HSBCアジア五カ国対抗2012第3節、韓国戦が12日、ソウル郊外の城南運動場で行われる。前節に香港とのアウェー戦をものにした韓国に対して、日本は初戦のカザフスタン戦メンバーを中心とした「最も強いチーム」(エディー・ジョーンズヘッドコーチ)で敵地に乗り込む。
再び、「現在日本最強チーム」で韓国へ

87-0で大勝したカザフスタン戦メンバー(写真)をベースに最強布陣で韓国戦に臨むエディージャパン
photo by Kenji Demura (RJP)

 ジョーンズヘッドコーチ(HC)率いる日本代表の初陣だった第1節のカザフスタン戦(4月28日、アルマティ)のメンバーは、「日本で最も強いチーム」(ジョーンズHC)。一方、国内初お目見えとなった第2節のアラブ首長国連邦(UAE)戦(5月5日、福岡)は「歴代の日本代表の中でも最も若いチームのひとつ」(同HC)だった。

 異なるセレクションポリシーで臨んだ最初の2試合で共に大差の勝利を収めた後の第3節。首脳陣の間ではUAE戦に続いて若手を試すプランも検討されていたようだが、韓国が香港にアウェーで勝利を収めたことで、その方針は転換されることになった。
「当初、一番のターゲットとして考えていた香港戦(5月19日、東京・秩父宮)から一週間前倒しすることになった。現状のベストメンバーで戦い、ボーナスポイントを取ってしっかり勝つ」(薫田真広アシスタントコーチ)。それが、韓国戦での絶対的な目標となった。

 再び「最も強いチーム」での戦いとなる韓国戦。発表された先発15人の顔ぶれは、カザフスタン戦メンバーをベースに、UAE戦でいいパフォーマンスを見せた選手が加わる構成となった。

UAE戦ではNO8としてプレーした佐々木副将(写真)は仕事量の多さが生かせるオープンサイドFLへ戻る
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 タイトファイブは、カザフスタン戦と全く同じ顔ぶれ(長江-有田-畠山、大野-真壁)。
 UAE戦では1番で先発した畠山健介が"古巣"の3番に戻る。「バランスという意味では、このパックが一番いい」というのが、薫田アシスタントコーチ(AC)の評価だ。
 「(1番でも3番でも)あまり合わせていないので不安は不安」(畠山)というスクラム、そして「ジャンパーが大きい人ばかりなので、投げやすい」(HO有田隆平)というラインアウト。最初の2試合で課題として上がった「ブレイクダウンでの2人目、3人目の動き」「アタックシェイプの維持」とともに、セットプレーの安定が試合内容を大きく左右することは言うまでもないだろう。

 FW第3列(望月-佐々木-リーチ)は微妙に組み合わせが変わったが、こちらも「現状のベスト」であることには変わりはない。
 FL陣はUAE戦で6番を着けて先発し、「前によく出ていた」(ジョーンズHC)と高い評価を受けた望月雄太がブラインドサイドのポジションをキープ。一方、佐々木隆道副将は7番だったカザフスタン戦に比べてNo8に入ったUAE戦は「プレーの回数が10回少なかった」(薫田AC)という分析もあり、慣れ親しんだオープンサイドに戻る。「7番として、しっかりボールに絡んでいく」
 そして、ここまで日本代表や所属先の東芝ではFLでの起用が多かったマイケル・リーチがそのスピードを買われてNo8へ。「No8になって、いろんな仕事が増えるけど、まずはアタックで貢献したい」(リーチ)と話す。

フランスから戻ったSH日和佐がリザーブに

 BKはインサイドCTBが田村優から立川理道に替わった以外、カザフスタン戦先発メンバーのままとなった。
 SO小野晃征-CTB立川のコンビは、UAE戦でのプレーぶりが高く評価されて、再びダブル指令塔的にBKラインを引っ張っていくことになる。「立川が12番に入ることでオプションが増える。キックもパスもできる選手が並ぶのは、日本にとって大きなアドバンテージになる」(ジョーンズHC)
 ここまでの2試合、対戦相手のレベルの問題もあって、BKがゲインライン近くでアタックしても、それほどプレッシャーはかかってこなかった。韓国戦はジョーンズHCが指導する日本代表の攻めの基本となるアタックシェイプを、プレッシャーの中でいかにキープしていけるか最初に試される試合となる。
 福岡合宿の練習場所が福岡サニックスブルース(福岡県宗像市)のグラウンドだったことから、韓国戦を4日後に控えた8日に、サニックスとの試合形式による合同練習が行われた。この"CCアタックディフェンス"は実にいい予行演習になったようだ。


