シーズンも深まり、強い北風は熊谷ラグビー場の名物。関東対抗戦3位ながら今季の明治大は自力を蓄えこの地に臨んだ。対する関西学院大はリーグ戦では3勝4敗と苦戦を強いられた結果、関西第5代表、この選手権では挑戦者の立場だ。
試合は風下の関西学院のキックオフで始まる。最初のコンタクトで早くも関西学院が反則。力が上と目される明治、セオリー通りなら、まずはキックで敵陣へと考えるところ。ところがSH多田潤平は迷わずタップキックで速攻を仕掛ける。これが単なる思いつきの奇襲ではなく、明治のフィフティーンには意思統一がある。ラックからのボールも再び多田潤平が持ち出すと、フォローのFL竹内健人にボールが渡り、あっという間にゴールを陥れた。時計はまだ1分。SO染山茂範のゴールも成り、7-0。
続く4分。再び関西学院が反則を犯すと、明治は今度は慎重にボールをタッチラインの外へ蹴り出す。ラインアウトのボールを確実にキープするとモールを組んで前進、PR石原慎太郎が二つ目のトライを奪う。
立ち上がりがポイントと考えられたこの試合。明治が速攻から、そしてFWの力でと、理想的な形でトライを重ねたのに対して、挑戦者の立場である関西学院は、早くも勝利へのシナリオが崩れてしまった。
明治は落ち着いてシンプルに前進、風上を利してのキックも織り交ぜて着実な試合運び。一方、関西学院はBKのスピードを武器にゴールを目指したいのだが、肝心なところで焦りが出るのか自らのミスでチャンスを逸す展開。
明治は12分、見事な連続攻撃で、22分にはペナルティから得たゴール前ラインアウトからのモールで得点を重ね、24-0と完全に試合を支配する。
前半終了間際。ピッチ中央のスクラムから明治が攻撃、守勢の関西学院はオフサイドのペナルティ。再びタッチキックでゴール寸前のラインアウトから明治のFWが力ずくの前進。必死のディフェンスの関西学院は反則を繰り返し、シンビンで1人を欠く状態に。しかし、逆境に立たされた関西学院はここで粘りを見せる。明治の連続攻撃でボールはゴールラインを越えるもグラウディングを許さず、後半戦へとわずかな望みをつなぐ。
後半、落ち着きを取り戻した関西学院。明治陣で得たスクラムを起点に展開ラグビーで攻めると、ラックとなったところで明治が反則。このペナルティで3点を返して24-3とする。明治の焦りを誘う流れが作れる、そんな時間帯が待ち受けるかと思われたが、8分、明治はモールを押し込んでのトライをあげて、再び点差を広げる。
しかし、あきらめない関西学院。BKのスピードを生かした攻撃で何度かチャンスを作るも、明治の力強いディフェンスを崩しきるには至らない。
35分。こう着状態を破り、試合を決めたのは、途中出場、紫紺のジャージに22番をつけた村井佑太朗。自陣の22mまで攻め込まれラックとなったところで、わずかな隙を見逃さずこぼれ球を拾い上げると、関西学院ディフェンスを突き破り、約60mを走り切ってのトライ。
最終スコアは38-3。関西学院の勝利にはいくつかの条件を引き寄せる必要があったはず。まずは、風上に立つこと。これは運も無かったと言えるが、できれば立ち上がりにたたみ掛けて明治を浮き足立たたせる展開へと持ち込みたかった。逆に明治に主導権を奪われては、やはり力が及ばない。スピードあるBK攻撃や粘り強いディフェンスで試合を作ることはできていただけに、悔やまれるは立ち上がりにあっさりと奪われてしまった二つのトライではなかったか。
明治は選手権二回戦へと駒を進める。怪我で出場の無かったメンバーも万全を期して登場するだろう。相手は東海大を退けてきた筑波大、熱戦は必至である。地に足を着け、落ち着いて明治のラグビーを押し続けることが勝利を手にする条件ではないか。(栗原 稔) |