いよいよ、エディージャパンが出陣の時を迎える。
「HSBCアジア五カ国対抗2012」第1節、カザフスタン-日本戦は28日、アルマティでキックオフ。4月1日から正式に日本代表の指揮官となったエディー・ジョーンズヘッドコーチ率いる新生ジャパンにとって、このカザフスタン戦こそが、「2015年ワールドカップでトップ10入り」(ジョーンズ)に向けた第1歩となる。

4月3-7日の静岡「ヤマハリゾートつま恋」。そして、同18-25日の大阪「J-GREEN堺」。

計13日間、2クールにわたって行われた、アジア五カ国対抗に向けた合宿期間中、ジョーンズHC率いる日本代表は、その多くの時間をアタック関連の練習に費やしてきた。


廣瀬主将にとって、カザフスタン戦は5年ぶり2試合目の日本代表としてのプレーとなる
photo by Kenji Demura (RJP)

静岡・つま恋での始動時点で、ジョーンズHCは1次合宿での目標を4つに集約していた。
フィットネス、セットプレー、1次攻撃、そして、全般的なアタッキングフィロソフィーに関する認識レベルを上げること。
「世界一のフィットネスを誇る世界最高のアタッキングチームに」
2015年ワールドカップでのトップ10入りを目標に掲げるジョーンズHCにとって、チーム全体に攻撃ラグビーのベースを浸透させることが最優先課題であることは疑いのない事実だろう。

「セットプレーのベースを上げることに関してはうまくいった。1次攻撃に関する共通認識やアタッキングフィロソフィーの理解も深まったと思う」
初日は大嵐の中での練習だったのが、最終日には晴天のもとグラウンドのまわりに満開の桜が溢れるという、新生ジャパンの明るい未来を暗示するかようなかたちで静岡合宿を終えたジョーンズHCは、そんなふうに1次合宿の成果を語っていた。

続いて、10日間のブレイクを経て最集合となった2次=大阪・堺合宿では、アタック+フィットネスに終始したと言っていい1次合宿の内容に、「ブレイクダウン、ディフェンス、FWモール」といった新たな強化ポイントが追加され、カザフスタン戦が迫っていたこともあって、より試合を意識した実戦的なメニューも加わった。
とはいっても、早朝から始まるフィットネスやウェイトトレーニングのメニューは厳しさを維持したままだった。

日本代表は、26日に関西国際空港からソウル経由でアルマティに向けて旅立ったが、出発前日に行われた会見では、静岡合宿終了時点で「あと30%上げたい」と語っていたフィットネスに関して、ジョーンズHCは「目標は達成できた」と断言。その一方で「選手たちは飛行機の中でようやく9時間も眠れる時間ができてホッとしているんじゃないか。飛行機の中では、走ることができないからね」というジョーク(?)も飛び出した。
「予想していたことではあるけど、とにかく練習がキツかった」
ジャパンでの経験も豊富、かつジョーンズHCのコーチングを熟知しているといっていい、チーム最年長のWTB小野澤宏時でさえ厳しい内容であることを訴えざるを得なかったとおり、新生ジャパンはハードな練習メニューをこなし続けた。

6人の初キャップ組含む最強メンバー

「普通のチームなら12週間を使ってやる内容」(ジョーンズHC)
「4部練なんて、高校生以来」(NO8伊藤鐘史)
激しく追い込んだ2度の短期合宿を経て、25日にはカザフスタン戦メンバーも発表された。
前述の小野澤、そしてLO大野均という大ベテランも先発メンバーに含まれているものの、「日本で最も強いチーム」とジョーンズ監督が胸を張った15人には、6人の初キャップ組も名を連ねた。


大阪・堺合宿でスクラム練習に励むフロントローの3人(右から長江、有田、畠山)
photo by Kenji Demura (RJP)

PR山下裕史が腰を痛めたこともあって、本来はルースヘッドPRとして合宿に呼ばれていたPR畠山健介が元々のポジションである3番に戻る一方、1番には昨年の日本A代表の欧州遠征で高い評価を得た長江有祐、そしてHOにも長江同様、初キャップ組の有田隆平が起用される。
「8人のまとまりを意識しながら、低いスクラムを組んでいきたい」(長江)
「まずはセットプレーを安定させる」(有田)
FW第1列の新顔2人はそんなふうに代表デビュー戦に向けた抱負を語る。

また、新生ジャパンのアタックのキーともなる「速さのあるNO8」(薫田真広アシスタントコーチ)には31歳で初キャップとなる伊藤鐘史が指名され、3月19日のスコッド発表時には、NO8としての起用が考えられていた佐々木隆道は、サントリーで慣れ親しんでいるオープンサイドFLに戻ってプレーする。

ハーフ団も、先発SOの小野晃征以外はリザーブも含めてノンキャップ組が並ぶ。
SHは先発に今季、東芝で完全にレギュラーに定着した29歳の藤井淳、リザーブには筑波大3年の内田啓介。SOの控えには天理大からクボタ入りしたばかりの立川理道。5キャップを持つ小野も5年ぶりの代表復帰だ。

2人のCTBも"新旧"の初代表ペアとなった。
「ダブルSOの役割も果たしながら、まわりを生かしていきたい」という23歳の田村優と、「これが代表として最後のチャンス。失うものは何もない」という29歳の仙波智裕。
東芝で確固たる地位を築いてきた仙波は、今回の代表合宿に参加して「ラグビーがうまくなっている感覚すごくある」とも。実際、練習の中でも、常に手を抜かない、いつも通りのスタイルに加えて、今まで見たことのないようなキレのあるプレーぶりも際立っている印象だった。


29歳で初キャップとなるCTB仙波は大阪合宿でキレのある動きを見せた
photo by Kenji Demura (RJP)

昨年はカザフスタンに61-0で圧勝した(写真はHO木津)
photo by Kenji Demura (RJP)

25日の記者会見時には、FL/NO8佐々木とFB五郎丸歩が副将に指名されたことも発表された。
ふたりの副将に関して、廣瀬俊朗主将は「隆道(佐々木)はいつもボールに絡んでくれるし、ゴロー(五郎丸)は、苦しい時にロングキックでチームを楽にしてくれたり、プレーでも頼りになる。自分なりのリーダーシップで引っ張ってくれている」。

カザフスタンは、1年前に61-0の大差で勝利を収めている相手。
「フィジカルで激しいチーム」(大野)に対して、プレッシャーに負けずにどんどんテンポを上げていくスタイルを貫けるかどうか。
「自分たちらしさを初戦から出し続けていきたい」(廣瀬主将)
新しいチームスローガンである「ジャパンウェイ」を世界に刻む第一歩となるだけに、結果はもちろん、内容も求められる試合となる。