中3日の厳しい条件にもFW前5人以外は“不動”
フィジー、トンガ撃破のカナダを迎えてのタフバトル

6月19日、愛知・名古屋市瑞穂公園ラグビ―場でIRBパシフィック・ネーションズカップ(PNC)2013、日本―カナダ戦が行われる。
15日にウェールズとの激闘を制して歴史的勝利を収めたばかりの日本代表は、中3日という厳しい条件ながら、FWのタイト5(前5人)以外は不動の「最も強いチーム」(エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ)で、今季のPNC3戦負けなしで優勝に王手をかけているカナダを迎え撃つ。

(text by Kenji Demura)

ウェールズに勝った翌日練習で厳しい表情を見せるSH田中。歴史的勝利の価値を高めるためにも打倒カナダを誓う
photo by RJP Kenji Demura
ウェールズ戦で後半途中出場し、インパクトあるプレーぶりで勝利に貢献したLO真壁が先発復帰
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9日間で3試合を戦わざるを得ないというタフなコンディションもあって、一部には大きくメンバーを変えるのではないかという憶測もあった対カナダ戦。

結果的には、ジョーンズHCが「ウェールズ戦で見事に仕事を果たした」と絶賛したタイト5こそ、両PRが三上正貴、山下裕史から長江有祐、畠山健介へ、両LOが大野均、伊藤鐘史からジャスティン・アイブス、真壁伸弥へと変更になったものの、FW第3列とBK陣はウェールズ戦先発メンバーのまま。
「毎試合、最も強いチームで10試合のテストマッチを戦っていく」(ジョーンズHC)という、この春から貫かれてきた方針は、カナダ戦でもしっかり維持されたことになる。

4日前先発フル出場だったHO堀江翔太も含めて、カナダ戦先発のFW前5人は日本がウェールズから初勝利を奪った歴史的瞬間にピッチに立っていた選手ばかり。

ウェールズ戦で共に後半6分に途中出場してインパクトあるプレーぶりで勝利に貢献したPR畠山とLO真壁は、以下のようにカナダ戦に向けての抱負を語る。

「ウェールズ戦ではセットプレーは良かったので、そこはクオリティを落とさないように。フィールドプレーに関しては、もう少しジャパンのやりたいシェイプのところでリードしていけるように頑張りたい」(畠山)

「今度はスターティングなので、最初20分間だけテンポ上げて、前半のラスト20分間はスタンドにコントロールを任せたり、もっとゲームコントロールしながら試合をつくっていくという部分も重要になる。セットピースとブレイクダウンのところでしっかりチームの役に立ちたい」(真壁)

一方、ウェールズ戦では11分間という短い時間ながら、しっかりスクラムを安定させたPR長江は「最初の1秒から自分の持っているものを出し切って、ジャパンの1番としてふさわしいプレーをしたい」と、昨秋の欧州遠征以来となる先発復帰に燃えている。

ウェールズ戦後「いい仕事ができた」と語ったPR畠山(写真右)。カナダ戦では「シェイプのところでリードしていきたい」
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短い時間ながらウェールズ戦で安定したスクラムワークを見せたPR長江は昨秋の欧州遠征以来となる先発復帰
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「負けたらウェールズに勝った価値が減ってしまう」(SH田中)

カナダは、日本にとっては過去2大会のワールドカップ(07年フランス大会=12―12、11年ニュージーランド大会=23―23)で連続して引き分けた因縁の対戦相手。

ジョーンズHCは今回来日したチームを「セットピースが強い。7人制の選手も多く含まれていて、力強いランナーもいる」と分析する。

カナダは日本がウェールズを破った同日に地元トロントでアイルランドと対戦した(14―40で敗戦)ばかりだが、こちらもアイルランド戦先発メンバー15人中8人がそのまま日本戦でもスターティングに名を連ねている。

「短期間の準備期間しかないので、大きなところは変えられない。重要なのはメンタル面でいかに準備できるか」(日本代表ジョーンズHC)

どちらがタフかを競うような試合ともなりそうだ。

タフさという意味では、ウェールズ戦でいきなりボールを渡さない相手選手に突っかかっていくなど、スーパーラグビーで揉まれている逞しい姿を見せ続けたSH田中史朗は、カナダ戦の持つ意味合いを以下のように語る。
「ウェールズに勝ったことで甘えが出てしまうとカナダ、アメリカ戦に影響する。ここで負けたらウェールズに勝った価値が減ってしまうので、しっかり引き締めて臨まないといけなという話はみんなにしました」

ウェールズ戦翌日(16日)の練習はリカバリーメニューも多かったが、166cmとメンバー中最も小さな田中が人一倍厳しい顔つきでバイクを漕いでいた姿が印象的でもあった。

WTB小野澤宏時が離脱したため、23人のメンバーの中で最多キャップとなるLO大野も「若い選手たちも含めたメンバーでウェールズに勝っただけに、残り2試合が重要になる」と同調する。

2103年6月15日、東京・秩父宮ラグビ―場で、日本代表は過去にないような逞しさを見せた。

ウェールズ撃破の真価を高めるためにも、すでにフィジーにもトンガにも勝っているカナダを名古屋で破り、「日本は進化している」(WTB廣瀬俊朗キャプテン)という印象を強く世界に発信したいところだ。

歴史的なウェールズ戦勝利の価値を落とさないためにもカナダ戦は「マストウィン」ゲームとなる
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カナダ戦はW杯での2度の引き分けの決着をつける因縁の試合となる(写真は11年NZ大会)
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