マッチリポート
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トーナメント表


早稲田大学 26-28 関東学院大学

【2回戦/2011年12月25日(日) at 東京・秩父宮ラグビー場】

早稲田と関東学院の試合が、12月25日、東京・青山の秩父宮ラグビー場で行われ、13,000人を超えるファンがつめかけた。大学選手権では第45回大会(平成20年度)以来3大会ぶりの対戦である。ともに手の内を知りつくしている相手であり、好ゲームが期待された。

午後2時、関東学院のキックオフで始まる。早稲田が開始直後から関東陣内に攻め込み、FW、BKが一体となった攻撃を仕掛ける。5分。関東学院陣の22メートルライン付近、ほぼ中央でのペナルティーを得て、ゴールキックを狙うが不成功。10分、またもや関東学院は22m付近で反則を犯し、これを早稲田のWTB原田季郎が決め、3点を先行する。早稲田は12分にもペナルティーゴールを決めて6対0とする。この間、早稲田は早い集散でボールを支配し、関東学院陣内で優位にゲームを進める。関東学院も激しいディフェンスで早稲田の攻撃をくい止めるが、早稲田が試合の主導権を握っていた。

20分過ぎからは関東学院の反撃が始まる。ラックやタックル後のブレイクダウンで終始プレッシャーをかけ、早稲田の球出しを遅らせた。早稲田陣に攻め込んでは、ラインアウトからのモール、あるいはラックから執拗にサイド攻撃を繰り返し、ついに、26分にゴールポスト下にこの試合最初のトライを決める(ゴール成功6対7)。
32分にも関東がトライ。早稲田陣ゴール前20メートルでのラインアウトから、FWがモールを押し込み早稲田をモールに引き付けてから右オープンに展開。WTB渡邊昌紀が、早稲田のディフェンスを振り切りトライ(ゴール成功で6対14)。37分にはFB高健二がライン参加により、3本目のトライを奪う(ゴール成功で6対21)。
早稲田も攻撃を試みるが、関東学院の前に出る激しいディフェンスに、得意とする早い展開に持ち込むことができず、前半は関東学院のリードで終了する。

後半に入ると、早稲田は激しく関東学院内に攻め込む。4分。関東学院ゴール前10メートルでのラインアウトから左に攻め、SO小倉順平が相手ディフェンスの後ろにグラバーキック。これをCTB下平泰生が押さえる(ゴール成功で13対21)。10分には、ペナルティーゴールを決め(16対21)、5点差まで詰め寄る。さらに13分。ハイパント攻撃から、ターンオーバーしたボールを、FB井口剛志が逆サイドの原田にキックパス。原田がダイレクトキャッチし、そのままゴールを駆け抜け、同点とする(ゴール不成功で21対21)。その後、残り時間が20分以上あったが、激しい攻防の繰り返しで、双方ともなかなか自分のペースに持ち込むことができない。

28分。関東学院は早稲田ゴール前5mまで迫り、ラインアウトからのモールを押し切り、NO8安井健太がトライ(ゴール成功で21対28)を決め早稲田を突き放す。このまま関東学院が逃げ切るかと思われたが、32分に早稲田が執念を示す。関東陣の22mライン付近でのラインアウトから左に攻撃し、ラック後、またもや井口がゴール隅にキックパス。FL小林勇也が押さえ(ゴール不成功)26対28とする。残り時間7分。このまま関東学院が逃げ切るのか、早稲田が逆転するのか、息詰まる攻防が続き場内は騒然としていたが、関東学院が2点差を守りきりノーサイドとなる。

早稲田、関東学院ともに好タックルを連発し、緊迫した、引き締まったゲームであった。
関東学院はアタック、ディフェンスでよく前に出ており、ラインアウトでもしつこく絡み、早稲田の得意とする、早い球出しからの展開を防いでいた。アタックでは、モールやラックでのサイド攻撃を繰り返し、早稲田ディフェンスを下げてからのライン攻撃を仕掛け、早稲田のディフェンスを破っての素晴らしいトライを挙げていた。
早稲田もハイパント攻撃を多用して、終始、関東学院に圧力をかけたが、前半の失点が大きく関東学院に一歩及ばなかった。
勝った関東学院は、第43回大会(平成18年度)以来、5年ぶりに正月を国立で迎えることとなった。

