12月21日(土)

第一試合
筑波大学 3-24 東海大学

 関東大学対抗戦では今季4位となった筑波大だが、先週の大学選手権初戦では同志社大を48-17と退け準々決勝に駒を進めてきた。しかし、同志社大戦では80分間プレーした司令塔のSO島田悠平が試合で負ったケガのため、この日はSOには山田晴也(3年)が先発となった。一方、関東大学リーグ戦優勝の東海大は主将のSO眞野泰地が11月のリーグ戦で負傷し、この日ようやく試合に復帰できたが、この日は、眞野が欠場した間SOを務めてきた丸山凜太朗(2年)にそのままSOを任せ、眞野は黒のヘッドキャップにゴーグルを着用して12番で先発となった。

 試合開始後から筑波大は主将のSH杉山優平のテンポのいいボール捌きでバックスをリードしてボールを展開する。しかし、東海大ディフェンスはしっかり筑波大の連続攻撃を止め、筑波大はボールを継続しながらもなかなか得点チャンスまでつなげられない時間が続いた。筑波大はボールの継続での我慢が続かず、ノットリリースザボールなどの反則でアタックが止まってしまう。すると前半18分、スクラムで筑波大がコラプシングの反則を取られ、東海大がゴール前のラインアウトのチャンスを得た。スローインされたボールをクリーンキャッチできなかったものの、どうにかFL⑦レキマ・ナサミラがボールをキープしゴールポスト前でのラックとすると、PR③中野幹がラックサイドを突いてゴールラインに飛び込んだ。SO丸山のゴールキックも決まり、0-7と東海大が先行した(19分)。
 その後も筑波大はSH杉山からよくボールを展開してアタックするのだが、東海大のフィフティーンが良くタックルを続け、筑波大の反則やミスを誘うシーンが続いた。筑波大は前半終了間際にどうにか、SO山田のPGで3点を返してハーフタイムとなった。3-7のスコアでは、まだまだ勝負の行方はわからない。後半の攻防が試合を決めるだろう。

 後半開始後も筑波大がボールを保持する時間が多く、よくボールを展開するが、東海大の好ディフェンスが続いた。東海大から見れば好ディフェンスの連続だが、筑波大から見ると「決め手がない」「アタックがミスで終わる」シーンの連続でもある。
 後半13分、試合を決める大きなトライが生まれた。筑波大がボールをキャッチし中央付近でカウンターアタックしたが、さらに東海大がカウンターラックでターンオーバー、筑波大のオフサイドでのアドバンテージの主審のジェスチャーを見たCTB眞野がすかさず右コーナーへ向けてグラバーキックする。これにSO丸山が良く反応しボールをチェイスし、ゴールライン前でバウンドしたボールをキャッチ、競り合って戻った筑波大SH杉山のタックルを受けながらコーナーフラッグ脇に飛び込んだ。トップリーグであればTMOとなるようなプレーだったが、川原主審はアシスタントレフリーに確認の上でトライを認めた。 
 難しい角度のゴールキックも丸山自らが決めて東海大が3-14とリードを拡げたが、この後も筑波大のアタックは続く。しかし、東海大もよく止め、筑波大は得点チャンスにはつなげられないまま時間が進んだ。
 後半38分、東海大は筑波大のモールコラプシングで得たゴールライン前のラインアウトからのモール攻撃でフォワードが一体となってプッシュする。東海大フォワードはボールをよくキープしながらモールを10m以上プッシュ。最後はHO黒田宗平がボールを押さえ、東海大がダメ押しのトライをあげた(3-19)。さらにその直後のキックオフからのプレーでは、集中力が続かなくなり甘くなった筑波大ディフェンスをついて右サイドを抜けたFLレキマ・ナサミラに好フォローしたSH㉑中村友哉からWTB⑭林隆広にボールをつなぎ、ノーホィッスルでのチーム4つめのトライをとり、東海大が3-24のスコアでの勝利とした。

 筑波大のアタックを我慢強いディフェンスで止め続けた東海大が、最後はスクラム、セットプレーでの優位を得点につなげての勝利だった。2年ぶりの準決勝進出となった東海大は1月2日、今季のスローガン「覚悟と繋がり」を体現して昨年度チャンピオン明治大にチャレンジする。
(正野雄一郎)


筑波大学
嶋﨑達也 監督

「本日は、ありがとうございました。自分たちのやってきたことをやり切ろうとしましたが、なかなか東海大学の壁を崩せず、後半持ち込みたい展開に持ち込めなかったのが残念でした。本当に東海大学は強かったですが、僕らが一年間やってきたことを選手達がやってくれたことを誇りに思っています」
ー松永選手の交代について。
「東海大学にとって脅威になる選手であるというのは分かっていたので、できればグラウンドに居て欲しかったですし、フィットネスもあるので残念でしたが、控えの選手もやってくれると思い交代させました」
ー監督1年目でしたが、新しい取り組みなどがあったか。
「長い間、ヘッドコーチをしておりましたし、古川前監督に色々な事をさせてもらい育てて頂いたので、新たなチャレンジというより、杉山主将、4年生、大学院生のコーチたちと一緒に情報共有してチームを作って、特に4年生がさらに引っ張ってくれ、スタッフを含めた全部員が同じ思いでやれました。そういうチーム作りをした4年生をサポートしようというのが、今年、最も考えたことです」

