これぞアジアとは違うパシフィックの洗礼
ポジティブな内容もトンガに10点差負け

25日、『IRBパシフィック・ネーションズカップ(PNC)2013』が開幕。
25日、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場でトンガ代表と戦った日本代表は、前半だけで3トライを奪われる立ち上がりの悪さも影響して、17-27で敗れた。
日本の第2戦はフィジーとのアウェー戦(6月1日/ラウトカ)が予定されている。

(text by Kenji Demura)

photo by RJP H.Nagaoka
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「結果は残念だが、選手たちの後半のがんばりにはポジティブになれる。正しい方向性に進んでいることは間違いない」
圧倒的な強さを見せたアジア五カ国対抗(A5N)最終戦のUAE戦から2週間。

PNC初戦に10点差で敗れた後の記者会見で、エディー・ジョーンズ ヘッドコーチはそんなふうに、世界ランキング11位のトンガとの戦いを総括した。
 
A5Nで6連覇中の日本(世界ランキングは15位)にとって、対戦相手がアジアレベルからいきなり世界上位に変わるPNC初戦は「例年、フィジカル的には難しい試合」(NO8菊谷崇ゲームキャプテン)。
 
実際、日本が優勝を果たした11年大会も含めて、過去1度もPNCの初戦での勝利はなし。

「去年に比べてチーム全員がフィジカル面でもレベルアップしている。最初の20分、我慢できれば大丈夫だと思うし、そこがポイントになる」
 
指令塔のSO小野晃征がそう代弁してくれていたとおり、A5NとPNCのギャップの大きさを意識しながら厳しいトレーニングを続けてきたチームにとって、初戦の立ち上がりが重要であることは共通認識だったが、残念ながら歴史は繰り返されてしまった。

「前半は酔っぱらっているような感じ。まだアジア五カ国対抗でプレーしているようだった。トンガがディフェンスで上がってきて、アタックでも上がってきたのに対して、受けに回ってしまった」(ジョーンズHC)
 
前半5分、12分と、トンガWTBフェトゥ・バイニコロが連続トライ。

「日本の高校や大学でプレーするような高いボディポジションでプレーしてしまった」  試合後、ジョーンズHCがそう指摘したミスもあって、注意していたはずの立ち上がりにリードを許してしまう。

「頭でわかっていても、実体験するというのはまた難しいものがある」と、A5NとPNCのレベルギャップへの対応の難しさを語ってくれたのは、この日はスタンドから試合を見つめていた廣瀬俊朗主将。
 
それでも、時間の経過とともに、フィジカルなトンガのプレーにも対応できるようになった日本が、攻める時間帯が多くなる。
 
22分に敵陣深くのラインアウトからしっかりモールを押し込んで、HO木津武士がトライ。
 
その直前にも連続してトンガゴールを陥れて日本だったが、グラウンディングできずに結局、前半の日本のトライは1本のみ。
 
逆に、前半終了間際にトンガのキックを使った攻めに、DFが乱れて3トライ目を許し、17点差をつけられての折り返しとなってしまう(5-22)。

photo by RJP H.Nagaoka
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日本代表歴代最多キャップに並んだ小野澤は
「去年よりも共通イメージができてきている」

ハーフタイムに「キックオフレシーブとブレイクダウンの2人目の寄り」を修正して臨んだ後半は、冒頭で紹介したジョーンズHCのコメントどおり、全体的には日本が試合を支配。
 
1分に、この日、歴代日本代表最多キャップ数に並んだWTB小野澤宏時が自陣左サイドを好走した後、SO小野、FLマイケル・ブロードハースト、NO8菊谷ゲームキャプテンと、判断のいいプレーで敵陣深くに攻め込み、最後はCTBマレ・サウがトンガゴールを駆け抜けた。
 
いきなり後半開始早々に、2トライ2ゴールで逆転できる12点差に追い上げただけに、反撃の狼煙が上がったかに思われたが、直後のキックオフからあっさりトンガにトライを返されて、完全には勢いには乗り切れず。
 
結局、その後、日本が奪ったトライは22分に敵陣ゴール前スクラムを起点に、最後はラックからFLヘンドリック・ツイが飛び込んだ1本のみ。
 
後半18分に小野澤に替わって途中出場していたWTB福岡堅樹が「稲妻のような走り」(ジョーンズHC)でビッグゲインして相手のFBと1対1になったシーンや、敵陣深くでのスクラなど何度もチャンスはあったが、仕留めきれず。
 
最終スコアは17-27で、06年の「パシフィック・ファイブ・ネーションズカップ」時も含め、8年連続となるPNC黒星スタートとなった。
 
チャンスはつくりながらも、トライを取り切れなかった原因に関して、ジョーンズHCと菊谷ゲームキャプテンはぞれぞれ以下のように語る。

「試合を通じて、ブレイクダウンで苦戦して、速い球出しができなかった。スローダウンされ、DFにリセットする時間を与えてしまった。ブレイクダウンで人数をかけしてしまうため、アタックシェイプの維持も難しくなってしまう悪循環に陥った」(ジューンズHC)

「アジアの時はボールキャリアーが常に勝っている状態だったのが、今日はボールキャリアーがダブルタックルされてコントロールを失っていた。ふたり目の仕事もあるが、まずはボールキャリアーがしっかりしないといけいないという面もある」(菊谷ゲームキャプテン)

PNCに向けて最大の課題とされていたスクラムは試合を通じて安定。

冒頭のジョーンズHCの言葉とおり、ポジティブな要素が多かったことも間違いないだろう。
 
歴代最多キャップに並んだベテラン小野澤も「去年よりも共通のイメージができ上がっている。あとは、例えば攻めの方向性をもう少し順目にこだわってベクトルを合わせていったり、どういう時に順目でどういう時に逆にいくとかなどの細かい擦り合わせをしていったり。総じてレベルアップしているのは間違いないので」と、全体的にはいい方向レベルアップしている感触を語る。

「キックオフレシーブとブレイクダウンでの2人目の寄り。そこが今日明らかになった2つの課題。TK(低い姿勢での)スピードをさらに鍛えていく必要がある」

ポジティブな内容も多かった敗戦での課題を踏まえ、2年ぶりのフィジー戦勝利を目指して、日本代表は26日に敵地に向けて出発する。

photo by RJP H.Nagaoka
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