マッチリポート 第49回 全国大学選手権大会

早稲田大学 61-8 大阪体育大学
【セカンドステージ 2012年12月23日(日) /大阪・近鉄花園ラグビー場】
12月8日から始まった大学選手権セカンドステージもこの日が最終日、プールマッチ制Bプールは前週までに勝点13をあげて自力でのファイナルステージ進出を目指す早稲田大学と、この試合を最後に36年間の指導者生活を終える名将坂田好弘監督に率いられた大阪体育大学の対決が、真冬の近鉄花園ラグビー場で行われた。

試合は開始早々から早稲田大学ペース、前半2分に10メートルライン付近左ラインアウトのクイックスローから早稲田大学FB15番 原田季郎が40メートルを走りぬき左中間にトライをあげた。大阪体育大学も9分にSO10番 三瀬憲二朗がゴール前30メートル中央からのPGを決めて7-3とするが、その後は一方的な早稲田大学ペース、13分から約5分おきに5連続トライをあげ、前半を40-3と大差で終えた。特に13分、21分、27分に天理大学ディフェンス網を突き破って立て続けにトライを重ねた早稲田大学右WTB14番 中づる隆彰のスピードと力強さが印象的であった。一方、大阪体育大学も自慢のフォワードプレーで執拗に密集サイドを突くが、これも早稲田大学の厳しいディフェンスに阻まれ、ターンオーバーを繰り返した。

後半に入っても早稲田大学のペースは一向に衰えず、1分、3分、21分にハーフ団がトライを続け、61-3と早々に試合を決定づけた。大阪体育大学も密集サイドのフォワードプレイにこだわり、後半27分にようやくゴール直前のラックから左LO4番 山口浩平が左隅に押さえ、一矢を報いた。

ノーサイド後は両校選手による大阪体育大学坂田好弘監督勇退のセレモニーと記念撮影が行われ、スタンドに駆け付けた3,000人を超すファンと共にレジェンド坂田監督の雄姿にいつまでも別れを告げていた。

会見リポート
 

大阪体育大学の坂田監督(右)と蔵守キャプテン

大阪体育大学

○坂田好弘監督

「前半は一発で決めることができる才能あるプレーヤーに走られました。後半はFWでペースを取り戻し頑張ってくれました。トライをひとつ取れて大変嬉しいです。最後まであきらめずに戦ってくれました。悔いはありません。素晴らしいゲームでした」

○蔵守吉彦キャプテン

「チームのため、監督のため全てを出し切りました。悔いのないゲームでした」

──36シーズンで一番印象に残っているゲームは?

○坂田監督
「36シーズンで300ゲームくらいになりいくつかありますが、9年目での最初の同志社戦の勝利、2001年(第38大会)の選手権で早稲田相手に38点差を4点差までに追いついたゲーム、2回目の国立(平成元年、第26回)で早稲田相手に7点差で負けたがヘラクレス軍団としてFWにこだわって戦ったゲームなどがあげられます」

──指導者としての指導方針とか選手に求めていたものは?

○坂田監督
「指導しはじめた頃は体も動くので、選手には「やれ!やれ!」といった指導でしたが、選手がいなければ指導者も存在しないわけで、ラグビーは技術も大切だが心が左右するスポーツだと思います。魂です。
今日も選手たちに魂が見られました。技術+魂で強いチームができると思います。魂では今日も決して負けてはいませんでした」

──ご自身にとって最後の花園は?

○坂田監督
「自分にとっては近鉄にお世話になり、育ててもらったグラウンドです。そして早稲田と戦えて‥‥個人的に現役最後の相手が早稲田、指導者として最後も早稲田、不思議な因縁を感じます。誰かに与えられた物かもしれません。幸せです」

 

早稲田大学の後藤監督(右)と森田ゲームキャプテン

早稲田大学

○後藤禎和監督

「今日のゲーム、大体大さんはFWに自信を持って戦ってくると思っていました。ここの勝負で受けに回ってはいけないし、坂田先生のラストゲームということで気迫では負けないようにのぞみました。いずれにせよ我々は勝たなければならないのです。
前半は順調に点差が開いたので後半に入って怪我からの復帰の調子を試すためにメンバーを変えたが想定外の怪我人が出てラスト20分はバタバタしてしまいました。しかし最後までしつこく行けて正月に自信がつきました」

○森田慶良ゲームキャプテン

「今日の目標は80分間攻め続ける事でした、特に後半のラスト20分を意識していたが大体大さんの気迫を感じました。タックルを外されたり、パワーで前へ出られたりでトライを取られました。これは反省点です。絶対に点を取られないチームをめざします」

──ご自分が現役の時に坂田監督の大体大と対戦されていますがその思いは?

○後藤監督
「4年生の時に準決勝で戦ったのが一番印象深いゲームです。今日もあの時とよく似た大きなFWにこだわったチームでした。自分自身が対戦したチームと今度は監督として戦うことにめぐりあわせを感じました。ですから手を抜かずに徹底的にたたきのめす気持ちでいました、最後に取られてしまいましたが‥‥いいゲームでした」

──次の試合への手ごたえは?

○後藤監督
「天理大、流経大、大体大と早い時期にいい形で先手を取れたゲームを3試合して手ごたえを感じています。ちょっと怪我人が心配だが試合を重ねていけば仕方ない事なのでじっくり調整しチームレベルを上げて行きます」

(記事:石川悟、蜷川善夫、北畑幸二 写真:柳本啓志 広報担当:村島博)