1月2日(土) 

帝京大学27-33早稲田大学

PGで3点先行された早稲田大学だが、6分にはHO宮武海人(3年)のトライで逆転。以降一度も相手にリードを許さず、先へ先へと加点し27-33で勝利。2大会連続、また通算で33回目となる決勝進出を果たした。帝京大学は最大でも16点以上離される事なく食らい付いたが、9大会連続9回目の優勝を遂げた3大会前(平成30年度)以来となる決勝進出はならなかった。

早稲田大最初のトライは、PKからタッチキック、ラインアウト後のモールで充分な形となり、宮武が押えたもの。逆転して硬さが取れると、この日重要なプレーとなったラインアウトから、24分にもモールプッシュで再び宮武がゴールラインを超えた。33分にもラインアウトを起点にした攻めから、CTB伊藤大祐(1年)のオフロードパスを受けたFB河瀬諒介(3年)がディフェンダーを翻弄してチーム3トライ目。帝京大に2PG、1PTの13点を与えながらも、前半を8点差で折り返した。

そして後半開始から間もない47分、またもラインアウトを起点にした会心のトライが生まれる。SO吉村紘(2年)がフォワード2人をデコイに、CTB長田智希(3年)の背後へ廻り込んだ伊藤へ長いパスを送るムーブ。深い位置でパスを受けた伊藤は、ディフェンスの間隙を突いて大きくゲインしてから河瀬に繋ぎ、河瀬からWTB古賀由教(4年)へ。古賀は、面目躍如というこの場面で、追いすがるディフェンダーを振り切ってライン際の30mを駆けた。その後相手に1T1Gを与えた後の62分にも、相手のドロップアウトを切り返し、長田のショートパスへ直線的に走り込んだ河瀬が一気に加速。自身2つ目のトライで帝京大を突き放した。

早稲田大にとっては、「モールではしっかり密着し、話す(コミュニケーションする)事を意識して練習してきた」(4年LO下川甲嗣)というラインアウトの安定が大きかった。それに対し、「モールでもう少し抵抗できていたら。サック(ラインアウトの相手レシーバーを倒す)が中途半端だった」(岩出雅之監督)と悔やんだ帝京大だが、逆にスクラムでは優位。前半終了前には、相手ゴール前のスクラムでペナルティトライを奪うほどだった。

後半始め相手にトライされた後の53分に、CTBニコラス・マクカラン(4年)のトライ(ゴール成功)で再び8点差まで戻し、相手のトライで13点差に広げられた後の78分にも、スクラムから2フェーズでディフェンスを崩してCTB尾﨑泰雅(4年)が左端にトライ。この難しいゴールをFB奥村翔(4年副将)が決めて6点差とし、「逆転サヨナラのゲーム」(岩出監督)を狙った最後のアタック。しかしノックオン。万事休した。3大会前の優勝を知る学年で、この試合でキャプテンを担った奥村は、2PG2Gを確実に決めて最後尾からチームを牽引したが、無念の涙となった。(米田太郎)

 

【会見】

帝京大学

○岩出雅之監督

「スコアどおり、敗戦ですので足りないものがあったと思います。学生はしっかりとゲームを運んでくれたと思います。ただ、モールのところでもう少し抵抗できればと思うことと、若干、コミュニケーション不足で、ディフェンス面ではまだまだ精度が必要だったかなあと思います。最後の最後まで、さよなら逆転を狙っていたのですが、そこまで至らずとても残念です。しかし、ここまで頑張ってきた学生を讃えたいと思いますし、早稲田大学さんの決勝戦での活躍を期待したいと思います」

○奥村翔ゲームキャプテン

「監督がおっしゃっていたように、何か自分たちに足りないところがあると思いますが、ブレイクダウンのところは練習してきた通り、自分たちは出し切ったので悔いはないです」

 

ーモールについて 、もう少し抵抗できなかったのは?

○岩出雅之監督

「モールに関しては、もう少し。相手のラインアウト接点にしても良かったと思いますが、サックにしてもちょっと中途半端でした。そういう意味では、力のかけ方に対する役割も今日は不徹底でした。ハーフタイムにそういう話をしたのですが、しっかりフィットしていない状態が残念ながら続いて、今日は一番の敗因はそこの不徹底さかなあと思います」

 

ー最後までフロントローを交代させなかったのは?

