日本代表は現地時間21日(日本時間22日未明)、フランス南西部のビアリッツで「JAPAN XV」としてフランス1部リーグでプレーする強力メンバーを集めたバスク選抜と対戦、3-19で敗れた。日本代表は25日にフランス北西部のルアーブルで再び「JAPAN XV」としてフレンチ・バーバリアンズとヨーロッパ遠征最終戦を戦う。

(text by Kenji Demura)

 先発メンバー15人中13人を今遠征で初先発する選手が占めたバスク選抜戦。欧州でのテストマッチで初の連勝を果たしたグルジア代表戦(トビリシ)から中3日という日程に加え、トルコ・イスタンブール、スペイン・ビルバオ経由で計24時間を要する厳しい移動もあり、肉体的にフレッシュな状態の選手がピックアップされた。

 フロントロー3人のうちPR浅原拓真とHO太田春樹の2人がノンキャップなど若手中心のJAPAN XVのFWには、厳しい戦いが立ち上がりから続いた。ファーストスクラムでいきなり反則を取られる。エディー・ジョーンズヘッドコーチが「世界最強」と評価するフランスのスクラムの真髄を見せつけるように、バスク選抜はスクラムでプレッシャーをかけてきた。

 バスク選抜はFW戦での優位を生かして日本陣に攻め込むが、日本も粘りの防御でトライを許さない。5分、逆に相手の反則から相手陣に入り、FB田邉淳が確実にPGを決めて3-0と先制した。「最初の20分間、集中していきたい」。試合前に、この試合のバイスキャプテンを務めるCTB有賀剛が語っていたとおり、スクラムで圧倒されながらもJAPAN XVはひたむきなプレーを続け、前半の前半を無失点で切り抜けた。スクラムで犯したものも含めて反則は多かったものの、ゲームキャプテンのFLマイケル・リーチは「みんなが気持ちで前に行っていた表れ」と受け止めていた。

 この日は未明から激しい雨に見舞われたビアリッツ。昼前に天気は回復し、午後には青空も見られたが、19時の試合開始前に再び雨模様となり、キックオフからちょうど20分を経過したあたりで本降りとなった。「天気さえ、いい勉強になる」と廣瀬俊朗キャプテンが話していた通り、アウェーのグラウンド条件や天候などの厳しい条件を経験してタフになることも遠征の目的のひとつ。強力スクラムに加えて、雨と重いグラウンドというフランスの洗礼を受けることになる。

 雨が降り出す前の開始5分にはPGを確実に決めた田邉が、雨の中、正面から狙ったPGはポストに阻まれてしまう。「あれで波に乗れなくて。責任を感じている」と落ち込んだ表情で話した田邉。一方、バスク選抜は慣れ親しんだ悪天候を生かし、自分たちの本質をむき出しにしてゲームの主導権を握りはじめた。
 雨が降り出して以降、バスク選抜はパスを封印。ほぼFW周辺のプレーとキック&チェイスだけで試合を組み立て始める。30分、ゴール前スクラムでプレッシャーをかけた後、SHディミトリ・ヤシュビリのキックパスを大外でWTBサム・ガーバーが余裕をもってキャッチして逆転。前半終了間際にも、スクラムで日本ゴールに迫るが、ここは日本が辛くもこらえて、3-5でハーフタイムを迎えた。

 「セットピースを避けること。そして、ディフェンスでのディシプリンを維持していくこと」。ジョーンズヘッドコーチのハーフタイムの指示からも、スクラムを中心としたFWプレーでバスク選抜に主導権を握られていたことは明らかだった。後半に入ると、途中出場のHO堀江翔太が「試合の中で良くなってはいた」と振り返るように、スクラムで少しずつ粘れるようになったものの流れ自体は変わらない。11分に相手FWにラックサイドを突破されてゴール前に迫られた後、再びキックパスがガーバーに渡って3-12。このトライで余裕を持ち始めたバスク選抜はパスを回すようになり、25分にカウンターアタックからボールをつなぎ、最後はハットトリックとなるガーバーのトライで点差を16点に広げた。

 日本も最後の5分間は自分たちのリズムでアタックを継続し、目の肥えたバスク地方のファンからの拍手喝采を浴びたが、バスク選抜ゴールを陥れることは出来ずじまい。「JAPAN XV」としてではあったが、ジョーンズヘッドコーチ体制の日本代表では初となるノートライの敗戦となった。

 5カ月前に来日したフレンチ・バーバリアンズとの第1戦。IRBパシフィック・ネーションズカップ直後という日程の厳しさもあって、今回同様に若手中心で臨んだJAPAN XVは戦う姿勢を見せられず、ジョーンズヘッドコーチが試合後に怒りをぶちまけるシーンもあった。今回のバスク選抜戦では若いメンバーは同じ轍を踏まなかった。試合後、ジョーンズヘッドコーチは「気持ちを前面に出して80分間戦ってくれたことを誇りに思う」と選手たちを讃えた。

 選手たちが精神的に成長したのは間違いない。一方、2015年の世界トップ10入りを目指す日本のトップレベルの若手が、フランス1部リーグでプレーする普通の選手たちに力負けしたことも事実だ。「フランスのトップ14と日本のトップリーグの差が出た。今日のような厳しいコンディションでは、セットピースでボールをしっかり獲得できるだけのフィジカル面での強さが必要だが、日本の選手にはまだその強さがない。日本の全てのチームが協力して、もっと選手を強くしないといけない」と、ジョーンズヘッドコーチは日本ラグビー界全体での取り組みの必要性に言及した。

 「みんな最初から最後までファイトしてくれた」とリーチ。それだけに、精神的には強くなった選手たちがフィジカル面でさらに強くなる必要性を感じさせる一戦となった。