早稲田 26-28 関東学院 早稲田 26-28 関東学院 早稲田 26-28 関東学院 早稲田 26-28 関東学院
会見リポート
 

早稲田大学の辻監督(右)と山下キャプテン
早稲田大学の辻監督(右)と山下キャプテン

早稲田大学

○辻高志監督
「本日はありがとうございます。選手たちは全力で頑張ってくれました。このチームを優勝させてあげられなかった自分の力不足を感じます」

──ハーフタイム、シンビンから戻るときの指示は?
「後半はテンポアップしようということでした。西橋がシンビンで戻るときは、分かっているので指示していません」

──熊谷選手の起用は?
「熊谷はパスさばきが非常に良い選手でそこのところが今のチームに合っていると考え、出しました」

──FW周辺への指示は?
「関東さんのアタックがうまく、嫌なところを攻めてこられました」

──ハイパント攻撃が有効だったが?
「敵陣で試合しようと言ってきましたが、キックで敵陣に入ろうとしていました。非常に機能していましたが、選手のアイディアです」

──関東の予想どおりのところと予想以上のところは?
「予想としてはFWで来ると思っていましたが、その通りでした。予想外だった点は、BKで外へ回した時に、詰め切れなかったところです」

○山下昂大キャプテン
「本日はありがとうございます。先週の試合から、1試合、1試合をしっかりやっていこうと臨みました。僕の力不足で、負けてしまって悔しいですけれど、本当に楽しい80分間でした」

──14人の時はどんなことを伝えたのか?
「とにかくエリアを取られないように、いつも敵陣でやろうと伝えていました」

──モール対策は?
「夏合宿で試合したときもモールでトライを獲られました。今日も来るだろうと思っていました。特にラインアウトモールに関してはディフェンス的にも、前へプレッシャーをかけられました」

早稲田 26-28 関東学院 早稲田 26-28 関東学院 早稲田 26-28 関東学院 早稲田 26-28 関東学院
 

関東学院大学の桜井監督(右)と小林バイスキャプテン
関東学院大学の桜井監督(右)と田中キャプテン

関東学院大学

○桜井勝則監督
「お疲れ様です。こういう素晴らしい環境でラグビーファン、関東学院ファンの皆様の前で試合ができて、関係の皆様に感謝申し上げます。こういう良い条件で早稲田さんと久々に試合することができました。本当に特別な思いで臨みました。早稲田さんがやってくることを、どうやらせないかがテーマで、ディフェンスでもアタックでも前へ出て行くことを意識した練習をしてきました。
前半は、早稲田さんが展開でなく割とキックや縦の攻撃をしてきましたので、そこを1人、2人としっかり倒して乗り越えることができました。前半の後半では、前へ出て行くことが功を奏して、あれだけトライを獲ることができました。後半は、当然、早稲田さんはボールを動かしてくると考え、とにかく前で止めようと指示しました。さすがに力のあるチームですので、だいぶトライを獲られました。今日はFWがこだわってくれて、非常に良いゲームができました。次の準決勝に向けて気を引き締めていきたいと思います」

──早稲田のハイパント攻撃が有効だったが?
「我々としては、回してつながれる方が嫌でした。キックになるとイーブンボールになりますので、我々としてはターンオーバーするだけです。2本トライされましたが、つながれる方が怖かったですね」

──モール攻撃について?
「春から関東学院はモールで押し込んで、BKに展開してきました。シーズンが深まり、かなり相手にモールの研究をされ、分断されたり、倒されたりしました。しかし、倒されてもサイドを突いていくことにこだわってきました。早稲田さんとしては、まさか関東学院がモールで前へとは考えなかったのではないでしょうか。当然、外へボールを回すのはうちのスタイルですので、溜めて、溜めて、外という、前半のトライはそういうトライでしたね」

──ようやく国立へ戻るが、この間の苦労は?
「本当に簡単に話せるものではありませんが、我々が最後に戻るのは1月2日の国立競技場だと思ってやってきました。それが叶うのは嬉しい限りです」

──どんな練習をしてきたのか?
「ブレイクダウンで、ダウンしたところに2人目、3人目が非常に速いのが早稲田さんです。そこで、オーバーされない意識で、なお乗り越えていくことが大事だと考え、2人目、3人目のサポートを何が何でも最優先させることを徹底してきました。それが非常に良いプレーにつながったと思います」

○田中圭一キャプテン
「試合に関しては監督がおっしゃったとおりです。選手としては、試合前にいつも言っていますが、勝っても負けても悔いがないように、全力で戦うという気持ちがああいう勝利につながったと思います」

──何が良かったか?
「FWのモールで前に出ることが良かったと思います。しっかりモールで前に出たので、BKを下げさせてトライが獲れたと思います」

──後半、同点にされ、よく我慢できたと思われるが?
「後半が始まる前、また0対0の気持ちで最後までやろうと言ったのですが、同点にされてもまだその気持ちがあったので我慢できました」

──かつての強さを取り戻したようだが?
「僕は1年生の時から3年生まで1回戦で負けて、悔しい思いしかありません。キャプテンになって、どうにか強くしたいという思いがありました」

──1週間の練習は?
「今日は、最後に練習でやってきたことを出せた80分でした。毎回、あとはどんな気持ちで戦うか、勝ちたいという気持ちを持って行こうと言ってきました。今週も関東学院らしいエンジョイする練習をやっていこうと思います」