○岩出雅之監督

「フッカーに関しては、いつでも代えて良いかなあと考えていましたが、1番3番に関しては、まだまだ前半から出ているメンバーの方が、終盤で仕事をしてくれるかなと期待をして代えませんでした。ペナルティトライは状況次第ですが、スクラムトライは十分行けると思っていましたので。最後、細木選手の復帰間もなかったですが、良く最後まで頑張ったなと思います。もう少し怪我なくシーズンが来ていたら、もっと力強く、最後の最後までできていたのではないかと思いますが、僕自身も今後の活躍を期待したいということと、今日に関しては1番3番に関しては期待を込めて、残しました」

 

ー外側のディフェンスを早稲田に破られることがあったが?

○奥村翔ゲームキャプテン

「コネクションミスで、BKにトライを取られるシーンがありましたし、コミュニケーションは取っていたのですが、ワンオンワンのタックルを外されたところもあったと思います」

 

ーシーズンが深まる中で、誤算のようなことがあるとすれば?

○岩出雅之監督

「学生はしっかり成長したと思います。怪我人もそうですし、他大学の努力が良かったということではないでしょうか。我々も努力していますけれど、他の大学もしっかりされたという事で、また、我々はそこから学ぶことができました。今シーズンは変則で、春はしっかりできない部分からで、それぞれのチームに不足分は絶対あったと思います。我々も調子が良くても、その中での調子の良さですから、本気の対抗戦で少しずつ経験させていただいて、今日のゲームには補える部分が成長としてあったと思います。ただ、先ほども申し上げたとおり、ゲームの中ではまだまだ未熟なところもあって、学生は精一杯やりましたけれども、力足らずなところもあったかと思います」

岩出雅之監督(右)、奥村翔ゲームキャプテン


○細木康太郎選手

「優勝目指し、勝ちにこだわってやってきたのですが、負けてしまったこと、悔しく思いますし、僕はまだ3年生で、来年もあるというところで、4年生に声を掛けてもらっていて、来年頑張りますと。まだ、負けたことについて整理がつかないのですが、来年に向けて徐々に自分がやっていかなければならないと、と思います」

 

ー怪我の回復具合は?

○細木康太郎選手

「対抗戦の初戦、日本体育大学戦で肉離れを起こしてしまって、検査では今年度の復帰はキツイのではという診断を受けたのですが、大学のサポートもあって治療など色々なことをしていただいて早期復帰が叶い、サポートしてくださったスタッフの方、関係の皆様にはすごく感謝しています」

 

ー早稲田の3番小林選手とハーフタイムとノーサイドに話していたが?

○細木康太郎選手

「前半の終わりでは、知り合いだったので、スクラムのところでどういう組み方をしたら安定するか、お互いどういこうかと話していました。試合の終わったあとでは、悔しいのですけれども次の試合頑張って優勝してくれと一言掛けました」

 

ースクラムを振り返って?

○細木康太郎選手

「僕らが強みとしているスクラムで、プッシュできたのはよかったのですが、後半、東海大戦のように少し食い込まれる部分もあって、そこは必ず改善しなければいけないところだと思ってしっかりとプッシュできたのは、帝京大学のFWとしては良いポイントだったのではないかと思います」

 

○尾﨑泰雅選手

「今日の試合、チームとしてはとても良いプレーができたと思います。でも、自分のタックルミスなどで相手のトライにつながってしまったので、そこは反省して次に生かしていきたいと思います」

 

ーラインアウトでのモールについては?

○細木康太郎選手

「早稲田さんのラインアウトモールについては、対策してきたところもあったのですが、完全にやられたところもあったので、途中、選手たち同士で話し合って、どうしていこうかという話もありましたが、そこも中々上手くいかず僕たちのラインアウト、モールディフェンスはまだまだだなと思いました」

 

ー優勝を知っている最後の世代が卒業してしまうが、自分としてやっていこうと思うことがあれば。

○尾﨑泰雅選手

「まず、4年間、優勝できなかったことを後輩たちに謝りたいです。自分たちが後輩たちに伝えられることを、あと少しの時間しかありませんがしっかり伝えて行けたら良いかなと思います」

 

ー今日は前戦と比べて、どこが違ったのか? 良くなかったところは?

