ジョーンズHC体制下で初のPNCアウェー戦
試合の入り、ブレイクダウン、DFがポイントに

6月1日、フィジーのラウトカで『IRBパシフィック・ネーションズカップ(PNC)2013』第2節、フィジー―日本戦が行われる。
今季のPNCで唯一のアウェー戦。昨季の同大会でも日本の試合は全てホーム開催だったため、エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ体制下では、初の南太平洋の敵地に乗り込んでの試合となる。

(text by Kenji Demura)

トンガ戦で日本代表最多キャップタイとなったWTB小野澤はフィジー戦で新記録樹立へ
photo by RJP Kenji Demura
トンガ戦で共に途中出場してインパクトあるプレーを見せたHO青木、PR畠山が揃って先発へ
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5月25日に行われたトンガ戦のために滞在していた横浜から成田空港に向かい、さらに韓国・仁川空港を経由して計19時間。
フィジー到着時、ナンディ空港周辺が激しい雷雨に見舞われていたため、空港で3時間ほど待機させられるアクシデントもあった。
「テストラグビ―の厳しい状況に対応していく必要がある。違う環境、食事、気候。チームが成長していくためには、すべてに慣れていかないといけない」(ジョーンズHC)
環境という意味では、昨秋の欧州遠征以上に厳しいものがあるPNCのアウェー戦。もちろん、すでに同HCが宣言している「(PNC以降は)すべてベストメンバーで戦う」という方針は、フィジー戦でも貫かれることになる。
先発メンバーはトンガ戦から計5人が入れ替わった(ポジション変更が1人)。
FW第1列は左PRの三上正貴はそのままだが、トンガ戦では共にリザーブからの途中出場だったHO青木佑輔、右PR畠山健介が先発へ。
「トンガ戦は前半の最初、ボールキャリアが姿勢が高かったり、アジア5カ国対抗(A5N)でのクセが抜けずにそのまま入ってしまった部分があった」
FW陣最多キャップを誇るLO大野均が振り返るとおり、前節のPNC開幕戦ではA5Nとのギャップに対応しきれずに、トンガの先制パンチを食らうかたちで前半12分までに2トライを奪われ、主導権を握られた。
当然、キックオフと同時にしっかり自分たちのペースで戦っていくことが、過去1度しか勝利を収めたことのない敵地でのフィジー戦をものにするための条件となる。
トンガ戦では揃って後半20分から出場。チームを勢いづかせるプレーを続けた青木、畠山ともに、そのことは重々承知している。
「(途中出場が続いた)ここまでは、後半、全体に運動量が落ちた時に出て行って、ワークレート上げて、チームの勢いつけるためにやること意識していた。トンガ戦でもいいプレッシャーをかけられた。先発で出る場合は、最初から勢いをつけるために、80分プレーすることは考えずに、最初からワークレート上げていきたい」(青木)
「リザーブは後半20分とかでテンポ上げること重要になってくるけど、先発の場合、最初の入り大事になる。最初のコンタクト、最初のスクラム。しっかりファーストプレーでチームが勢いづくようなプレーをして、試合を作れるようにしていきたい」(畠山)

7人制でのプレーでもおなじみのとおり、PNC諸国の中でも、フィジーは圧倒的にランニング能力に長けるチーム。反面、伝統的にセットプレーを嫌がる傾向もあり、まずはスクラムで優位に立つことが、フィジー戦勝利のための条件とされてきた。
「トンガ戦のスクラムに関しては全体的に良かった。フィジーは結構ひとりひとりが重たいので、気を抜くと押されたりとかもある。しっかり前半からセットプレー安定させていきたい」
今回のフィジー戦が10試合目のPNCでのアウェー戦となる畠山も、スクラムをポイントのひとつに上げる。

トンガ戦で負傷した小野に替わって指令塔を務めるSO田村にとっては初のPNCでの先発となる
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小野澤が日本代表最多キャップ新記録樹立へ

FW第2列、第3列は、トンガ戦でのLO真壁伸弥の負傷、フィジーで合流したマイケル・リーチの復帰もあって、今季ここまでオープンサイドFLとしてプレーしてきたマイケル・ブロードハーストがLOに上がってベテラン大野とコンビを組み、第3列はヘンドリック・ツイ―リーチのFL陣にNO8が菊谷崇ゲームキャプテンという昨秋の欧州遠征4試合中3試合で見られた顔合わせに。
新ポジションでのチャレンジとなるブロードハーストは「(FLからLOにポジションが変わっても)基本的なプレースタイルは変わらない。少しだけタイトにプレーすることを心がけるだけ。ボールを持つよりは、ラックなどへの働きがけ重要になってくる。リーチ、ヘンドリックス、キクにいい状況でボールを渡せるようにしていきたい」と抱負を語る。

BK陣に目を移すと、真壁同様、フィジー遠征自体に加わっていない小野晃征に替わって田村優がSOとしてPNC初先発。
「(後半10分から途中出場したトンガ戦でも)フィジカル的には止まった状態からだと勝てないけど、動きながらなら日本の方が強かった。まわりとコミュニケーションをとって、みんなでムーブメントしながら、ゲインライン超えられる状況をつくっていきたい」(田村)
さらに、春先から調子のいい状態が続き、トンガ戦でも練習参加が遅れなければ先発出場も考えられていたWTB今村雄太が藤田慶和に替わって14番をつける。

「試合を通じて、ブレイクダウンで苦戦して、速い球出しができなかった。スローダウンされ、DFにリセットする時間を与えてしまった。ブレイクダウンで人数をかけしてしまうため、アタックシェイプの維持も難しくなってしまう悪循環に陥った」というのが、前節のトンガ戦に関するジューンズHCの総括。
自身7度目のフィジーとのテストマッチで、歴代日本代表最多キャップ記録を更新することになるベテランWTB小野澤宏時も、ポイントは「ブレイクダウンだけ」と語る。
「軽いプレーをしたら勝てないので、強いプレーで、しっかりボールキャリーして、ブレクダウンで制圧する。そのためにシェイプがあって、リロードして、早いセットして、数で勝負」(小野澤)

「スクラムは良くなっている」と、マルク・ダルマゾ スポットコーチも一定の評価を与えるセットプレーの安定度はそのままに、「試合の入り」、「ブレイクダウン(での2人目の寄りを機能させて素早い球出しをしていく)」というンガ戦で課題として浮上したポイントでいかに進歩した姿を見せられるか。
過去のPNCで日本がフィジーに勝ったのは、11年のアウェー戦の1度のみ(24―13)。
その時も、卓越したランニング能力を誇るフィジーを2トライに抑えた好守が勝利の原動力にもなった。
「フィジーはいいランナーが揃うので、本当にいいDFのテストチャンスになる。日本があまりフィジーに勝てないのは、アスリートとしての能力にやられているから。1対1のタックル決められれば、勝ちゲームに持っていける」(ジョーンズHC)
NEC所属のWTBネマニ・ナドロもスコッド入りしているフィジーのアタックを止められるかも、2年前の再現のための絶対条件となる。

フィジーで合流したFLリーチは”第3の故郷”での試合に燃えている
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ダルマゾコーチ(左)に加えてフィジーでボーズウィックコーチも合流。セットプレーに磨きがかけられている
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