杉山優平 主将

「ありがとうございました。監督と同じように、自分たちが準備してきたことを出し切ったのですが、東海大学の圧倒的なディフェンスに1トライも奪えず、最後の壁を崩せなかったことが、この勝敗を分けたのではないかと思います」
ー後半の戦い方について。
「敵陣に入ったところでテンポアップし順目、順目に走って崩そうと、特にディフェンスの内側が結構広かったので、その近い位置にバックスリーが入ったりして崩そうとしたが、相手もうまく対応してきて内側で崩しきれず、最後にノックオンなどの自分たちのミスで終わってしまったという形です」
ー後半14対3の場面でのペナルティー時にタッチキックを選択したのは攻める自信があったからか。
「本当にトライが欲しかったからです。ずっと敵陣でアタックしていたので、そこで取り切らないでショットで終わってしまうと、気持ちの部分で次がないと思い勝負しました」


東海大学
木村季由 監督

「本日は、ありがとうございました。大学選手権の初戦ということで非常に緊張感もあるなかで、今日のテーマは、ともかく我慢強く、アタックもディフェンスも80分間、ひとり一人が役割を果たし続ける事、自分たちの強みをしっかりとゲームで出していく事を軸にゲームに臨みました。先週の同志社大学とのゲームを見て、筑波大学は非常に展開力もあり自分たちの強みを全員が理解した隙のないチームとの印象を持っていたので、我々としても非常に緊張感を持って臨んだ試合でした。反則等もありましたが、粘り強く試合ができたのかなと思っています。まだまだ課題はありますが、次に向けてしっかり修正して成長していきたいと思っています」
ー丸山選手、眞野選手のコンビネーションについて。
「全体のコンディションを見ながらリーグ戦後半は戦ってきました。リーグ戦を終えて怪我から戻ってきたメンバーもかなり多くおり、コンビネーションを含めた時間をじっくりとトレーニングのなかでやりながら本日のゲームを迎えました。実戦のなかで色々な事を調整する部分も必要かと思いますが、この二人の組み合せは、キャプテンも視野広くできると思いますし、非常に攻撃的でありながらディフェンシブな面の両方を兼ね備えた役どころかと思っています」
ーディフェンスで注意した事、今日の試合での丸山選手のキックについて。
「筑波大学の強みは、バックスリーのカウンターアタックであり、ブレイクダウンで筑波大学のリズムで杉山選手が良いテンポでさばきだすと、バックスがスピーディーなアタックをしてきますから、そういう状況を作らないというのが大前提でした。とにかくタックラーがしっかりと仕事をしよう、その上で少しでも球出しのリズムを崩していくように、筑波大学の強みであるブレイクダウンで真っ向勝負しようと臨みました。キックについては、相手へ単純に渡すだけのキックや、一発狙いのプレーはこの試合で必要ないという事をしっかりと全員が認識できていましたので、そういう意味では我慢強く、良い状況で蹴れているので良かったと思います」
ーリザーブにフォワードの選手を1人多く入れた理由は?
「フォワードでプレッシャーをかけたいのと、それぞれの選手の持ち味が違うので、その持ち味を全部生かしたいと考えたためです。ユーティリティーなバックスがいますので、二人でカバーできるという事、それ以外にもバックスで対応できるフォワードの選手もいる事もあり、こういう布陣になりました。今後もこの布陣にするかは、ゆっくり考えたいと思います」
ー準決勝に向けて、どういう準備をするか。
「どういう相手か分かりませんが、相手に対しての対策を練ってやる試合ではないと思っています。それよりも重きを置くことは、自分たちのやるべき事の準備を本日の反省を生かしながらして、もう一段、成長できるようにしていきたいと思っています」

眞野泰地 主将

「本日は、ありがとうございました。筑波大学に対して自分たちはやるべき事を80分間やり続けると試合に臨みました。ペナルティーやフォワードのセットプレーで少し安定しない部分もあり、後手に回る部分もありましたが、自分たちの大切にしているディフェンスでハードワークできたのが勝ち切れた要因だと思います。今日の試合の反省をしっかりと生かし、次の試合に向けて筑波大学の思いも背負って向かっていきたいと思います」
ー後半途中のあたりで自陣に攻め込まれていた時間帯に何を意識したか。
「あの時間帯、あの点差で、筑波大学が取り切るか、自分たちが守り切るかというのはゲームの流れとしては重要なところであったし、その1本でゲームが決まるというのは分かっていました。その事を皆へ伝えて、そこでハードワークしないと後々取り返せないので、ディフェンスに関しては、早いセット、走り続ける事、特にバックスが走り続ける事にこだわって声を掛けていました」
ーディフェンス練習をやって、今回の試合でうまくいったことは何か。
「何がうまくいったというのではなく、ひとり一人の意識が高かったというのが自分たちのディフェンスが良くなった一番の要因だと思います。ひとり一人が、ジャージーを着ている責任や試合に出ることができないメンバーがいるという事を自覚してプレーし、選手権で負けたら終わりという状況でも皆が責任を果たしたのが、ディフェンスが良くなった要因だと思います」
ーどういう思いで、今日の試合に臨んだか。
「ここで負けたら終わりというのは昨年、実感しているので、その思いを背負って戦うことをチームにも伝えて、ひとつ一つの試合に全てを出し切る、ひとつ一つの試合に勝ち切るということを意識して初戦に臨みました」
ー準決勝に向けて、どういう準備をするか。
「チームとしての反省はします。しかし、強みであり、スローガンでもある覚悟とつながりを体現して決勝に進出することしか考えていないので、良い準備して次の試合に挑みたいと思います」