第56回全国大学ラグビーフットボール選手権大会 決勝 
2020年1月11日(土)国立競技場

明治大学 35-45 早稲田大学

 あと6カ月後にはここで東京オリンピックの開会式が行われる。12月にこけら落としとなった新・国立競技場での初めてのラグビー試合は大学選手権の決勝となった。しかも、決勝に進出してきた2校は大学選手権優勝回数の最も多い2校である(早稲田大=15回、明治大=13回)。いやでも盛り上がる対戦である。午前中の曇天がキックオフ前には快晴に変わった国立競技場は57,345人の観客で膨れ上がった。
 明治大、早稲田大ともに先発選手は準決勝から変更なしのベストメンバーだ。12月の関東大学対抗戦では明治大が36-7で早稲田大を一蹴したが、その後の40日間で早稲田大はしっかりチームを立て直してきたようだ。この日の対決はほぼ互角の接戦になるだろう。
 素晴らしいコンディションの緑の芝生に両チームの選手が並び、「都の西北・・」「白雲なびく・・」とそれぞれの校歌斉唱が終わるとキックオフとなった。

 試合開始早々の5分過ぎ、明治大の自陣からのロングキックがデッドボールラインを割り、敵陣内でスクラムを得た早稲田大がスクラムからボールを展開し、FB河瀬諒介がラインブレイクかと思った瞬間、明治大SO山沢京平が入ったタックルが少し高く感じた。久保修平レフリーがこれを見逃さずハイタックルの反則を取ると、早稲田大はSH齋藤直人が冷静にPGを決め、0-3と先制した(9分)。さらに10分過ぎにも中央付近での明治大のオーバーザトップの反則で、敵陣22m内でラインアウトを得た早稲田大はラックからSH齋藤がいい判断で右に回す。SO岸岡智樹-CTB⑫中野将伍といいパスが繋がり、大外にフォローしてきたNo.8丸尾崇真が右コーナーに走り込んだ。SH齋藤が難しい角度のゴールキックを決め、早稲田大が早くも0-10とリードを広げた(14分)。

 明治大がボールを得てアタックしても早稲田大のいいディフェンスで止められ、また、ミスで早稲田大ボールにターンオーバーを許すなどチャンスにはつながらない。逆に早稲田大は26分、中盤でのラインアウトのボールをSH齋藤-SO岸岡からCTB⑬長田智希に回すと長田が右中間をいいスワーブで明治大ディフェンスを2人3人とかわしゴールラインまで走りきった(ゴール成功、0-17)。さらに34分にも早稲田大は明治大キックからのカウンターアタックでCTB⑫中野からいいオフロードパスをCTB⑬長田につなぎ、No.8丸尾がゴール前まで迫る。そこで明治大のディフェンスオフサイドを誘うと、ゴールライン5m前のラインアウトを得て、フォワードが一体となったモールにバックス選手の中野、長田も参加してゴールラインに押し込み、HO森島大智がインゴールに押さえた(ゴ-ル成功0-24)。早稲田大としてはバックスの展開力ばかりでなく、フォワードもモールでいいかたちでのトライを取れ理想的な試合展開となった。39分にも早稲田大はフェイズを重ねて敵陣ゴール前に攻め込み、これに好フォローした1年生FL⑥相良昌彦がトライを加え0-31と、一方的なスコア展開となってハーフタイムとなった。

 これだけの点差になると、早稲田大が優勝に近づいていることは間違いないだろう。しかし、昨年の大学選手権覇者であり、今シーズンの関東大学対抗戦でも全勝優勝している明治大フィフティーンも後半早く追いつき、チームの実力を示したい。

 明治大は、後半、最後まで試合を捨てなかった。まず、後半3分、明治大は敵陣でのラインアウトからSH飯沼蓮-No.8坂和樹-WTB⑪山﨑洋之-SO山沢-FB雲山弘貴と左ラインに大きく展開し、最後はWTB⑭山村知也がFB河瀬のタックルを受けながらもコーナーフラッグ際に飛び込んだ。TMOにもかかった微妙なプレーだったが、山村はタッチにも出ず、しっかりゴールライン上にダウンボールしておりトライが認められた。ようやく明治大がこの日初得点、7-31とした。後半10分、早稲田大はWTB⑪古賀由教のトライで再び点差を広げたが、明治大も16分、ラインアウトからボールを展開、最後はパスが乱れたがそのボールをSO山沢からオフロードでLO⑤箸本龍雅につなぐと箸本が中央にトライ、14-38と再び点差を詰めた。明治大は21分にもSO山沢が中央を抜けてトライ。29分にはフォワードの中央突進からWTB⑪山﨑がタッチライン際を走りきってトライ(ゴール成功)、残り10分で28-38と10点差まで詰めた。早稲田大フィフティーンが前半の大きなリードで気が緩みディフェンスが甘くなったというより、「絶対追いつく」という明治大フィフティーンの気持ちの方が上回った時間帯だったようだ。しかし、前半40分間で許した0-31の大きなビハインドをひっくり返すのは難しかった。明治大は34分に早稲田大WTB⑭桑山淳生にトライを許したが、再びノーサイド直前にFB雲山がトライを取り返す。しかし、明治大は点差を10点差までしか詰められず、早稲田大が2008-2009年度以来、11年ぶりの大学チャンピオンに輝いた。

 この日の早稲田大は前に出てプレッシャーを与えるディフェンスを続け、特に前半は明治大にチャンスを与えなかった。「勝ちポジ」という名前をつけたこのディフェンスをフィフティーンが全員で実践できたことがこの日の勝因だろう。早稲田大は12月の早明戦での敗戦後、「勝ちポジ」に象徴されるように課題を40日間でしっかり修正して、戦い方だけでなくラグビー部の姿勢そのものを変えることに成功して、優勝杯をつかむことができた。

 表彰式後、日本一になった年度にしか歌えない第二の部歌『荒ぶる』を「ララ早稲田ララ早稲田・・」と選手全員が円陣になって歌う歌声がスタジアムに響き渡っていた。                                                                                                  (正野雄一郎)