、山を登るように一個一個積み上げて来て、ここまで来れたという思いです。また、帝京大学戦の敗戦を踏まえて、やはり、ディフェンスで今年は勝負するんだというところをもう一度見つめ直して、そこに対して選手がしっかりぶつかっていって早慶、早明戦で結果を出して、前回の準々決勝早慶戦では選手はあそこで絶対負けないという思いでした。選手たちは本当にラグビーだけでなく、心も成長したのではないかと思っています。決勝に届かなかったですが、私自身としては本当に選手は良くやってくれたと思っています」



○佐藤真吾キャプテン
「まずはこのような環境で、明治大学さんと本当に死闘と言えるような試合をすることができて、感謝しております。しかし、結果が付いてくれば本当に良かったのですが。この1年間、相良監督とコーチ陣と共にワンチームで非常に良いチームを作っていたので、負けてしまうというのは、非常に悔しい気持ちで一杯です」

ー早明戦と比べて明治は何が違っていたか?
「ディフェンスのしつこさが明らかに違ったかなと思います。早稲田として敵陣ゴール前で何十フェイズもアタックし続けたのですが、こちら側も少しテンポの悪いところもあったのですが、明治大学さんにあそこまで我慢されると、結果的にミスで終わってしまうというところが、予想はしていたのですが、一番、明治大学さんの選手権で大きく違っていたところかなと、僕は感じています」

ー上手くいかなかった点とディフェンスについては?
「相手の一人目を倒した後のセカンドプレーヤーが速く、プレッシャーに少し負けてしまった部分。ディフェンスに関していえば、今年の一番のテーマがディフェンスだったので、そこに関して言えばゴール前のところ、取り切られてしまった部分は非常に悔しいところです。ディフェンスはあそこは早稲田として必ず止めなければいけないところでした」

ーキックオフのトスについては?
「相手がボールを取ったので、齋藤たちと話して、光の加減もあったのですが、風上を最初に取りました」

 

◎明治大学


○田中澄憲監督
「皆様、明けましておめでとうございます。本日は寒い中ありがとうございました。本当に今日の試合はどちらが勝つか分からないような、非常にタフな試合だったと思います。お互いに持ち味を出して、準決勝に相応しい、明早戦にも相応しい試合になったのではないかと思います。本当に、今日勝ったことで、一つ成長できましたので、次に目標の決勝戦がありますので、しっかりとそこに向けて準備していきたいなと思います。本日はありがとうございました」

ー今日のディフェンスについては?
「今日はテーマとしてはディフェンスが一番大事だと話して来ました。ディフェンスに関しては、しっかりオーバーコミットしないことですかね。タックラーともう一人がバインドして、あとはスペーシングを守るという。あとはコネクションを今週準備してやったので、それが今日、我慢強いディフェンスに繋がったと思うので、非常に良かったと思います」

ー対抗戦からの一か月でチームとして一番成長したところは?
「タフになったところです。選手が逞しくなったなと感じます。我々は大学選手権の厳しいトーナメントを勝ち抜いたということは非常に成長に繋がったと思いますし、辛い相手と一戦一戦戦って、そこから学んだことを八幡山グラウンドで練習を重ねて成長できました。本当に選手が相手をしっかりリスペクトして、相手から学んだことを自分たちの中で成長に繋げていったことが一番じゃないかなと思います」

ー非公開練習をやった効果は?
「非公開練習はしたのですが、普段通り、いつも通りの練習をやりました。非公開にした理由は、自分たちにしっかりフォーカスを当てて、集中して練習したかったということですので、良い準備ができたというふうに思っています」

ー最後の場面での心境は?
「選手を送り出せば何もできませんので、普段やってきたことに自信をもっていましたし、選手を信じて見ていました」



○福田健太キャプテン
「皆様、明けましておめでとうございます。本日は正月の忙しい時期に大勢の方にお集まりいただき嬉しく思います。試合に関しては、早稲田さんには対抗戦で負けているので、明治としてはリベンジしようと強い気持ちをもって東海大戦のあと準備して来ました。その結果、勝つことができて、僕らは大学選手権で優勝するという目標を掲げて来たのですが、その挑戦権を得られてホッとしています。しかし、まだ目標を達成した訳ではないので、明治のスタンダードとして良い準備をして、決勝戦に臨みたいと思います。本日はありがとうございました」

ーチームはどのようなメンタリティだったのか?
「僕らやっている方としては、コンタクトもリアクションも悪くはないと思っていました。実際、早稲田さんにアタックされて粘り続けてトライラインを割られる方が僕らとしては嫌だったので、キックチャージに関しては、もう一回、ゲームでこういうことは無くして行こうとチームで気持ちを引き締めて、焦りはあまりありませんでした。スクラムに関しては、強みとして一年間やってきたので、レフリーとのコミュニケーションについてプロップの祝原たちと話をして、1列がスクラムは行けそうだと聞いて、2本ペナルティは取られましたが、3人が修正してドミネイトする場面もありましたし、レフリーとの兼ね合いのところの修正力が今日は良かったかなと思います」

ー後半、自陣で30フェイズ以上守れた場面は?
「対抗戦の際に、簡単に中野君に明治のFWとBKのギャップのところを突かれて、2本トライを取られたので、早稲田さんはFWとBKがリンクしてアタックしてくるので、それに対して僕らも一人でディフェンスするのでなく、組織としてディフェンスしようと準備して来たので、そのディフェンスを出せたのではないかと思います。早稲田さんは良いリンクがありましたが、そこでディフェンスで粘れたことが今日の勝因に繋がったのではないかと思います」

ーそこで粘った直後に、すぐに取られた点は?
「そこは、明治っぽいと言えば明治っぽいかもしれませんが(笑)、ああいうところは、引き締めて行かないと、ファイナルになった時に簡単に取られると厳しいと思うので、悪い明治っぽさというのをファイナルでは出さないように、リスタートのところはすごく大事だと思うので、チームとして何をしなくてはいけないか、もう一度明確にしていきたいと思います」

ー最後のキックオフではキープするような短い方が良かったのでは?
「リスタートのところは奥に蹴るのか、前に蹴るのかという二つの選択肢があると思いますが、僕らの考えとしては早稲田さんにはアタックを継続する力があるので、奥に蹴られると、ブレイクダウンでトライラインがすごく遠く感じるので、心理的にも嫌かなあと思って。相手ボールにはなってしまいますが、そこからディフェンスで粘って行こうと話をしていました。だから、あそこは前に蹴って相手のミスを誘おうというギャンブルに出るのでなく、今日は明治のディフェンスが機能していたので、自信をもって選択しました」

ー最後に20フェイズ以上守っている時の心境は?
「あそこも、中野君からウィングの佐々木君に何度かゲインラインを切られたので、こちらとしては自陣まで入られないようにしようと、僕はもう後ろから声を掛け続けて。あそこのシーンとしては、もう守るしかないので、不安とかそういうものは無く、ただ目の前の相手に対してどう僕らがコントロールしようかという、いつも通りのディフェンスができたので、取られたらどうしようというものは無かったです。早慶戦をビデオで見た限りでは、ホーンが鳴ってから継続する力というものはあると思うので、僕らは早稲田さんのアタックをコントロールできないので、僕らができることは、そこでしっかり規律を守ってディフェンスをして、タックルした人間が速く立って次のディフェンスに参加するという、当たり前のことを当たり前にこなすことしかなかったので、逆転されたらどうしようかとか全く考えず、ただ目の前のことに対してグラウンドに出ている15人一人一人が責任を全うできたのではないかと思います」