マッチリポート
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トーナメント表


関東学院大学 17-42 天理大学

【準決勝/2012年1月2日(月) at 東京・国立競技場】

準決勝第1試合は、2回戦で早大を破り波に乗る関東学院と、関西リーグ1位の強さを見せつけたい天理の今大会注目の好カード。関東学院はFWの強力スクラム、ラインアウトで優位に立ち得意のモールからトライを狙うだけでなく、外側に快速WTBを走らせることで早大を撃破。天理は立川、ハベア、バイフのフロント3の突進からバランス良く15人が走り回ることで慶應に快勝しており、それぞれがチームの強みをいかに出し切るかがこの勝負のポイントとなった。

前半、風下に立った天理は、ゲーム開始から思い切ってボールを動かし主導権を握る。ハベア、バイフの両CTBが力強く突進し、その2次3次からSO立川が効果的なキックで相手陣に前進。前に出た天理FWは関東学院FWの厳しいタックルに耐え、ラックでの早い球出しにこだわった。そのFWの頑張りがSO立川の視野を広め、ディフェンスのギャップにうまくランナーが走りこんで大きくゲイン、最後はロングパスを受けたWTB宮前がゴール右に飛び込んで先制のトライ。開始5分のこの猛攻がゲームの流れを天理に傾ける。

15分にはラインアウトからまたもSO立川がFWとBKのギャップを狙って大きくラインブレイク。15人が素早いフォローからグラウンド全体にボールを大きく動かし、最後はラックからのボールにLO上田が力強く走りこんで関東学院ディフェンスの真ん中を突き破ってトライ。
その後も天理の勢いは止まらず前半で5つのトライを重ね、このゲームにかける関東の勢いを奪った。(前半7-27)

後半の立ち上がりに関東は伝統復活への意地を見せた。グラウンド中央での天理CTBとのパワフルなタックルの攻防を避け、ショートサイドでのアタックにこだわった。キックオフから関東学院FWが天理ディフェンスの小さなギャップをこじ開けて前進を図る。ボールキャリアのショートステップは天理FWのタックルをかいくぐり、早い球出しから次々とギャップに走り込む。20m程度のスペースを逆、逆へとボールを動かし、天理ディフェンスのタックルの裏側へどんどんプレーヤーが走りこんでいく。この試合大活躍のLO後藤の見事なランニング、そしてNO8安井の突進から連続トライをあげ、後半開始8分で10点差と迫った。(17-27)

この勝負どころでの攻防にスタンドは沸き、関東学院への期待は高まる。相手陣22m内でのスクラム、ラインアウトの回数が増えれば関東へゲームが流れる予感。

しかし、天理の強さはここからだった。
関東学院が狙うショートスペースでの高速ラグビーにてこずりながらも、天理のFWのフィットネスが粘り強くボールを狙う。一人ひとりがしっかりと肩を当てた強いタックルを繰り返すなかでボールを奪い、最後は15人での展開を取り戻していく。関東学院ディフェンスの主眼がCTBハベア、バイフに集まる中で、そのギャップをそれぞれが逃さず走りこんで最後はグラウンド外側へ。12分、14分、28分とWTB木村、宮前が連続してトライし勝負を決めた。(17-42)

このゲームでは天理のチームアタックのバランスの良さが光った。強力なCTBのタテの突進を軸に、そこにディフェンスが集まれば大型SO立川が見事な判断でギャップを切り裂く。FWも良く走り、迷わずスペースに走りこむことで関東学院ディフェンスを内側に引き付け、最後は大外で両WTBが走りきってトライを奪った。

この日の8つのトライのうち、なんとBKで7つのトライ。自分たちの強みを活かして、バランス良くきっちりとゲームメイクができたことは素晴らしく、今年の大学チームの中でもトップクラスの魅力あるラグビーにたどり着いたといえる。また、このチームのディフェンス面での主役は167cmの小さなFL唄の揺るぎ無い献身的タックルにあった。FWの苦しい局面で必ず現れ、最後まで相手ボールに絡む。アタックでもBKの厳しい局面での身を挺してのカバーなど、このプレーヤーの存在も天理ラグビーの多彩さを表現していた。(照沼康彦)

関東学院 17-42 天理 関東学院 17-42 天理 関東学院 17-42 天理 関東学院 17-42 天理
会見リポート
 

関東学院大学の桜井監督(左)と田中キャプテン
関東学院大学の桜井監督(左)と田中キャプテン

関東学院大学

○桜井勝則監督

「お疲れ様です。関東として目標にしてきた1月の国立競技場での試合を達成できたことで、選手はリラックスした中でも緊張して臨みました。ゲームプランとしては、アタックではFWの強みを生かしてBKでの展開をしようと、ディフェンスでは、10、12、13番をしっかり前で止めて寸断しようと臨みました。また、スクラム、ラインアウトでしっかりプレッシャーを掛け、球出しを遅らせようとしました。ゲームの入りで、緊張か、プレッシャーからか、やってきたことがほとんどできず、天理さんのペースになってしまいました。強い所でボールを持たれ、為すところなく点を取られ、チームとして機能できませんでした。
ただ、後半はしっかり我々のプレーができました。2本トライを獲って、あそこでもう1本トライが獲れていればという場面は、お見せできたと思います。天理さんのボールをつなぐ力、前へ出る力が強く、受けてしまったことが敗因です。やってきたことが出せなかったことが悔しいです。5シーズン振りの国立で、体の小さいプレーヤーもやればできることを示すことができました。メンバーをつないで、また戻ってきたいと思います」

──かなり、相手のBKにトライを獲られたが?

