第一試合
早稲田大学 52-14 天理大学

 12月1日の対抗戦Aでの早明戦に7-36で明治大に完敗したのを機に、「生まれ変わる」として、それ以降「Reborn」を部のテーマとして掲げ大学選手権に臨んできた早稲田大学にとって、明治大にリベンジするためにはこの天理大との準決勝が大きな関門である。秋シーズンの序盤にケガをして以降、戦線に加わっていなかったCTB中野将伍が復帰してこの試合にはベストメンバーで臨んできた。天理大CTBシオサイア・フィフィタとのトイメン対決が楽しみだ。

 どちらのチームにとってもまずはスクラムで優位に立ってバックスで決めたいところだが、早大、天理大とも交互にコラプシングの反則となりなかなか安定したスクラムが組めない。10分、天理大のコラプシングの反則で敵陣でのラインアウトからの攻撃を得た早大が、ラックからのボールをSH齋藤直人がFB河瀬諒介にいいパスを出す。河瀬が天理大のラインディフェンスをブレイク、さらに河瀬からWTB⑪古賀由教にいいパスがつながり古賀がインゴールに走り込んだ。SH齋藤のゴールも決まり早大が7-0と先取した。19分、さらに早大は敵陣に入り込んでのスクラムから、ボールをもらったCTB⑫中野が突っ込み天理大ディフェンスに捕まるもオフロードパスをSO岸岡智樹に渡すと岸岡が左に大きく飛ばしパス。FB河瀬がチーム2つめのトライで14-0。さらに、24分にもPR③小林賢太が中央突破して作ったラックから、SH齋藤が素早くボールをバックスに展開、SO岸岡から長いパスをCTB中野につなぐと中野からWTB古賀に小さなパス。古賀はタッチライン際で身を回転させながら天理大のディフェンスをかわすとコーナーフラッグ際に飛び込んだ。この難しい角度のゴールキックも再びSH齋藤が決めて21-0。決定力ある選手を揃えた早大のバックスが思い通りのアタックパターンで早くも3トライ、さらに齋藤の安定したゴールキックのお陰で早くも21点差と早大としては最高の試合展開となった。

 しかし天理大もこのままでは終わらせない力がある。31分、キックキャッチからWTB⑪土橋源之助とFB江本洸志との2人でのカウンターアタックから敵陣でフェイズを重ね、ゴールライン前に攻め込む。LO⑤アシペリ・モアラはゴールラインに届かなかったが、そのラックからボールが出るタイミングにいいスピードで走り込んできたCTB⑫市川敬太がインゴールに飛び込んだ(21-7)。さらに天理大は前半終了直前の時間にもSO松永拓朗がラインブレイク、再び早大陣ゴール前に攻め込みフェイズを重ねた。しかし、早大はフォワード、バックス全員がゴール前でのナイスタックルを繰り返し、天理大に追加点を許さずに前半終了とした。天理大としては前半のうちにもう一つトライを取って後半の勢いにつなげたいところだったが、試合全体の流れを返すことはできずにハーフタイムとなった。

 天理大は後半の早いうちにトライを返して追いつきたいところだ。そのためには日本国籍のLO④ナイバルワガ セタを含め4人いる外国出身選手のラインブレイクから得点チャンスにつなげたい。しかしこの日の早大はいいタックルを続けてこの天理大の外国出身選手をしっかり止め続けた。後半も攻め続けた早大ではフォワードの選手も活躍した。後半11分にはWTB古賀、SO岸岡に好フォローしたPR①久保優がトライ、18分にはNo.8丸尾崇真の突破からFL⑥相良昌彦がトライ、27分にはラインアウトからのモールでHO森島大智がトライを取った。さらに33分にはCTB㉓梅津友喜がライン際を好走してトライ、また、39分にはSO岸岡のキックボールを競り合って確保した河瀬にフォローした岸岡が自らダメ押しのトライを取り、早大は後半、天理大の得点をCTB⑬フィフィタのトライ1つだけに抑えて、52-14のスコアでの完勝で終えた。

 早大は早明戦での反省点をしっかり修正してきて、チームがまさにRebornしてきた。Rebornした早大ラグビーを新国立競技場で見せてくれるのが楽しみだ。
(正野雄一郎)


