ヨーロッパ遠征中の日本代表は17日、グルジアの首都トビリシでグルジア代表と対戦、ラスト1プレーでSO小野晃征が決めた決勝DGで25-22と逆転勝利をおさめ、前週のルーマニア代表戦に続いて欧州の強豪に連勝した。

(text by Kenji Demura)

 日本代表の遠征出発時点のIRB世界ランキングでは、グルジアは日本の16位を上回る15位。6カ国対抗勢(フランス、ウェールズ、イングランド、アイルランド、スコットランド、イタリア)以外では欧州で最高位となるグルジアとアウェーで戦う一戦は、2015年の世界トップ10入りを目標とする日本代表にとって、是が非でもものにしたい試合だった。さらに、グルジア代表のFWには、エディー・ジョーンズヘッドコーチが「世界最高のスクラム」と認めるフランスでプレーしている選手が揃っている。セットプレーの強化が今遠征の大きな目的だけに、格好の腕試しの相手でもあった。

photo by RJP
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 立ち上がりの日本は、全く自陣から抜け出せない苦しい時間帯が続いた。強くて重いグルジアFWにスクラムで圧力をかけられ、ルーマニア代表戦で100%の獲得率を誇った自ボールラインアウトもいきなりターンオーバーされる。キックミスもあった。自陣に釘づけになった日本は、スクラムでの反則などからグルジアSOメラブ・カビリカシビリに3PGを決められ、前半13分までに9点のビハインドを背負う厳しい展開。WTB廣瀬俊朗主将は「試合の入りのところは勉強しないといけない」と振り返った。

 課題のスクラムは、ルーマニア代表戦の時のように一気に押し切られる場面はなかったものの、反則を取られるシーンが目についた。「自分たちがやりたいことはできたが、その反面、反則も取られて、難しいなというのはあった」とPR長江有祐。それでも、19分には相手ボールのラインアウトを奪って相手陣に入り、PGのチャンスを得る。アウェーの洗礼とも言える激しいブーイングの中で狙った最初の得点機は、FB五郎丸歩副将が正面からのPGを外してしまうが、その後は25分、35分と連続PGを決め、点差は3に縮まった。

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 「昨年のワールドカップの時と比較して、日本が成長したのは、『我慢』ができるようになったところ」。試合前日の記者会見でそんな見解を示したのは、敵将であるグルジア代表ミルトン・ヘイグヘッドコーチだ。確かに、自陣に釘づけになった苦しい時間帯に我慢強く守ってトライを許さなかったことで、試合は次第に日本ペースとなっていった。前半42分。1週間前のルーマニア代表戦と同様に、完璧とも言える連続攻撃から試合の流れを大きく変えるトライを奪い、主導権を握ってハーフタイム入りすることができた。

 「相手の足が止まり始めていて、ミスマッチやオーバーラップができている感覚は外からあった。PKへのリアクションも遅かった」とWTB小野澤宏時。流れの悪い時間帯に、「我慢して、とにかく3次攻撃まで継続し続けよう。そうすれば絶対チャンスがあるから」と外側から指示を出し続けてチームを落ち着かせていたベテランWTBは、自陣深くでPKを得ると、迷いなく自らアタックに打って出た。廣瀬、五郎丸、FLヘンドリック・ツイ、FLマイケル・リーチ、小野、CTB仙波智裕らがボールを前に運び、最後はナンバー8菊谷崇から再び小野澤へ。「あそこでトライを取れなかったら、クビなんで」と和やかな表情で振り返った稀有なフィニッシャーは、グルジアDFを外に振り切って左隅に飛び込み、約95mに渡ってボールをつなぎ続けたアタックを完遂した。日本代表は全く相手陣にすら入れなかった序盤の時間帯には想像できなかった13-9というリードを得て、試合の折り返しを迎えた。

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 後半、「前半はラインが深くなってしまっていた」(小野)というアタックでの修正点を確認して臨んだが、先にペースをつかんだのは再びグルジア代表だった。3分、10分とPGを許して逆転された後、12分にはモールサイドをカビリカシビリに突破されてトライを奪われてしまう。

 これで13-22となり、再び9点差をつけられたが、日本代表の我慢は切れることがなかった。16分、26分、32分と五郎丸がPGを重ね、最終盤に同点に追いついた。残り30秒で自陣深くに攻め込まれた時には勝利の可能性が潰えたかにみえたが、ピッチで戦う選手たちは前半最後のトライを彷彿させるかのようにアタックを続けた。最後は「前が空いているのが見えたので、きれいに蹴れた。時間が止まったようだった」という小野のDGで劇的なアウェー勝利をものにした。

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 「あんなアタックを80分過ぎてからできるチームは、世界中どこにもいない」。ジョーンズヘッドコーチはジャパンウェイを貫き通した選手たちの勇気を賞賛した。この試合が日本代表としてのテストマッチ出場63試合目で、FWでは最多の歴代単独3位となったFW大野均は、チーム全員の気持ちを代弁した。「アウェーで勝つチャンスは今しかない、絶対に勝ちたいという気持ちになって、前に出て行った。本当に嬉しかった」。廣瀬主将も「一つミスしてもすぐに取られないし、粘り強くなった。絶対勝つという意識が根づき始めた」。「少しずつ」、「一歩一歩」という点を強調しながら、チームの成長に手応えを感じている。

 遠征の最大の目標だった欧州でのテストマッチ連勝を果たした日本代表はフランスに移動し、JAPAN XVとしてバスク選抜(21日、ビアリッツ)とフレンチバーバリアンズ(25日、ルアーブル)と対戦する。

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