UAE戦に続いてインサイドCTBに入る立川(中央)。SH藤井(左)、SO小野と共に攻撃シェイプ維持のキーマンとなる
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 小野、立川と共にアタックシェイプを維持する役割を担うSHとして3試合連続で先発出場する藤井淳は「サニックスと練習して、久々にラグビーをやったという感覚になった。つま恋(=1次合宿の行われた静岡・ヤマハリゾートつま恋)で最初に集まってから1ヵ月が経ち、みんなのシェイプへの意識がすごく高くなってきている」。韓国戦で新しいジャパンのラグビーが進化しそうな感触を語った。

 一方で、藤井には強力なライバルが現れた。6日に留学先のフランスから帰国したばかりのSH日和佐篤が代表合宿に合流。早くも韓国戦のリザーブに名を連ねたのだ。
 「いきなり加わっても、全然違和感はない」。本人が言うとおり、サントリーでの経験を通してジョーンズHCが作り上げるラグビーを熟知している。昨秋のワールドカップで世界的な注目を集めた日和佐の復帰は、ジャパンにとって大きなプラスとなる。

 ポジション争いが激化しているのはSHだけではない。UAE戦で6トライを奪う衝撃的な史上最年少代表デビューを飾ったWTB藤田慶和は、今回はバックアップメンバーとしての帯同で、韓国戦登録予定メンバーの22人からは外れた。「11番」を奪い返した格好のベテランWTB小野澤宏時は、「僕自身も伝えられることは伝えているし、グラウンドでのフェアな競争はチームの成長にとって、とてもいいこと」だと語る。


カザフスタン戦で3トライを記録した後、UAE戦を欠場したWTB小野澤も復帰する
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 実際、ジョーンズHCが藤田に関して「いまはまだ学ぶべきことがあるが、来季にはレギュラーになっているかもしれない」と語るなど、日本代表69キャップを誇り、テストマッチで積み上げたトライ数も世界6位の小野澤とて、現在のポジションが安泰ではないのは、一番良くわかっていることでもあるだろう。
 昨季はアジア五カ国対抗の2部にあたるディビジョン1でプレーしていた韓国。最上位のトップ5トーナメントに復帰した今年はLO劉永男(パナソニック)、SH梁永男(ホンダ)などトップリーグでプレーする選手たちも参加、充実したメンバーで日本を待ち受ける。

「韓国は精神状態が大きな影響力を持つチームなので、前半、韓国が激しくきた時間帯に、こちらがしっかりコントロールした状態でプレーできるかが重要になる。バックスリーは7人制でも活躍するなどスピードがあって要注意だが、フィットネスとスキルレベルを意識していけば大丈夫」とジョーンズHCは見ている。
「今度の韓国は速いディフェンスなど、これまでと違う特徴がある。メンタル面でいい状態にある気がしますが、相手に関係なくジャパンウェイを見せられる試合をしたい」とWTBの廣瀬俊朗主将。佐々木副将は「ブレイクダウンとセットプレー、そしてゲインラインを切っていくこと。100%完璧とはなかなかいかないので、必ず80%以上達成していくようにしていきたい」という。
 大勝に終わった最初の2試合を経て、2015年に世界のトップ10入りに向けた日本代表の本当の第一歩が踏み出されるのが、今回の韓国戦なのかもしれない。

text by Kenji Demura


フランスから帰国したばかりのSH日和佐がリザーブ入り。「時差ボケは1日で治った」とコンディションの良さをアピール
photo by Kenji Demura (RJP)
福岡合宿にはLOブロードハースト(左)も参加。ジョーンズHCから直接指導を受けるシーンも見られた
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