コーチング留学レポート 4

第4回目のレポートでは、英語の授業での様子と生徒達の試合での活躍を主に紹介させていただきます。
さて、留学生がセントビーズ高校に来て、すでに5月中旬になりましたが、このESOLプログラムで来ている留学生達にとって、英語は越えなければならない"壁"でもあり、自分の"道具"でもあります。この壁を乗り越えるため、自分の道具を取得するため、留学生は日々英語の勉強と向き合っております。
当初、ESOLプログラムが始まったばかりの時期と比べると、1人1人個人差はありますが、自分なりの表現の仕方でチームメイトとのコミュニケーションはとれてきています。

このESOLプログラムでの英語の授業は、現地の学生が受ける授業とは違い、留学生達の為にだけ、特別に組まれています。彼らはラグビーで使われる英語を中心に、彼らがきちんとフィールド上、フィールド以外でも自分の意見を英語で表現できるよう、毎日先生達の指導を受けております。ニュージーランド人のロバート・タッペンデン先生に毎日、彼らがラグビーと英語の勉強を両立できるように、ご指導をいただいております。英語の授業では、英会話、英文法、聞き取り、読解、フレーズの使い分け、フィールド上でのコミュニケーションなど、英語に含まれる色々な要素を細かく勉強します。生徒達を退屈させないよう、先生たちが日々試行錯誤しながら、生徒達は1つ1つ"壁"を乗り越えようとしているのが分かります。

特にラグビービデオ分析の授業ではスーパーラグビー(プロリーグ)のリプレイ映像を観ながら、トップ選手の動きを細かく分析していきます。プロジェクターを使い、大きなスクリーンで生徒達はリプレイ映像を観ながら、1つ1つの細かい動きを英語で説明しながら、その時に使われたキーワードを勉強します。ラグビーで使われる全ての英語のフレーズに注目し、そのフレーズが実際に試合でも使えるよう、細かく指導していただいております。つまり、選手の動き、コメンテーターの英語の説明を聞くことによって、ラグビーを観ながら、英語の聞き取り能力の向上ができるということです。

 

さて、生徒達の試合での活躍の様子を少しご紹介させていただきます。5月19日にはクライストチャーチで行われたプレスカップ(クライストチャーチの高校生大会)にESOLプログラムの留学生から2人、桑江健一郎君とシオネ・ラベマイ君がセントビーズ高校の1軍選手として、クライストチャーチ男子校と戦いました。セントビーズ高校とクライストチャーチ男子高校はライバル高校。毎年伝統の1戦を観るために、大勢の観客が集まります。皆様もご存じかもしれませんが、日本でいう、東福岡高校と筑紫高校との試合の様に、毎年白熱した試合が行われます。会場はこの伝統の1戦を観に来る人で埋め尽くされ、それぞれ両校サポーター達は、熱気の溢れる応援で会場を盛り上げます。残念ながら、クライストチャーチ男子高校に、ここ2年間勝ち続けてきたセントビーズ高校は13対7で敗戦していましたが、ESOLの留学生にとっては、とても貴重な体験ができました。敗戦から学ぶ事は色々あったので、ここから何か学んで次へとどんどん成長して欲しいです。

ESOLプログラムの他の選手は、それぞれ自分にあった各レベルのチームに分かれ、毎週の試合で自分の能力を発揮しています。東福岡高校から来ている留学生2人は2軍、石見智翠館高校からの4人は3軍、明大中野高校からの1人は16歳以下のAチーム、札幌山の手の3人と石見智翠館高校からの1人は16歳以下のBチームに分かれ、それぞれ毎週ある試合で100パーセントの能力が出せるように、日々練習に励んでおります。ニュージーランドではいろいろなディヴィジョン(区分け)が存在することによって、各選手に試合に出るチャンスが与えられます。そしてそのチャンスを掴んだ選手達は試合の回数を重ねるごとに試合の流れというものを実感するようになり、判断力が自然と身についてきます。
ニュージーランドでの試合経験は日本の高校生にとって、とてもいい成長要素だと思います。これからも、試合での経験を活かして、将来立派に活躍してもらいたいですね。

さて今回もESOLプログラムで来ている留学生たちを毎回3人ずつ皆様にご紹介したいと思います。各人からのコメント (1)出身校、学年、ポジション (2)ESOLについての感想 (3)将来の夢を付記します。

岩谷 伯都 写真左
1)石見智翠館高校 ウイング 2年生
2)自分のためになることが多くて、毎日が充実しています。
3)トップリーグでプレーすること!

