コーチング留学レポート 2
さて、今回も前回に引き続きこちらのESOLラグビープログラムの様子を皆様にお届けしたいと思います。
ESOLプログラムが始まってから、約4週間が経ちました。生徒達はニュージーランドの生活に慣れ、3月から始まった学校生活にも慣れてきています。毎日英語の授業、ウエイトトレーニング、ラグビーの練習をこなしながら、日々切磋琢磨、成長しています。この2回目のレポートでは3月から始まった学校生活の様子を少し紹介させていただきます。
毎週、週4回はウエイトトレーニングがあります。ラグビー選手にとっては“体づくり”は欠かせない要素です。ここでは、現地の学生トレーナーが、この週4回のウエイトトレーニングのお手伝いに来てくれています。現地でスポーツ科学を勉強されているリッチーさんとブリンさんのお二人に来ていただき、彼らが毎週手分けして、生徒達に正しい筋トレ方法やトレーニングメカニズムなどを指導していただいています。私自身もトレーニングに参加し、筋トレ補助などを行い、生徒の体づくりをお手伝いさせていただきながら、科学的な視点からウエイトトレーニングのメカニズムを勉強させていただいております。
こちらのウエイトトレーニングはラグビーに必要な様々な筋肉に注目し、トレーニングによって試合での自分のパフォーマンスが向上するように、正しい筋トレの姿勢から正しい回数までを徹底して行っています。特に体幹強化や筋肉の持久力、瞬発力などを中心に毎回違ったトレーニングで生徒たちがラグビーで必要とされる筋肉を集中して鍛えます。ラグビーはコンタクトスポーツですから体幹強化を中心にトレーニングが行われ、いかに体の強さ体の姿勢が必要かが大変重要だということを思いしらされます。
毎回リッチーさんとブリンさんが、1種目のウエイトトレーニングに対して、どの筋肉が使われて、そしてその筋肉が試合でどう使われるかを細かく噛み砕いて説明してくれます。それによって、生徒達はウエイトトレーニングをただの反復運動といった偏見にとわられず、結果のでる効果的な筋トレと捉えるようになり、彼らの向上心維持に大変貢献しています。無駄のないトレーニングによって、生徒達のウエイトトレーニングに対する向上心が変わり、中にはウエイトトレーニングの授業以外に、自由時間を使って自主トレーニングを行う生徒もいます。こちらのウエイトトレーニングの指導はいかに生徒のモチベーション(やる気)を高めるかに重点をおきます。生徒を退屈させないようにリッチーさんブリンさんを含め周りの人たちが試行錯誤して筋トレに取り組んでいただいています。
|
|
|
リッチーさん右、ブリンさん左 |
|
ブリンさん 右から2人目 |
野外での練習は分野ごとに別れたセッション(練習)を行っています。スピード&俊敏性強化練習、コンタクト&ディフェンス練習、ハンドリングスキル練習、ブレイクダウン時における判断力練習、キックゲームといった分野ごとに細かく分かれた練習を専属のコーチ陣が指導してくださっています。練習の質を高める為、セッションごとにコーチが1つ1つの動きに何が求められるかをキーポイント(要点)といった形で、セッション(練習)の必要性、重要性などを生徒達に毎回確認させながら練習を行っています。1つ1つの動きに意味があることをコーチ陣が生徒達に細かく説明し、生徒の理解度を高めながら練習を行うことは、日本の高校生にとってとても貴重な体験になっていると思います。練習量の多い中で闇雲にラグビーをしてきた日本の高校生にとっては、こういったセッション(練習)でラグビーを細かく分析していくことが生徒達にとても吸収しやすい環境になっていると思います。
また、カンターベリー州ラグビー協会からコーチに来て頂き、質の高いコーチングをしていただいております。ニュージーランドはラグビー王国と言われていますが、やはりそれを支えているのは質の高いコーチングではないでしょうか。こちらで質の高いコーチングと言われる理由の1つとしては、選手に自分で考えさせる機会を与えることです。
例えば、相手からのボールをキャッチする練習をするとします。その時に、両手は前に出します(ハンズアップ)します。その時に、選手たちは無意識的にボールを両手でハンズアップしますが、なぜそのハンズアップが必要か、どの位置でハンズアップが必要か、なぜ両手を胸の前にだしてハンズアップしないといけないかを練習する前に事前に選手に質問します。選手たちは普段無意識のうちにポールをキャッチしているものですから、なぜその“ハンズアップ”がそんなに重要かわかりません。ただし、コーチ陣はその“わからない”を事前に選手に疑問を持たせ、練習中にそれを説明し、教え込み、理解させ、練習後にその練習前と練習後に分かった“気づき”をもう一度再確認させます。そうすることによって、練習前に出た“わからない”に気づき、練習中に消化し、練習後にまたそれを復習するのです。その繰り返しによって、選手たちは普段無意識的にしている“動き”を1つの“スキル(技術)”として成立することに気づかされ、またそのスキルの理解度が深まるのです。