○尾﨑泰雅選手

「しっかりタックルの部分で前に出続けたのですが、個人個人でまだ甘い部分があって、そこで早稲田さんに行かれるところがあって、そこが敗戦の原因の一つになったかと思います」

 

細木康太郎選手(左)、尾﨑泰雅選手


早稲田大学

○相良南海夫監督

「今、コロナの大変な状況の中で大学選手権準決勝の舞台に立てたこと、そして 無事、勝利できたことを嬉しく思っています。試合の方は、フィジカルの非常に強い帝京さんに、どれだけウチが身体を張れるかということが勝負を分けると思っていましたが、選手が良く身体を張り続けて粘り強くディフェンスして、最後は接戦になりましたけれども、しっかり勝ち切ることができたゲームだったと思います」

 

○丸尾崇真キャプテン

「コロナで大変なところを、しっかり準決勝を迎えることができて、勝利することができたのを嬉しく思います。試合内容に関しては、フィジカルの強い帝京大学さんのセットプレーに関して早稲田から仕掛けるという事をして、できたところとできなかったところとあるのですが、まあ、勝利することができました」

 

ー前半の終わりでペナルティトライを取られた後での声掛けは?

○丸尾崇真キャプテン

「特別、何かを変えるという事はしないで、前半以上に精度を高く激しく行こうと、セットプレーを中心にやりました。まあ、セットプレーに立ち返る部分があったので、やりました」

 

ー前半のラインアウトモール、 相手ラインアウトモールの対策がうまく機能したことについて?

○丸尾崇真キャプテン

「マイボールラインアウトでは宮武が本当に良いボールを投げてくれて、ジャンパーが精度高く確保できたこと、それが良いモールに繋がったと思います。相手ボールのラインアウトに関しては、Bチームが精度高くやってくれたので、本当に良い対策ができたのかなと思います」

 

ーモールは帝京大学用に準備していたのか?

○相良南海夫監督

「いや、特に。我々の形の中でのモールでした」

 

ー大学選手権に入ってから、4年生が試合前練習を見学できるようになったと聞くが、昨日も?その狙いと効果は? 

○丸尾崇真キャプテン

「はい。昨日も4年生が見守ってくれました。それはもう、気持ちの部分だと思うので、試合に出られない多くの人がいて、23人に選ばれる人がいて、出られない人の思いも背負って戦うという意味でも,4年生が来てくれました」

 

ー丸尾キャプテンがジャッカルでピンチの芽を摘んだ場面は?

○丸尾崇真キャプテン

「ショートサイドディフェンスにはこだわっている部分もあるし、そこの精度も上げてきたので、しっかりセットして前に出ればしっかりディフェンスができるし、ターンオーバーできると思っていたので、我慢強く激しくやり続けるというのを意識してやっていました」

 

ー試合の途中に 丸尾選手や河瀬選手など、良いパフォーマンスをしている選手の交代についての判断は?

○相良南海夫監督

「3人とも、ちょっと足をつるところがあったので。拮抗した試合で23人で戦うといった部分でも、元気な選手を入れようということでした。まあ、本当はキーになる選手だと思うので最後まで出したいところもあるのですが、意図としてはそういう事です」

 

ー緊急事態宣言が出る可能性があるが?

○相良南海夫監督

「そこは行政の判断というか、幸い僕らはこういうステージを与えられていますけれども、やはり日本中に感染が広がらないということが大事だと思うので、それは従うしかないと思います。その中で、できる方法で、やはり学生たちは限られた時間ですので、どういう形であれそういう場を作って欲しいなと切に思います」

 

○丸尾崇真キャプテン

「そこは政府が決める事なので、変に考え過ぎず、あることを信じて一日一日積み重ねるしかないと思うので、あることを信じて努力したいと思います」

 

ーチームのムードは?

○相良南海夫監督

「決勝に行くためには、今日、やり切るしかないという事で、グラウンドに送り出しましたが、まさしく拮抗した試合でやり切ってくれたと思います。次のステージに進めることになったので、もう一度やり切るぞという思いに選手たちはなっていると思いますし、もう一度やり切れる9日間を過ごして、決勝戦を迎えたいと思います」

 

ー帝京大学の選手が何人も「丸尾、エイタン*」と言う中、エイタンで行ったが?

