ウェールズ戦歴史的勝利の価値を高めるPNC初勝利
五郎丸副将のトライ&決勝PGで因縁カナダに競り勝つ

6月19日、愛知・名古屋市瑞穂公園ラグビ―場でIRBパシフィック・ネーションズカップ(PNC)2013、日本―カナダ戦が行われ、後半22分の後FB五郎丸歩バイスキャプテンのトライで逆転した日本が、一度カナダに追いつかれながら、試合終了8分前に飛び出した同バイスキャプテンの決勝PGで16―13で競り勝った。
エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ体制でのPNC初白星であり、4日前の対ウェールズ歴史的一勝を一層価値のあるものにする劇的なカナダ戦勝利をものにした日本代表は、23日に2013年春シーズン締めくくりとなるPNC最終ラウンド、対アメリカ戦(東京・秩父宮ラグビ―場)を迎える。

(text by Kenji Demura)

photo by H.Nagaoka
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歴史的なウェールズ戦勝利から中3日。
「ウェールズ戦を通してチームとして自信を得たというのを感じていて、だからこそ今日勝ちたかった。今日負けてしまうと、その自信もなくなってしまうかもしれないし、ウェールズに勝った価値もなくなってしまう」
3試合続けて指令塔を務めたSO立川理道が代弁してくれたとおり、歴史的偉業を達成した後だからこそ、内容の伴った勝利が求められたカナダ戦。

日本代表はここまで今季のPNCで3連勝(対米国16―9、対フィジー20―18、対トンガ36―27)して、優勝に王手をかけていたカナダを向こうにまわし、攻守に成長した姿を見せ続けた。

3週間前のフィジー戦を彷彿とさせるような激しい雨。試合開始早々に先制されただけで、その後は守り切ってハーフタイムを迎えた展開も、6月1日にフィジー・ラウトカで戦った試合と似ていた。

違っていたのは、パフォーマンスの中身。特に、後半の40分間は常に自分たちのテンポでアタックするジャパンウェイを見せ続けてくれた。

「前半はブレイクダウンで苦戦した面もあったが、後半は厳しいコンディションの中、選手たちは素晴らしいラグビ―を続けてくれた。ボールをよく動かしていたし、スクラムもラインアウトも良かった。ブレイクダウンではなかなか難しかったが、重要なのは成長を続けて行くこと」

試合後の記者会見の第一声で「今日の勝利は本当に嬉しい」と喜びを露わにしたジョーンズHCがそう振り返ったとおり、消極的なプレーに終始したフィジー戦と似たコンディション・展開だったからこそ、ウェールズに対する歴史的勝利を経たチームの成長ぶりが一層際立つことにもなった。
「自分たちのテンポでプレーしていけば、必ず相手はバテる。こんなチーム世界みても他にはない。フィジー戦に比べたら、足下もそこまで悪くなかったし、ボールも動かすことができた。日本しかこんなラグビ―できない。それだけの練習していますし、スキルもある」と、語ったのは、この日、日本が挙げた16点をすべてひとりで叩き出したFB五郎丸歩バイスキャプテン。

そのヒーローが「自分の仕事を100%しただけ。全員が自分の仕事をしたからこそ、PNCで僕らに勝っていればチャンピオンになっていたカナダに勝てた。(自分のトライも)FWが頑張ってくれたおかげ」と強調したチームワークこそ最大の勝因であることは、激しい雨の中、駆けつけてくれた熱心なファンに共通する思いでもあるはずだ。

記者会見でのジョーンズHCの言葉どおり、80分間通してセットは安定。前半苦戦する場面も見られたブレイクダウンも時間の経過とともに、自分たちのテンポで球出しができるケースが増えていったのは明らかだった。

photo by H.Nagaoka
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「最後までみんなにエネルギーがあった」(菊谷副将)

象徴的だったのは、やはり前述の逆転トライのシーン(後半22分)。

自陣での相手ボールラインアウトでのターンオーバーを起点に、しっかり自分たちのシェイプを維持しながらフェイズを重ねて、最後はカナダDFが対応できなくなったところでCTBマレ・サウがブレイクして、フォローした五郎丸バイスキャプテンにつないでアタック完結。

その後、26分にカナダにPGを決められて、いったんは13―13の同点に追いつかれ、どことなく過去2大会のワールドカップでの対戦を思い起こさせるような展開になったものの、11年大会で主将を務めていたNO8菊谷崇バイスキャプテンが「同点なのはわかっていたけど、ワールドカップのことはまったく思い出さなかった。最後までみんなにエネルギーがあったし、声も出ていたので、絶対勝ち越せるとは思っていた」と胸を張ったとおり、最後までジャパンウェイを貫き通した日本は、試合終了8分前に五郎丸バイスキャプテンが、この日3本目となるPGを決めて、因縁の相手に決着をつけた。
「この2試合で一番進歩したのはパフォーマンスの一貫性。特にスクラムが良くなった。今日はラインアウトも同じくらい良かった。厳しいコンディションの中で、一貫性のある安定したパフォーマンスをし続けることで、今日のような試合が可能になった」と、ジョーンズHC。

もちろん、カナダに許した唯一のトライの原因となったキックオフなど、「まだ課題は山積み」(同HC)であることも確かだが、ウェールズ戦で圧倒的な存在感を見せたCTBクレイグ・ウィングがコンディション不良のため、急遽出番が回ってきたCTB田村優が「スーパーゲームをしてくれた」と同HCを喜ばすパフォーマンスを見せるなど、チーム力の底上げは確実に進んでいる。

大会前半でトンガ、フィジーに連敗したことで、当初の目標だったPNCでの優勝の可能性はなくなっているものの、ここまで9試合戦ってきたこの春のテストマッチシリーズが世界トップ10入りへの「大きなステップ」(ジョーンズHC)となっていることは疑いのない事実。

その春シーズンの総決算となる23日のアメリカ戦が持つ意味がさらに大きくなっているのも間違いない。

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