世界15位の日本が11位トンガにチャレンジ
過去のPNCでの対戦は日本の5勝2敗

25日、『IRBパシフィック・ネーションズカップ(PNC)2013』が開幕する。
昨年までは、日本と南太平洋諸国(フィジー、サモア、トンガ)の4カ国による対抗戦だったPNCだが、今年度は昨季の優勝国であるサモアが南アフリカで行われる国際大会に参戦するため不参加。代わりにカナダ、アメリカの北米勢が加わり、5カ国による対抗戦となる。

(text by Kenji Demura)

photo by RJP Kenji Demura
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日本の開幕戦の相手はトンガ(25日、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場)。

06年に「IRBパシフィック・ファイブ・ネーションズカップ」としてスタートして以来(07年からは「IRBパシフィック・ネーションズカップ」に)、毎年対戦を重ねてきたトンガとのPNCでの成績は5勝2敗。

ただし、PNC以外も含めた過去の対戦成績は7勝7敗のタイ。

11年のワールドカップ、昨年のPNCと2連敗中ということもあり、「(PNCでの)目標は優勝すること」と語るエディー・ジョーンズ ヘッドコーチ率いる日本代表にとっては、幸先のいいスタートを切るためにも、絶対負けられない一戦となる。

「ここからの6試合は全部ベストメンバーでいく」というのが、ジョーンズHCが語ったPNC4試合と『リポビタンDチャレンジ2013』ウェールズ戦2試合(6月8、15日)に関するセレクションポリシー。

ジョン・カーワン前HC時代も含め、PNCでの戦いを知り尽くしていると言っても過言ではないNO8菊谷崇ゲームキャプテンが「例年、アジア五カ国対抗(A5N)が終わった後で、フィジカル的には難しい試合となる」と語るPNC初戦。

ジョーンズHCは、その菊谷ゲームキャプテンを含めて「3人の偉大な日本人選手」と表現する、WTB小野澤宏時、LO大野均などのベテランの一方で、A5Nでしっかりジャパンに定着したニューフェイスなどもそのまま起用する決断を下した。

フロントローは三上正貴と山下裕史のPR陣にHOが木津武士。

目標である世界ランキングトップ10入りのための、ひとつの大きな課題として捉えられているセットプレーを重視した顔ぶれと言っていいだろう。

「スクラムはいい準備ができているし、勝敗を分けるファクターのひとつになる」とジョーンズHC。
 PNCに向けた東京合宿では昨秋の欧州遠征でもスクラムを指導した元フランス代表HOのマルク・ダルマゾ スポットコーチが再び合流。
「スクラムだけの試合があるんじゃないかというくらい、スクラム練習ばかり毎日やってきた」(木津)というほど、今まで以上にセットプレーに重点を置いたトレーニングを積んできてもいる。

基本的には、昨秋の欧州遠征でも試された「8人で低く」という組み方が踏襲されているが「エイトがしっかり引っ張るというのは去年とは違う」(菊谷ゲームキャプテン)と、新たなアレンジも。

スクラムに関しては、トンガ戦は今季初の本格的なコンテストにあるという面もあり、先発のフロントロー3人の消耗も激しくなることが予想されるが、控えにも「常に体重96キロ分全てを試合で出してくれる、そういう選手」とジョーンズHCが評価するHO青木佑輔に、浅原拓真、畠山健介のPR陣という仕事人が並び、万全の態勢でPNC初戦に臨む。

LO=大野均、真壁伸弥、FL=ヘンドリックス・ツイ、マイケル・ブロードハースト、そしてNO8に菊谷ゲームキャプテンというFWの後ろの5人は、今季のA5Nでよく見られた陣容。

「トンガは間違いなく日和佐(篤=SH)をターゲットにしてくる」(ジョーンズHC)
「去年はモア(トンガSH=タニエラ)にラインブレークを3回くらいされて、ことごとく得点につなげられているので、モア周辺、ウチのFLとBKの間の部分をしっかりDFしていかないと」(菊谷ゲームキャプテン)
ダイレクトプレーに特徴のあるトンガのアタックを止めるためにも、当然ルースFWのDF面での踏ん張りがポイントになる。

photo by RJP Kenji Demura
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代表最多キャップ記録目前の小野澤
3試合連続先発の19歳藤田が両翼に

BKに目を移しても、日本代表最多キャップにあと1個と迫っているベテランWTB小野澤をはじめ、A5Nで試された布陣を経ての「ベストメンバー」構成となった。

前述のSH日和佐、SO小野晃征、CTB立川理道、同マレ・サウ、FB五郎丸歩バイスキャプテンはA5N5試合中、最後のUAE戦を除く3試合で先発。

右WTBには廣瀬俊朗主将、今村雄太のコンディション面の問題もあって、藤田慶和が入り、福岡堅樹がリザーブに。

3戦連続先発出場となる藤田は、ここまで途中出場した香港戦も含めて、試合に出れば必ずトライを記録する決定力を披露しているが、「ブラインドの時にラインに入るべきなのか、攻めるべきなのか、自分の判断で動けていないような気もする。ゴロー(=FB五郎丸副将)さんに『ステイ』とか『来い』とか言われているので、そこを自分の判断でできるようになれば、ゴローさんの負担も減るのではないか」と課題を語る。

一方、最多キャップ数やテストマッチトライ数(世界3位の元ウェールズ代表WTBシェーン・ウィリアムの記録にあと5)など、偉大な個人記録達成も迫るベテラン小野澤は、いつも通りに個人のことなど眼中にない様子で「常にフォーカスすべきなのは自分たちの攻撃の準備。ボールキープして、我慢して、アタックし続ける。(A5Nが終わって)ここからは簡単には取れなくなる。そこで淡白ならずに、意識のバラつきがないように、コミュニケーションとっていく。全員の共通認識も進んでいる」と、あくまでもチームとして、いかにしっかりシェイプをキープしながらアタックし続けられるかに専ら意識を集中している。

今回来日したトンガ代表には、長らくフラン代表を指導してきたデビッド・エリスDF担当コーチが帯同。

「DFラインに安定感を与えるコーチ。今まで、トンガはそういうふうにDFラインを使ってこなかったがスペーシングはよくなるはず」とジョーンズHCも警戒するが、今まで以上に守りを重視しているトンガに日本のアタックがどこまで通用するかをはかるかっこうの機会ともなる。

「フィジカルもスピードも自分たちがどういうラグビ―をするのかの理解度も上げていく必要がある」

アジア6連覇を達成した後、ジョーンズHCはPNCでいい結果を残すためには、当然ながら多くの部分でのレベルアップが必要だとの認識を示した。

「2015年ワールドカップを見据えた戦いになる」(同HC)という意味合いも持つ、今年のPNC。

現在世界ランキング15位の日本が11位のトンガを迎える初戦。昨年度から着実に進化していることを示すためにも、内容が伴った勝利が求められる。

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1年前は24-20でトンガが勝利。11年W杯でも敗れている日本にとってはリベンジ戦となる
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