「やはり、天理さんの10番の所でプレッシャーを掛けられず、かなり長い時間、ボールを持って動く余裕を与えてしまったと思います。また、センターへのプレッシャーも弱かったと思います。捕まえてもバインドが弱く、前へ出てつながれました」

──ハーフタイムの指示は?

「我々がやってきたこと、基本的にオープンでショートスペースを攻めることを2,3週間やってきましたが、もう一度、こだわろうと。また、一人一人がバラバラにならず、固まろうと言いました」

──想定以上だったことは?

「14番、15番のスピードと前へ持って来る力です。それに、12番、13番は我々が止められなかった点です。また、FW戦でボディブローが効くと思っていましたが、相手FWは思った以上にしつこく、動いてきたと思います」

──スタンドオフにプレッシャーを掛けられなかった要因は?

「一つは1対1のプレッシャーが弱かったことです。特に、FWからのプレッシャーです。練習でしつこくスタンドオフにプレッシャーをかけることを徹底しましたが、二人目、三人目が遅れてしまいました」

○田中圭一キャプテン

「試合については、僕たちがやってきたアタック、ディフェンスを上回る天理さんの力を感じました。僕らの力不足でした。ありがとうございました」

──力の差を感じたのは?

「前半の中盤で、BKに外で行かれたところです。普通に回されて3つめのトライを獲られた辺りです。ちょっと相手のペースをつくられたなと感じました」

──想定どおりだったところは?

「FWでプレッシャーを掛けるところとモールでトライが獲れたところです。スクラムも安定していました」

関東学院 17-42 天理 関東学院 17-42 天理 関東学院 17-42 天理 関東学院 17-42 天理
 

天理大学の小松監督(左)と立川キャプテン
天理大学の小松監督(左)と立川キャプテン

天理大学

○小松節夫監督

「今日は27年ぶりの国立競技場で、前回、負けている分、今日は勝って決勝へ行こうと臨みました。関東学院さんの強みを出させず、うちの強みを出そうとしましたが、前半の風下で頑張るところで、存外ボールを動かせてトライが獲れ、緊張がほぐれたかと感じました。後半は、さすがに関東学院さんは良いアタックを見せ、崩れかけましたが、何とかトライが獲れて決勝に進出することができました。決勝では、今までやってきたことを出させたいと思います」

──ラック周辺のFWの出来は?

「うちはどちらかというとFWが固まって、BKが獲るチームです。体が小さいので、プレッシャーを受けるのは予想どおりでした。それをイーブンに受けることができればやれると思っていました。FWが弱点なのはしょうがないですね」

──帝京のFWは強いので、スクラムなどでの対策は?

「対策はもちろんしますが、どちらにせよ、FWがすぐに強くなれるわけではありません。BKが今日以上にバランスが取れたチームにならないと。楽には勝てないと思います」

──ハーフタイムの指示は?

「もうちょっと、モールに思い切ってディフェンスに行こうと。後半はこちらが風上になるから、関東さんはボールを動かして来るので、しっかりディフェンスしようと。キックオフから猛攻を受け、できなかったのですが」

──24回大会以来の関西勢の決勝進出だが?

「うちが少しずつ積み上げてきた集大成です。一つずつ勝ってここまで来ました。関西から関東に良い選手が流れるのは、我々がいくら強くなっても止められない流れです。ただ、ここまで来られたのは嬉しく思います」

○立川理道キャプテン

「今日の関東戦では、特徴である両WTBの決定力をしっかり抑えようと臨みました。両ウィングは抑えることができましたが、モール、密集戦でトライを獲られたのが反省点です。まだ試合があるので、しっかり修正したいと思います」

──試合前のトスは? 試合前の状態は?

「向こうが選択権を得てボールを選んだので、僕は、陣地は風下を取りました。慶應戦でも風下を取って、しっかり最初からキックでなくボールを動かしました。良い流れをそのまま持って行きたかったので選びました。僕は高校東西対抗で出ていますので、国立は初めてではないのですが、グラウンドに立って、風の向きやタッチラインの位置を確認しようとキョロキョロしました。ゴールキックは外したので、もっと練習が必要です。ほかの選手も良い状態で試合に入れたと思います」

──前半から流れをつかんだが?

「前半は風下なので、まず我慢してディフェンス中心でやっていこうとしましたが、ボールが動いて前進できました。手応えは終わるまで分からず、後半は0対0の気持ちで行こうと言いました。後半もボールを動かしながら前へ出ようとしたが、それが最初に相手にトライを獲られた理由だと思います」

──後半の2トライを獲られたのは?

「自分たちの気持ちの甘さが出ました。しっかり気持ちを切り替えて、前半のリードを忘れて、しっかりポジティブにとらえてディフェンスに行こうと伝えました」

──自分たちが歴史を作ったことについて?

「天理として最高はベスト4でしたので、今年はしっかりそれを越えることができました。もちろん、チーム目標は日本一です。これは一つずつ戦ってきた中で、みんなにもよく言ってきたことです」

──関東学院のマークは厳しくなかったのか?

「多分、マークされるだろうと思い、マークされるところでしっかり前へ出るという、プレッシャーが掛かった練習をしてきました。また、行けるところは自分も行こうと思っていました。それができたのは、FWが五分にやってくれたおかげです」

──関東と関西の違いは?

「FWの重さ、強さ、ブレイクダウンの激しさです。関西では味わえないようなしつこさを経験しました」