内山 理夫 写真中央
1)明治大学付属中野高校 フッカー 1年生
2)とてもセッションが充実していて、とても身になってたのしいです。
3)トップリーグ パナソニック

小牧 大智 写真右
1)石見智翠館高校 スタンドオフ・センター 2年生
2)みんな仲良くやっていて、ラグビー面でもお互いに高めあっているから良いと思う。
3)理学療法士

左から岩谷選手・内山選手・小牧選手

コーチング留学レポート 3

ニュージーランドは夏から冬の時期に入り、路上の落ち葉が冬の到来を知らせてくれるかのようです。
さて、今回3回目のレポートではこの前、行われた栄養講習会の様子を皆様にご紹介したいと思います。

先週の金曜日は栄養士さんに来て頂き、学生たちにスポーツマンとしての効果的な食事のとり方、食事のメカニズム、栄養素の講義など、いかに栄養学がラガーマンの体に大切な要素なのかを知らされるとても貴重な時間でした。生徒達の栄養学に対する知識を高めるため、専門の栄養士さんが2回に渡って講義をしてくださいました。生徒達は2週間に渡って食事の記録表をわたされ1日に必要な栄養分を自分で確認できるようになっています。
たんぱく質、脂質、炭水化物、水分などがいかにスポーツマンのエネルギーの源になっているかを知らされました。私自身も通訳として毎回の講義に主席し、効果的な食事方法を学ぶことができた貴重な時間でした。

 

第1回目の講義の内容は簡単な質問から進められ、身近に食べているものがどれだけの栄養を含んでいるかを詳しく説明していただきました。普段、何気なく食べているものに栄養がどれだけ含まれていて、それがどのくらいのエネルギーに変わるかを詳しく説明することによって、物を食べる際に、どの食品を選んだほうが体づくりにもっとも効果的かを意識させることができます。こういった、食品選択時に明白な情報があればあるほど、自分に必要な栄養素がなにかはっきりしてくるということです。この講義によって、何気なく食べるのではなく、学生たちは皆、何を食べるか、何を選んで食べるかを意識するようになってきました。

第2回目の講義では、体の新陳代謝に関するメカニズムと栄養分の取り方、タイミングについて説明していただきました。この講義で一番重要視されたのは、トレーニング前の栄養摂取よりもトレーニング後の栄養摂取が、体を回復させるもっとも適した時間帯だということでした。トレーニングで痛んだ体を適切な分量の栄養で回復させるということがいかに大切かがわかりました。

2週間に渡って記録した食事表をみながら、トレーニング後に十分栄養分が摂取できているか、栄養士の先生が1人1人にアドバイスを与える形で指導していただきました。みんなそれぞれ、記録表に書いた食料品、摂取時間、摂取量を見ながら、いかにトレーニング後の栄養摂取が体を回復させるのに、適切な時間帯だということが大切なんだと気づかされました。毎日、セッションで体を動かす生徒達にとって、理想の“体づくり”に繋がる栄養学は、生徒のラグビーに対する意識をさらに高めるものでした。練習で傷ついた体を管理できるのは自分であり、それをきちんとコントロールして、万全な状態で次の試合や練習に臨むのも、ラガーマンにとってとても大切な課題だとわかりました。そして、それが生徒自身の課題でもあると共に、体のコンディションを自分でコントロールできるのも、自分たちの“自律”に繋がるものだと思いました。

今回もまた、生徒達にとっていい経験ができました。あまり高校生には重要視されない栄養の大切さを理解したことによって、細かい体の“気づかい”に生徒達は気づかされたと思います。

今回もまた、3人ずつESOLプログラムで来ている留学生をご紹介したいと思います。各人からのコメント (1)出身校、学年、ポジション (2)ESOLについての感想 (3)将来の夢 を付記します。

徳田 隆之介 写真左

1)東福岡高校 センター、スタンドオフ 2年生

2)自分の好きな外国へ来れて、なおさら好きなラグビーもできる“今”の時間が幸せです!!
3)未定。海外との関わりのある仕事につきたい。

松本 巧也 写真中央

1)札幌山の手高校 スクラムハーフ 2年生

2)各練習のセッションがあって、毎週試合があり試合経験が豊富です。とてもいい環境でラグビーができて幸せです。
3)消防士か自衛隊

森 篤嗣 写真右

1)石見智翠館高校 フルバック、ウィング 2年生

2)みんなすごく仲良く、毎日が充実していてすごく楽しいです。

3)まだ、はっきりとは決まってはいませんが、今のところ消防士

左から徳田選手・松本選手・森選手

コーチング留学レポート 2

さて、今回も前回に引き続きこちらのESOLラグビープログラムの様子を皆様にお届けしたいと思います。
ESOLプログラムが始まってから、約4週間が経ちました。生徒達はニュージーランドの生活に慣れ、3月から始まった学校生活にも慣れてきています。毎日英語の授業、ウエイトトレーニング、ラグビーの練習をこなしながら、日々切磋琢磨、成長しています。この2回目のレポートでは3月から始まった学校生活の様子を少し紹介させていただきます。

