厳しい国際試合経験、事前準備ともに相手が上

イタリアに完敗でチャンピオンシップから降格

25日、イングランド北部のマンチェスターでワールドラグビーU20チャンピオンシップ最終戦計6試合が行われ、11~12位決定戦でイタリアと対戦した日本は17—41で完敗。

参加12チーム中最下位となった日本は来季同チャンピオンシップで戦う権利を失い、下部大会であるワールドラグビーU20トロフィーへ降格することが決まった。

「必死な方が勝つ」(古川主将)と臨んだイタリア戦だったがまさかの大敗でチャンピオンシップ残留果たせず

必死な方が勝つ」(古川主将)と臨んだイタリア戦だったがまさかの大敗でチャンピオンシップ残留果たせず
photo by Kenji Demura

 

大会開幕戦の南アフリカ戦で前半を19—14で折り返したのをはじめとして、世界の強豪国と対戦で「試合の入りはいい。相手が一番元気のいいところでトライを取っていることに関しては自信を持っていい」(中竹竜二ヘッドコーチ)と、立ち上がりは主導権を握る試合を続けてきたU20日本代表。

 

勝てばチャンピオンシップ残留、負ければ降格というプレッシャーのかかった状況で迎えたイタリアとの最終戦でも開始5分にSO金井大雪のPGで先制。

ただし、この日は試合直前に激しい雨が降るなど、難しいコンディションだったことも響いて、ここまで安定したプレーを続けていたFW陣が苦戦するシーンが時間の経過とともに目立つようになる。

「グラウンドが滑る状態で低くなりきれなかった。相手の体が大きくて、そこで当たり負ける形になった」(FL古川聖人主将)

ファーストスクラムではPKを得たものの、その後はイタリアFWに一気に押される場面もあり、9分にキックパスからのトライで逆転を許した後、20分にはモールでトライラインを割られた。

 

22分に自陣10m付近のラインアウトからのクイックスローインでチャンスをつかみ、WTB山村知也の快走でトライを返して12—10と追い上げたが、31分にスクラムでコラプシングの反則を取られて、PGによる3点を加えられた後、前半終了間際に再びイタリアにキックを絡めたアタックでトライを奪われて10—20でハーフタイムを迎えた。

前半22分のWTB山村のトライで追い上げた日本だったが、自信を持っていたFW戦で後手に回ったのも響いた

前半22分のWTB山村のトライで追い上げた日本だったが、自信を持っていたFW戦で後手に回ったのも響いた
photo by Kenji Demura

「チームも個人としても出し切れなかった。

この経験を生かしていく」(WTB山村)

 

「このチームは仕掛けるラグビーが持ち味だったのに前半は弱気になっていたので、もう一度、自分たちから仕掛けようということを確認した」

中竹HCからそんな指示が出て臨んだ後半、いきなり日本にビッグチャンスが訪れる。

点差を狭めるPGも狙えたPKからのタッチキックで敵陣深くでのマイボールラインアウト。

当然、FW陣が自信を持っているモールでトライを狙うが、再び激しく降り出した雨も影響したのか押し切れず、FWがボールを持ち出したところでノックオン。直後のスクラムで反則を犯し、チャンスを逸してしまう。

後半開始早々に訪れた流れを変える機会をものにできなかったことで意気消沈したのか、この後は、「前に出るディフェンスをしようとしたが、グラウンドが滑って前に出きれずに受けてしまった。一発目が大事だったのにファーストが受けてしまって、そこからどんどん受けていく感じになったしまった」(FL古川主将)という悪循環にはまるかたちでイタリアのアタックが止められなくなり、9分、17分、26分と失トライ。

終了5分前にラインアウトからNO8テビタ・タタフが突破して1トライを返したものの、24点差をつけられての完敗を喫した。

 

南アフリカ、フランス、そしてアルゼンチンと、U20世代では世界のベスト4常連国と対等に渡り合う時間が増えるなど、プール戦時点で「去年のチームよりもツーステップ上」(中竹HC)という手応えも感じていた日本だったが、絶対勝たなければいけない試合だったイタリア戦では「肉体面からくるメンタルの部分で受け身になった」(遠藤哲FWコーチ)ことも響いて、今大会ではワーストと言っていいパフォーマンスに終始してしまった。

「必死だった方が勝つと思っていたのに、正直いままでの相手と比べても、いままで通りやったら勝てるだろうというのがあったかもしれない。必死さというところをチームに浸透させられなかった」(FL古川主将)

 

「プレッシャーの中で自分たちのやってきたラグビーをやるというのがちょっとずつズレていって、それを崩しにきた相手のプレッシャー対して少しずつ崩れていってしまった。

練習の中、そしてミーティングでも、相当やったつもりでいたけど、プレッシャーの中でもやるべきことをし続ける強さが足りなかった。頭ではわかっていたけど、逃げ出したくなるプレッシャーにソフトな選択をしてしまった。そういうプレッシャーの下でプレーする経験を積ませてあげられなかった。そこが課題のまま、終わってしまった」(中竹HC)

 

この日、戦ったイタリアは毎年エイジグレードレベルでも6カ国対抗など、多くの実戦を経験しているのに対して、日本は正式なU20日本代表として戦ったのは今大会のみ(3月のワールドラグビーパシフィック・チャレンジの1試合はU20メンバーのみで戦っている)。

20歳以下のテストマッチと言える厳しい国際試合の経験では、12チーム中、日本が最も少なく、その差も勝敗に少なからず影響を与えたのは紛れもない事実だろう。

 

「今日のトライは自分の得意なシチュエーション。ああいう部分でもらえたら、しっかりトライは取りきれる自信はついた。それでも、結果がついてこなかったし、チームとしても個人としても出し切れなかった。

自分には来年もある。いいところ、悪いところ、それぞれ見えたので、この経験を生かしていく」

試合後、そう語った、トライスコアラーWTB山村など、来年もU20代表資格を持つメンバーの経験も最大限生かす形でしっかりとした準備を進め、来年のU20トロフィー制覇→チャンピオンシップ復帰を果たしてもらいたい。

 

text by Kenji Demura

前に出るディフェンスで活路を見出そうとしたが、雨の影響で滑りやすくなったグラウンドにも影響されて徹底できなかった

前に出るディフェンスで活路を見出そうとしたが、雨の影響で滑りやすくなったグラウンドにも影響されて徹底できなかった
photo by Kenji Demura

試合終了5分前にNO8タタフが1トライを返したが時すでに遅し。最終スコアは17-41と24点差をつけられた
試合終了5分前にNO8タタフが1トライを返したが時すでに遅し。最終スコアは17-41と24点差をつけられた
photo by Kenji Demura
来年はU20トロフィーでの戦いに。トライを決めたWTB山村など来年もU20代表資格を持つ選手がいかに経験を生かすかも重要に

来年はU20トロフィーでの戦いに。トライを決めたWTB山村など来年もU20代表資格を持つ選手がいかに経験を生かすかも重要に
photo by Kenji Demura