選手に何かを教えるとき、プロセス(過程)を重視してコーチングを進める、ただ、闇雲に目の前のことを覚えさせるのではなく、気づかせることによって、理解させ実感させることを重視しているところがやはり素晴らしいと思いました。1つ1つ小さい動きに対しても、細かい指導を行うのも、やはり長い間ニュージーランドをラグビー王国として支え続けている源ではないでしょうか。
さて、学校の授業以外の活動を少し紹介させていただきます。こちらでは、日本の4月の春休みと同じくイースター休暇という休みがあります。イースター休暇とは、別名復活祭と呼ばれ、十字架に架けられて死んだイエス・キリストが3日目に復活したことを記念する日だといわれています。キリスト教圏の国にはほとんどこの休暇があります。ニュージーランドもそのキリスト教圏の国に入るので、セントビーズ高校もちょうど1学期が終わったころに、生徒たちは2週間の休暇が与えられます。こちらでは復活祭の日に卵型のチョコレートを配ったり、家族が集まって壮大に食事会をするなど、盛大にお祝いをします。
今年はクライストチャーチ男子校でChristchurch Boys High School Rugby Festival というラグビー祭りがあり、ニュージーランド内、ニュージーランド以外の海外からの高校から多数が参戦し、イースター休暇を祝う大きなイベントを選手たちは楽しんでおりました。今年はアメリカのロサンジェルスからICEFというラグビーチームがこの大会に参戦し、ESOLプログラムから何名か助っ人という形で、リザーブ選手としてプレーしました。何人かの留学生はこれがニュージーランドでの初めての試合だったらしく、最初の大舞台に緊張と楽しみの入り混じった面持ちでした。海外のチームと混合試合をするのは生徒にとってはとてもよい刺激になったと思います。初めての経験を忘れずにこれからも頑張ってほしいです。
また、休暇中にはあの世界的に有名なオールブラックスのフォーワドコーチ、マイク・クロン氏のフロントローキャンプにESOLプログラムから留学生2人が参加し、世界レベルのセッション(練習)を体験できた貴重な時間でした。2日間に渡って、マイク・クロン氏の緻密なコーチングによって、生徒達はラグビーの楽しさをさらに実感した感じでした。これからももっと、色々な経験を得て頑張ってほしいものです。
残念ながら、2週間の休暇中、ESOLプログラムの留学生たちは休暇はなく、学校は休みですが、英語の授業なしのラグビーの練習が毎日ありました。ただ、休み中の練習はだいたい午前で終わったので、その後、街にでかけたり、ショッピングをするなど、留学生たちはニュージーランドでの初めての休暇を楽しんでおりました。
さて、最後になりましたが、今回のレポートからESOLプログラムで来ている留学生たちを毎回3人ずつ皆様にご紹介したいと思います。各人からのコメント (1)出身校、学年、ポジション (2)ESOLについての感想 (3)将来の夢 を付記します。
内藤悠介(ないとう ゆうすけ)選手 写真左
1、東福岡高校、2年生、スタンド、フルバック
2、ESOLプログラムはNZならではの、のびのびした環境の中で自分自身と真剣に向き合うことができ、そろぞれ異なったセッションを通じて、たくさんのコーチから様々なスキルを学ぶことができるとても良い機会です。このESOLプログラムは見て、学べて、実行することができる本当に良い機会になっています。今、自分は高校2年生ですが、この貴重な時期に良い経験ができることを嬉しく幸せに思いますし、自分をNZへ来させてくれた両親、チームメイト、コーチ、先生方に感謝し、このNZでたくましく成長し、日本へ帰ったら新しい風となり、チームに貢献したいと思います。
3、まだ、本当の将来の夢というのは決まってはいませんが、今自分が思っていることは花園の場に立ち、日本一の座に立つこと、そして大学に行き、大学でも日本一になることです。
中田悠斗 (なかた ゆうと)選手 写真中央
1、札幌山の手高校、2年生、プロップ
2、日本と違った環境でラグビーできるのはいい経験です。
3、大工
高橋健太郎 (たかはし けんたろう)選手 写真右
1、石見智翠館高校、2年生、ウイング
2、まだ
3、まだ
|
左から内藤選手・中田選手・高橋選手 |