意識高め、スタートからフィジカルで上回る チャンスに取り切り、今度こそ歴史を変える 6月15日、『リポビタンDチャレンジ2013』第2戦、日本―ウェールズの第2テストマッチが東京・秩父宮ラグビー場で行われる。 1週間前の第1テスト(大阪・近鉄花園ラグビ―場)では、11―6とリードして前半を折り返すなど、世界ランキング5位のウェールズを追い詰めながら、18―22で惜敗した日本代表。 あと一歩届かなかった第1テストでの反省点を修正して、2年連続で欧州6カ国対抗覇者から日本ラグビーの歴史を変える金星を狙う。 (text by Kenji Demura) セットプレーのキーマンとなるHO堀江。ダルマゾコーチ(右)を交えた調整が続けられているphoto by RJP Kenji Demura 第1テストでは安定性を欠く面もあったスクラムは当然勝敗を分ける鍵に。練習中のSH田中の視線も厳しいphoto by RJP Kenji Demura 「勝ちきれなかった」 ウェールズとの第2テストマッチで6試合ぶりに代表復帰することになるWTB廣瀬俊朗キャプテンは、自らがプレーできなかった第1テストに関して、そんな表現で総括した。 恐らく、その感想は6月8日に近鉄花園ラグビ―場を埋めた2万人を超えるファンに共通するものでもあっただろう。 「チャンスをものにできなかったことに尽きる。ウェールズにシンビン退場者が出ていた時間帯に相手に6点を与えてしまった。あそこがターニングポイントになった。ハーフタイムでは11-6で勝っていたが、リードしている時に圧力をかけきれなかった」(エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ) 多くの時間帯で試合をコントロールしながら勝利をつかめなかった第1テストから1週間。場所を東京に移して行われる第2テストの先発メンバーは、前述の廣瀬主将が藤田慶和に代わって右WTBに入る以外は“不動”。 これも、4点差で敗れた第1テストの内容が概ね合格点が与えられる内容だった証拠とみていいだろう。 ちなみに、藤田が足の裏を痛めて100%の力では走れないWTB小野澤宏時に代わってリザーブに。その他、FW陣ではコンディションが良くなった真壁伸弥、ジャスティン・アイブスの両LO陣もリザーブに名を連ねている。 そんな不動のメンバーで、具体的にはどういうふうに1週間前にはものにできなかったチャンスにスコアを重ねていくのか。 「BKのアラインメントを少し変えたり、ボールを少し変えたりして、トライに結びつけるようにしていきたい」と廣瀬主将。 2試合連続で指令塔を務めるSO立川理道も「もっとBKがリードするのが大事。チャンスにバックスが要求するようにした方がいい。(日本代表として3試合目の先発となるCTBクレイグ)ウィングのコミュニケーションレベルも上がってきた」と、BKでイニシアチブを取っていくのが大事だとの認識でいる。 その立川が「FWの動かし方も判断力もすごい」と、その存在感を語るSH田中史朗はチャンスに取り切るために一番大事なのは「意識」の部分だとも。 「あと1フェイズ、しっかりボールが出れば取れる。ひとりひとりの意識が上がってきているし、あとはどれだけまとまってやれるか。攻めでも守りでもしっかり前に出ることが大切になる」 接戦をものにするためにはFB五郎丸副将の右足にかかる比重も大きいphoto by RJP Kenji Demura WTB廣瀬主将が日本代表でプレーするのは4月27日のA5N香港戦以来となるphoto by RJP Kenji Demura 「日本はアジアのウェールズになる」(ジョーンズHC) もちろん、第1テストではやや不安定な面も垣間みられたセットプレーでFWがBKにいいボールを提供できるかもポイントになる。 今季、田中とともにスーパーラグビーでプレーし、『リポビタンDチャレンジ2013』直前に日本代表に合流したHO堀江翔太も「気をつけるのはセットプレー」であることを強調する。 「まずはセット。ラインアウトとスクラムでボールを100%出して、プレッシャーをどれだけかけられるか。初めからプレッシャーをどんどんかけていきたい。ウェールズはそんなに経験積んだ選手がいるわけじゃないので、重いのは重いけど、駆け引きとかしてくるわけじゃない。元気な状態同士だと難しいけど、80分間あるので、常にプレッシャーかけ続けて、最後の最後にこちらにチャンスが回ってくるというのは、僕の中ではイメージできている」 スクラムのキーマンとなるPR山下裕史も「ウェールズがどんな組み方してくるのか明確にわかった。まずはヒットで勝つこと。花園でもしっかり8人でヒットチェイスする気持ちはあって、早い球出しができたスクラムも多かったし、後半いいかたちで押し込めた場面もあった」と自信を見せる。 ウェールズ代表を率いるロビン・マクブライドHCは日本代表に関して「予想以上にコンタクトエリアでのプレーがしっかりしている」と印象を語る。 当然、コンタクトエリアを制圧することを一段と意識したゲームプランで日本に臨んでくるはずだ。 「フィジカルで上回るチーム、試合のスタートから真っ向勝負をものにしたチームが勝つ」というジョーンズHCは「ウェールズは世界のトップ国の中で一番ハードワーキングなチーム」と認めながら、「自分たちはアジアにおけるウェールズになっていかなくてはならない」とも。 「先週の試合で一番良かったのは、負けた後、選手たちが全員悔しがっていたこと。試合に勝つための秘策はない。ハードワークを続けるだけ。 ビッグゲームになると、一貫性が持てない時間帯があって、そこで苦戦する。こっちが疲れていると時は相手も疲れている。そういう時間帯にしっかりバトルできるのがいいチーム」 正面から世界5位の欧州王者に対峙し続けて、日本が目指すべきウェールズから金星を奪うーーそんな80分が間もなく始まる。 WTB廣瀬主将の復帰以外は不動のメンバーを送り出すジョーンズHC。勝算はあるが秘策はないphoto by RJP Kenji Demura