6点差の敗戦も厳しい試合の中での成長を実感前日練習の時点で、チームにはこれまでと違う緊張感が漂っていた。「今日は多くの選手がナーバスになっていた」。試合前日の記者会見で、エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)は選手たちの精神状態を看破していた。リーダーたちの顔もHSBCアジア5カ国対抗2012(A5N)の時よりもこわばっているように見えた。WTB廣瀬俊朗主将も自ら「緊張感がある」と率直に語り、その横でFL佐々木隆道副将が「ザワさん(=WTB小野澤宏時)とお茶しながら、『緊張しているんですど、大丈夫ですかね』と訊いたら、『大丈夫、おれも緊張してるから』って」というエピソードを明かした。 ![]() photo by RJP 4月2日の集合から正味約6週間をひとつのチームとして過ごし、A5Nの4試合を戦ってきた日本代表。しかし、本当の世界との戦いという意味で、ジョーンズHCが「ファーストシリーズのファーストマッチ」と表現したPNC初戦のフィジー戦だった。対戦前の世界ランキングこそ日本が上位だったが(日本14位、フィジー16位)、過去のPNCでの対戦成績は1勝5敗。昨年の勝利も相手にレッドカード2枚、イエローカード3枚が乱れ飛ぶ状況で得られたものだった。 そんな難敵に対峙することになった先発15人のうち、廣瀬主将をはじめとするPNC初体験組が6人。佐々木とFB五郎丸歩の両副将、指令塔のSO小野晃征もフィジーとの対戦は初めてで、未知なる相手との試合に向けてチーム全体が緊張感を漂わせていたのは、ある意味当たり前だったかもしれない。 実際にこれまでの試合とは違う精神状態が影響したのか、立ち上がり、ジョーンズHCが率いてからの日本代表では考えられないようなネガティブなプレーも飛び出した。自陣22m内で余裕を持ってボールを受け取った佐々木がキックでエリアをとる選択をしてしまったのだ。「我々はワールドラグビーで日本がいかに勝っていくか探しているところ。その鍵はアタックし続けることだと信じている。キックというアイディアはない」。ジョーンズHCが就任以来植え付けてきたはずの攻め続ける姿勢とは全く異なるプレー選択だった。「どこか冷静じゃなくて、自分に余裕がなかったのかもしれない。2度としません」。佐々木は試合後、反省しきりだったが、一方で外からのコールもなかったようで、余裕がなかったのは佐々木だけではなかったのも確かだろう。 「(当たりの強さに関しては)予想どおりではあったけど、やっぱりビックリした」とFL望月雄太。恵まれた運動能力を誇る南太平洋の大男たちとの対峙に戸惑いながらも、自分たちのテンポでアタックを続けてトライチャンスを作り出す場面もあったジャパン。しかし、ここという場面のミスが響いて、最終的に奪えたトライは後半22分のモールでの認定トライのみだった。 ![]() photo by RJP 逆に、フィジーのCTBアイサケ・カトニンバウ副将が「日本はミスが多く、そこを自分たちがものにした」と試合後に振り返った通り、日本は攻め込んだところでのターンオーバーからカウンターアタックを許して3トライを奪われた。 3%ずつの成長を続けながら2015年に目標達成 「自分たちがいまどこにいるのか、見極められる最初の試合になる」。ジョーンズHCはフィジー戦に向けて、「勝ちに 目先の勝利よりも大事なものがあったのは事実だろう。実際、特別なフィジー対策が施された様子もなかった。「フィジーに関しての情報は去年のW杯のビデオを見たくらい」(廣瀬主将)で、A5Nでの相手より数段アタック能力が優れるフィジー戦を前に、DFの練習時間が長くなることもなかった。 それでも、試合でフィジーのカウンターアタックを経験する中で、「相手にプレーさせないように瞬時に面になってプレッシャーをかけていく感じが徐々に合ってきた」(小野澤)という。前半は相手のフィジカルな強さに戸惑って人数をかけ過ぎたりスムーズでなかったりしたブレイクダウンも、後半は自分たちの意図どおりにボール出しができる場面が間違いなく増えていた。 ![]() photo by RJP 状況判断のミスやハンドリングエラーでトライラインに届かなかったものの、フィジーゴールに迫ったシーンも1度や2度ではなかった。「今日は自分たちの方に運があったが、実力的には互角でどちらが勝ってもおかしくなかった。チャンスをものにできたかできなかったのかの差だった」というフィジーのカトニンバウ副将のコメントも社交辞令ばかりではないだろう。 「A5Nとレベルの差があるので、毎年PNCの初戦は難しい。一発のプレーで持っていかれるのも体験できたし、結果は伴わなかったけど、エディージャパンとしてPNCでのいいスタートになった」(後半24分から途中出場して代表復帰を果たしたNO8菊谷崇)。 ジョーンズHCが試合前日の会見で語っていた「80分間の中でフィジーに対する勝ち方を見つけたい」という点に関しても、選手たちが大きな手応えをつかんだのは間違いないだろう。ナーバスな精神状態で試合に入った初フィジー戦組にとっても、「前半レイトタックルされたり、プレッシャーを受けたりしても、とにかくゲインラインに近い、浅いポジションでプレーし続けて、後半はいいアタックができるようになった」(小野)と自信をつけた一戦となった。 試合後の記者会見でジョーンズHCは「圧倒的に素晴らしいレッスンになった」と語る一方、「我慢強く見守ってほしい」と訴えた。最終目標は2015年にトップ10入りすること。「試合の後、『3%ずつ良くなっていこう』と選手に言った。その3%アップのためには、シンプルなことをきちんとやり切る必要がある。次のトンガ戦で3%改善して、サモア戦でも3%改善していければ、2015年には目標を達成できているはずだ」 PNCの残り2戦は「正しいことをやっている」と胸を張るジョーンズHC率いる新生ジャパンの3%の成長を確認するための貴重な機会となる。 試合後の記者会見での一問一答![]() photo by RJP ──今日の試合に関する総評を。 エディー・ジョーンズヘッドコーチ(以下、EJ) 廣瀬俊朗主将 ──ボディポジションを低く維持できていたのはLO大野くらいだったが。問題点はどこになるのか。 EJ ──前半のトライは1対1の局面でのタックルの弱さが出たように思うが。 EJ ![]() photo by RJP ──代表復帰を果たしたNO8菊谷前主将のパフォーマンスは。 ──フィジカルに強い相手にブレイクダウンでスムーズな球出しができず、人数をかけてしまっていたのでは。 EJ ![]() photo by RJP |
2025年男子日本代表 国内開催試合 キックオフ時間のお知らせ
2025.4.25 (金)
15人制男子日本代表WBB日本代表戦