ジュニア・ジャパンが豪州、NZの列強に挑む
IRBパシフィックラグビ―カップ2013が開幕


SHは小川が先発。ジュニアジャパンのアタックリズムをつくるキーマンとなる
photo by Kenji Demura (RJP)
HB団の控えはSH重(右)とSO森田(中央)。勝負どころでの投入も十分考えられる
photo by Kenji Demura (RJP)

 ジュニア・ジャパンが初参加するIRBパシフィックラグビーカップ(PRC)2013が開幕する。
 12日にブリスベンで行われるブリスベンアカデミー戦を皮切りに、1ヵ月間に渡って豪州、ニュージーランドを転戦しながら、スーパーラグビー(SR)スコッドも含む強力チームと6試合を戦う予定となっている。
 4人の高校生(LO姫野和樹、SH重一生、SO山沢拓也、FB松田力也)から、日本代表13キャップの最年長FL佐々木隆道まで。
 現在の年齢に関係なく2015年、あるいは2019年に日本代表を背負って立つことが期待されているジュニア・ジャパンの面々にとっては、紛れもなく未知の領域に踏み込む貴重な体験となる。

「ぞれぞれ、スーパーラグビーの選手が5、6人ずつは入ってくるはずだし、近い将来にSR入りを狙っている若い選手も加わり、かなり強力なチーム」
 エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは、初戦、2戦目の対戦相手であるブリスベンアカデミー、レッズAに関して、そんなふうに説明する。
 すでに世界最高峰SRでのプレー経験があったり、そうでなくても限りなくSRレベルの近い有力選手ばかりが揃う、強敵であることは間違いなさそうだ。
 ちなみに、今回はジュニア・ジャパンとの対戦はないものの、12日にフィジー・ウォーリアーズと対戦予定となっているSRレベルズのジュニアチーム「ライジング」では、すでにレベルズの一員としてスーパーラグビーデビューを飾っている日本代表HO堀江翔太もプレー予定。もうひとりのライジングのHOもレベルズで堀江と第2HOの座を争っているパット・レアファ。
 もちろん、こうしたスーパーラグビーでレギュラーを目指す選手にとっては貴重なアピールの機会であり、「久々に長い時間試合ができるので、めちゃくちゃ楽しみ」(堀江)と、モチベーション高くPRCに臨んでくることになるはずだ。
 単純に言えば、豪州ではレベルズの本拠地であるメルボルンよりも、ブリスベン周辺の方がラグビー熱が高く、選手層も厚い。
 共にSRレッズと関係の深いブリスベンアカデミー、そしてレッズAと、いずれも豪州ラグビーの聖地と言ってもいいバリモアで対戦するジュニア・ジャパンは、いきなり世界最高峰を体感することになる。

いきなり高校生SO山沢が先発
藤田、竹中の実戦復帰も確定的

 ジュニア・ジャパンは3月4~8日の国内合宿を経て、9日に豪州入り。現地で2日間のトレーニングを行っただけで初戦を迎える。
 毎日、早朝5時台からS&Cセッションを行うなど、国内合宿から続くハードなトレーニングをこなしながら、「現時点でのベストメンバー」(遠藤哲ヘッドコーチ)で初戦に臨む。


PRC初戦でジュニアジャパンの指令塔の重責を担うことになった高校生SO山沢。「冷静にプレーしたい」
photo by Kenji Demura (RJP)

 HO太田春樹、LO北川勇次、FL村田毅主将、NO8佐々木隆道、CTB林泰基副将など、日本代表経験もあるシニアメンバーに加えて、多くの期待の若手も顔を並べた。
 いきなり、初戦でジュニア・ジャパンの指令塔を務めることになったのは、まだ高校生のSO山沢拓也。
 すでに、昨年6月のトンガ戦でジュニア・ジャパンの一員としてプレーしているが(途中出場)、改めてジュニア・ジャパンの「10番」に指名されたかっこうだ。
「グラウンド上ではしっかりとチームの10番として存在しているし、オーラがある」と、遠藤ヘッドコーチも18歳の若者が持つ指令塔としての資質には太鼓判を押す。
 大役を担うことになった本人は、「慌てたらまわりが見えなくなるので、冷静にプレーしたい」と、抱負を語っている。
 昨年5月のアジア5カ国対抗でいきなり6トライを記録するなど鮮烈な日本代表デビューを飾りながら、その後ヒザのケガでシーズンを棒に振ったWTB藤田慶和にとっては、約10ヵ月ぶりの実戦。「何よりもラグビーできることが嬉しいし、自分からどんどんボールをもらいに行って、トライが取れたらいい」(藤田)
 藤田同様、昨季、日本代表とともに活動しながら、足首のケガでシーズン後半はほとんどプレーする機会がなかったWTB竹中祥にとっても、昨年6月のフレンチバーバリアンズ戦以来の本格的な実戦復帰ということになる。「80 - 90%くらいの感じで走れるようになった。思い切ってプレーするのが大事」(竹中)


遠藤ヘッドコーチはPRCでの強豪チームとの対戦に「チャレンジ」を強調する
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「『世界一のアタッキングラグビー』を目指しているジャパンの次を狙う存在として、強い相手に覚悟を決めてチャレンジしていく」
 遠藤ヘッドコーチはそんなふうにジュニア・ジャパンがPRCで戦う意義を語る。
 もちろん、国内合宿から数えても1週間だけのチームトレーニングで迎える初戦。準備期間としては十分ではないのも確かだろう。
 国内合宿時には村田主将、林副将とも「一番の課題はコミュニケーション」と口を揃えていたが、試合前日には「みんな積極的にしゃべるようになってきた」(村田主将)、「コミュニケーションがだいぶよくなって、戦い方のイメージがついてきている」(林副将)と、チームになってきている手応えも感じている。

「『こんなところからでも攻めてくるのか』と思わせるくらいのものを見せたい」(NO8佐々木)
 2015年、2019年に日本のアタッキングラグビーが世界で確固たる存在感を示すものになっているためには、あるいは上のジャパンのプレーぶりよりも重要とさえ言えるかもしれない、大事な戦いが始まる。

text by Kenji Demura


FL村田毅主将(右から2人目)や最年長NO8佐々木(左端)など日本代表を知るシニア組の統率力も鍵に
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藤田、竹中、中づるなどの若手BK陣を引っ張るCTB林副将の役割も重要に
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