 

毎週、週4回はウエイトトレーニングがあります。ラグビー選手にとっては“体づくり”は欠かせない要素です。ここでは、現地の学生トレーナーが、この週4回のウエイトトレーニングのお手伝いに来てくれています。現地でスポーツ科学を勉強されているリッチーさんとブリンさんのお二人に来ていただき、彼らが毎週手分けして、生徒達に正しい筋トレ方法やトレーニングメカニズムなどを指導していただいています。私自身もトレーニングに参加し、筋トレ補助などを行い、生徒の体づくりをお手伝いさせていただきながら、科学的な視点からウエイトトレーニングのメカニズムを勉強させていただいております。

こちらのウエイトトレーニングはラグビーに必要な様々な筋肉に注目し、トレーニングによって試合での自分のパフォーマンスが向上するように、正しい筋トレの姿勢から正しい回数までを徹底して行っています。特に体幹強化や筋肉の持久力、瞬発力などを中心に毎回違ったトレーニングで生徒たちがラグビーで必要とされる筋肉を集中して鍛えます。ラグビーはコンタクトスポーツですから体幹強化を中心にトレーニングが行われ、いかに体の強さ体の姿勢が必要かが大変重要だということを思いしらされます。
毎回リッチーさんとブリンさんが、1種目のウエイトトレーニングに対して、どの筋肉が使われて、そしてその筋肉が試合でどう使われるかを細かく噛み砕いて説明してくれます。それによって、生徒達はウエイトトレーニングをただの反復運動といった偏見にとわられず、結果のでる効果的な筋トレと捉えるようになり、彼らの向上心維持に大変貢献しています。無駄のないトレーニングによって、生徒達のウエイトトレーニングに対する向上心が変わり、中にはウエイトトレーニングの授業以外に、自由時間を使って自主トレーニングを行う生徒もいます。こちらのウエイトトレーニングの指導はいかに生徒のモチベーション(やる気)を高めるかに重点をおきます。生徒を退屈させないようにリッチーさんブリンさんを含め周りの人たちが試行錯誤して筋トレに取り組んでいただいています。

 
リッチーさん右、ブリンさん左 ブリンさん 右から2人目

野外での練習は分野ごとに別れたセッション(練習)を行っています。スピード&俊敏性強化練習、コンタクト&ディフェンス練習、ハンドリングスキル練習、ブレイクダウン時における判断力練習、キックゲームといった分野ごとに細かく分かれた練習を専属のコーチ陣が指導してくださっています。練習の質を高める為、セッションごとにコーチが1つ1つの動きに何が求められるかをキーポイント(要点)といった形で、セッション(練習)の必要性、重要性などを生徒達に毎回確認させながら練習を行っています。1つ1つの動きに意味があることをコーチ陣が生徒達に細かく説明し、生徒の理解度を高めながら練習を行うことは、日本の高校生にとってとても貴重な体験になっていると思います。練習量の多い中で闇雲にラグビーをしてきた日本の高校生にとっては、こういったセッション(練習)でラグビーを細かく分析していくことが生徒達にとても吸収しやすい環境になっていると思います。

また、カンターベリー州ラグビー協会からコーチに来て頂き、質の高いコーチングをしていただいております。ニュージーランドはラグビー王国と言われていますが、やはりそれを支えているのは質の高いコーチングではないでしょうか。こちらで質の高いコーチングと言われる理由の1つとしては、選手に自分で考えさせる機会を与えることです。

 