  *スクラムからナンバーエイトがボールを持ち出しスクラムサイドを突破する攻撃方法。エイト単独の略。

○丸尾崇真キャプテン

「何人僕をマークしようと行く時は行くと決めていたので、そこは強い覚悟を持っていたので行きました」

相良南海夫監督(右)、丸尾崇真キャプテン


○下川甲嗣選手

「率直な感想は、勝てて良かったなという事です」

 

○河瀬諒介選手

「仕留めるところで、しっかり仕留められたのは良かったかなと思います」

 

ーモールでトライを取れた時の気分は?

○下川甲嗣選手

「攻めたら点が取れるというのはチームとして認識できたので、これを勢いとしていけるなという手応えは感じました」

 

ーモールで押しこんで行く時、意識している事は?

○下川甲嗣選手

「僕らが練習で意識しているのは、しっかり密着するというところと、しっかりモールの中で話すという事です。今日はそれができていて、最後にゴールラインを割るところまで全員が密着して、コミュニケーションをとりながら押せたので良かったかなあと思います」

 

ーモールの中での話とは、例えば?

○下川甲嗣選手

「先頭にいる選手が前に出られそうとか、中の選手にしっかり、こっちに行くぞというのを話して皆が同じ方向に押し出して行くというのがあります」

 

ーラインアウトでのディフェンスとオフェンスの手応えは?

○下川甲嗣選手

「早明戦で、やはり自分たちのラインアウトが相手のプレッシャーによって崩されてしまったという経験をして、そこで反省する時に、どこへ立ち返るのかと思った時に、自分たちの精度、スキルにしっかりフォーカスするという。相手のプレッシャーもありますけれど、自分たちのやってきたスキル、ルーティンをしっかりやり切る事にフォーカスできました。自信にはなっています」

 

ーモールの中でのコミュニケーションはシーズン当初からなのか?

○下川甲嗣選手

「シーズン通してやってきてはいたのですが、やはり早明戦のラインアウトがあって、しっかり、一つ一つのプレーの精度を上げていくことにこだわってやろうと。早明戦以降その意識まで全員が高くできたのではないかなと思います」

 

ー前半のラインアウトモールディフェンスも良かったが?

○下川甲嗣選手

「練習の時から、低くまとまってという事を言い続けて、やってきているので、そこは練習の成果が出たかなと思います。まあ、一度対戦した相手なので同じことをしてくる可能性もあるし、新しいことをしてくる可能性もあるし、色々なパターンで考えていたのもありますし、どこに来てもやることは一緒という共通意識があったので、できたのかなと思います」

 

ーモールは帝京戦前にかなり準備していたのか?

○下川甲嗣選手

「時間的には、特別にそんなに時間をかけた訳ではないのですが、モールに当てられた時間のなかでも全員が精度高く、Aチームだけでなく、Bチームのクオリティもすごく高い中で練習ができたので」

 

ーモールの中で覚えていることがあれば?

○下川甲嗣選手

「小林賢太選手がリフトしてモールを組んだので、賢太の方に行けるという事は言っていました」

 

ー外で取り切る意識と、ミスの少なさについては?

○河瀬諒介選手

「意識の部分としては、早稲田のバックスリーとして、ボールを持ったら常にトライを狙いに行くという意識で、プレー中のコミュニケーションだとかスペースを共有するようにしています。両ウィングがトライを取り切る能力が高いので、早稲田がやっているシステムです」

 

ー細かいステップでトライを取った場面は?

○河瀬諒介選手

「1トライ目は、自分で勝負すると決めていたのは、相手のウィングの選手が少し外側にかぶったのでその逆を突いてしっかりトライまで行けると確信したので、勝負しました」

 

ースタンドオフのポジションにも入ったが?

○河瀬諒介選手

「練習でもスタンドオフに入ることがあるので、しっかりコミュニケーションをとりながら落ち着いてプレーできました」

 

ー決勝戦への決意、覚悟は?

○下川甲嗣選手

「ここから9日間しかないですけれど、ここから新しいことをするというのは絶対ないので、一年間積み上げてきた事を精度高くぶつけるというのと、対抗戦であれだけやられているのでリベンジしたいという強い気持ちを全員が持っているので、そういう気持ちを持ってプレーしたいですし、絶対勝ちたいと思います」

 

○河瀬諒介選手

「今まで積み上げてきたものを100パーセント出し切るという事だけなので、優勝した結果が二連覇という事なので、去年の事は考えず優勝したいと思います」

下川甲嗣選手(左)、河瀬諒介選手