第二試合
明治大学 29-10 東海大学

 ワールドカップ後のラグビーブームのおかげで、チケットは12月中に販売予定枚数終了のため、当日券販売もなし。正月らしい穏やかな天気にも恵まれたこの日、秩父宮は21,513人の観客で埋まった。関東大学対抗戦グループで優勝の明治大と関東大学リーグ戦優勝の東海大。どちらも今年度はこれまで無敗である。明治大は準々決勝で関西学院大に苦戦したが、この日はバックスの中心選手、SO山沢京平、CTB⑬森勇登、WTB⑭山村知也がケガから復帰してベストメンバーで試合に臨んできた。

 前半4分、敵陣に入ったところで明大のオフサイドの反則で東海大がPKを得て、SO丸山凜太朗が40mのPGを決めて0-3とリードした。しかし、その直後の7分、明大はグラウンドを横に広く使い左右に大きく展開してアタックすると最後は左ラインにSO山沢-CTB⑫射場大輔-FL⑥石井洋介からWTB⑪山﨑洋之にパスをつなぎ山﨑がタッチライン際を好走、明大がトライを取り逆転した(7-3)。

 お互いのキック合戦になる時間も多かったが東海大はSO丸山らが高いキックを上げてハイボールに強いWTB⑪望月裕貴にキャッチさせようとするがなかなかチャンスにつながらない。明大もボールをバックラインに展開するが東海大のディフェンスにブレイクできない。7-3のスコアの時間がしばらく続いたが、次の得点を取ったのは明大だった。27分過ぎ、東海大SH山菅一史のボックスキックを捕りに行ったWTB⑪望月がボールを確保できず、明大にターンオーバーされると明大はバックスでの左右への展開でフェイズを重ねる。LO④片倉康瑛がラインブレイク、さらにフォワードがゴール前でフェイズを重ねてアタックを繰り返すと最後はSH飯沼蓮がラックサイドをついてインゴールに飛び込んだ(31分、14-3)。明大は39分にもSO山沢がPGで3点加点、17-3としてハーフタイムとした。

 点差は14点だが、後半最初に東海大がトライをとれば、勝敗の行方はわからないというところだったが、後半も最初のトライをとったのは明大だった。後半10分、明大はスクラムから再びバックラインで左右に大きく展開してきた。東海大ディフェンスもよくこれを止めていたが、最後は敵陣ゴール前でのラックからボールをSO山沢からもらったCTB⑫射場が東海大バックスのタックルをかわして右中間にトライ。山沢のゴールも成功し、明大が24-3とリードを広げた。

 しかし、東海大もまだまだ諦めていなかった。18分、PKから敵陣内でのラインアウトを得た東海大はラックからのボールをCTB⑫眞野泰地からブラインドサイドからいいスピードで内に走りこんできたWTB⑪望月にパス。望月はSO山沢のタックルをかわすとそのままインゴール中央に走りこみ東海大がようやくトライをとった(24-10)。

 東海大が点差をつめたものの、まだ14点差あるので明大の有利は変わらないだろうと思っていた後半20分、この試合のクライマックスのシーンがあった。東海大のアタックに対してディフェンスに行ったLO④片倉の腕が東海大PR⑱前田翔の首にかかったのを加藤真也レフリーが見逃さずにハイタックルの反則を取り、片倉にイエローカードが与えられた。これで明大フォワードは10分間、7人で戦わなければならない。東海大はそのPKで人数の優位を生かそうとゴール前でのスクラムを選択してきた。このスクラムで明大フォワードは2回、コラプシングを取られた。もう1回コラプシングを取られるとペネルティトライをとられ、もう一人のフォワード選手がシンビンになり13人で戦わざるを得ない可能性が頭に浮かぶ。しかし、明大のフォワードは3度目のスクラムでは崩れず、ペナルティトライを取られることもなく、どうにかピンチを免れた。試合後に田中澄憲監督は「取られても仕様がない」と思っていたと言ったが、HO武井日向主将らフォワード選手は「ここはしっかり止めよう」との気持ちでまとまっていたという。この試合のキーポイントになるシーンであった。

 明大は36分にLO⑤箸本龍雅がもう1トライ追加、最終的なスコアを29-10として決勝進出を決めた。新国立競技場での早大との決勝戦では、この日スクラムで負けなかったことでフォワードがつけた自信で明大がさらに一つ強くなったところを見せてもらいたい。    (正野雄一郎)