例えば、相手からのボールをキャッチする練習をするとします。その時に、両手は前に出します(ハンズアップ)します。その時に、選手たちは無意識的にボールを両手でハンズアップしますが、なぜそのハンズアップが必要か、どの位置でハンズアップが必要か、なぜ両手を胸の前にだしてハンズアップしないといけないかを練習する前に事前に選手に質問します。選手たちは普段無意識のうちにポールをキャッチしているものですから、なぜその“ハンズアップ”がそんなに重要かわかりません。ただし、コーチ陣はその“わからない”を事前に選手に疑問を持たせ、練習中にそれを説明し、教え込み、理解させ、練習後にその練習前と練習後に分かった“気づき”をもう一度再確認させます。そうすることによって、練習前に出た“わからない”に気づき、練習中に消化し、練習後にまたそれを復習するのです。その繰り返しによって、選手たちは普段無意識的にしている“動き”を1つの“スキル(技術)”として成立することに気づかされ、またそのスキルの理解度が深まるのです。
選手に何かを教えるとき、プロセス(過程)を重視してコーチングを進める、ただ、闇雲に目の前のことを覚えさせるのではなく、気づかせることによって、理解させ実感させることを重視しているところがやはり素晴らしいと思いました。1つ1つ小さい動きに対しても、細かい指導を行うのも、やはり長い間ニュージーランドをラグビー王国として支え続けている源ではないでしょうか。

さて、学校の授業以外の活動を少し紹介させていただきます。こちらでは、日本の4月の春休みと同じくイースター休暇という休みがあります。イースター休暇とは、別名復活祭と呼ばれ、十字架に架けられて死んだイエス・キリストが3日目に復活したことを記念する日だといわれています。キリスト教圏の国にはほとんどこの休暇があります。ニュージーランドもそのキリスト教圏の国に入るので、セントビーズ高校もちょうど1学期が終わったころに、生徒たちは2週間の休暇が与えられます。こちらでは復活祭の日に卵型のチョコレートを配ったり、家族が集まって壮大に食事会をするなど、盛大にお祝いをします。

今年はクライストチャーチ男子校でChristchurch Boys High School Rugby Festival というラグビー祭りがあり、ニュージーランド内、ニュージーランド以外の海外からの高校から多数が参戦し、イースター休暇を祝う大きなイベントを選手たちは楽しんでおりました。今年はアメリカのロサンジェルスからICEFというラグビーチームがこの大会に参戦し、ESOLプログラムから何名か助っ人という形で、リザーブ選手としてプレーしました。何人かの留学生はこれがニュージーランドでの初めての試合だったらしく、最初の大舞台に緊張と楽しみの入り混じった面持ちでした。海外のチームと混合試合をするのは生徒にとってはとてもよい刺激になったと思います。初めての経験を忘れずにこれからも頑張ってほしいです。

 

また、休暇中にはあの世界的に有名なオールブラックスのフォーワドコーチ、マイク・クロン氏のフロントローキャンプにESOLプログラムから留学生2人が参加し、世界レベルのセッション(練習)を体験できた貴重な時間でした。2日間に渡って、マイク・クロン氏の緻密なコーチングによって、生徒達はラグビーの楽しさをさらに実感した感じでした。これからももっと、色々な経験を得て頑張ってほしいものです。
残念ながら、2週間の休暇中、ESOLプログラムの留学生たちは休暇はなく、学校は休みですが、英語の授業なしのラグビーの練習が毎日ありました。ただ、休み中の練習はだいたい午前で終わったので、その後、街にでかけたり、ショッピングをするなど、留学生たちはニュージーランドでの初めての休暇を楽しんでおりました。

さて、最後になりましたが、今回のレポートからESOLプログラムで来ている留学生たちを毎回3人ずつ皆様にご紹介したいと思います。各人からのコメント (1)出身校、学年、ポジション (2)ESOLについての感想 (3)将来の夢 を付記します。

内藤悠介(ないとう ゆうすけ)選手 写真左
1、東福岡高校、2年生、スタンド、フルバック
2、ESOLプログラムはNZならではの、のびのびした環境の中で自分自身と真剣に向き合うことができ、そろぞれ異なったセッションを通じて、たくさんのコーチから様々なスキルを学ぶことができるとても良い機会です。このESOLプログラムは見て、学べて、実行することができる本当に良い機会になっています。今、自分は高校2年生ですが、この貴重な時期に良い経験ができることを嬉しく幸せに思いますし、自分をNZへ来させてくれた両親、チームメイト、コーチ、先生方に感謝し、このNZでたくましく成長し、日本へ帰ったら新しい風となり、チームに貢献したいと思います。

3、まだ、本当の将来の夢というのは決まってはいませんが、今自分が思っていることは花園の場に立ち、日本一の座に立つこと、そして大学に行き、大学でも日本一になることです。

中田悠斗 (なかた ゆうと)選手 写真中央
1、札幌山の手高校、2年生、プロップ
2、日本と違った環境でラグビーできるのはいい経験です。
3、大工

高橋健太郎 (たかはし けんたろう)選手 写真右
1、石見智翠館高校、2年生、ウイング
2、まだ
3、まだ

左から内藤選手・中田選手・高橋選手