●試合日 2011年9月27日(火)(17:00キックオフ/日本時間13:00)
●会場 ニュージーランド、ネーピア「マクレーンパーク」
●試合結果

カナダ代表 23-23 日本代表 (前半7-17)

Text by Kenji Demura

ワールドカップには魔物が棲んでいる。
そんなことを考えたくなるような結末だった。
ここまで予選プール3戦3敗で予選敗退が確定していたジャパンにとっては、今大会最後の一戦。
4年前のフランス大会でロスタイムに飛び出したトライ&ゴールで劇的な引き分けに持ち込んだカナダとの再戦は、当然ながら、この4年間のJKジャパンの真価が問われるラストマッチだった。
「勝ちたい」
試合前のロッカールームでは、いつも「普段どおり」を繰り返してきたNO8菊谷崇主将から、珍しくこの一戦で結果を残すことへの強い意欲も語られた。
「いつもはクールな感じの選手の中にも、涙を流す人もいた」(LO大野均)

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そんな高まりきった緊張感の中、トスに勝って前半風上を選んだジャパンだったが、立ち上がりは苦しい時間帯が続く。
カナダのキックオフをキープできなかった日本はいきなり「カナダのキープレーヤー」(ジョン・カーワンヘッドコーチ)と警戒していていたCTBのD・T・H・ファンデルメルヴァにタテにブレークされて日本ゴールに迫られる。
FBウェブ将武が辛うじて指先で相手のかかとに触れるようにタックルした後、カバーディフェンスに走ったWTB小野澤宏時が相手の腕を引っ張るように倒れ込んで何とかトライを防ぐ。
続く2分にもカナダはスクラム、そしてラックからサイドアタックで日本ゴールに迫るが、2回連続でビデオ判定となった結果、2度ともトライは認められず。
それでも立ち上がりからの流れを生かして、カナダが先制トライを決めたのは5分。スクラムから左展開して、CTBファンデルメイヴァが日本WTB遠藤幸佑のタックルを外して、日本ゴールを陥れた。

この大会以前からの課題だった、入りの悪さ、そしてキックオフやタックルの高さなど、危惧されていた課題点が一気に表面化するような立ち上がりだったが、それでもこの後、試合は完全に日本ペースとなる。
10分にCTBアリシ・トゥプアイレイの突破でゴール前に迫った後、ラックサイドをHO堀江翔太がくぐり抜けて同点に(SOジェームス・アレジのゴールも決まり7-7)。
そのプレー直後にトゥプアイレイが、さらに25分にPR藤田望がケガで退場を余儀なくされたが、そんなアクシデントさえチームにとってはマイナスにはならなかった。
JKジャパンでの経験という意味では、負傷退場した2人よりも上であるCTBブライス・ロビンス、PR畠山健介が、2人の穴を補って余りある活躍を見せたのだ。

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ことに、約1年ぶりの代表復帰だったにも関わらず、アウトサイドCTBのポジションに入ったロビンスは、ニコラスとの息のあったプレーでカナダDFを翻弄し続けた。
24分に両CTBコンビでチャンスをつくってカナダ陣に攻め込んだところで、カナダがオフサイド。
SOアレジが確実にPGを決めて日本が勝ち越し。
そして、前半終了間際に得たPKのチャンスにはPGを狙わずタッチキックからトライを取りに行くことを選択。
モールは押し切れなかったものの、BK展開してアレジとニコラスがループした後、WTBのポジションから内側に入ってきた遠藤が、タックルミスの汚名返上とばかりに力強い走りでDFを切り裂いて、17-7とリードを10点に広げて前半を終了した。

「ほとんどの時間帯で試合を支配することができた」(カーワンHC)
確かに、風上という優位性もあったが、立ち上がりの時間帯を除けば、前半、日本が自分たちのペースで試合を進めていたのは間違いなかった。
10点のリードで風下となる後半へ。いかに我慢できるかが、20年ぶりとなるW杯勝利へのポイントとも言えたが、最終的には「我慢しきれなかった」(FLマイケル・リーチ)結果へとたどり着いてしまう。

後半も立ち上がりにペースをつかんだのはカナダ。
4分に逆サイドに走り込んだWTBフィル・マッケンジーがロビンス、ウェブのタックルを振り切って5点差に。
その後、日本もアレジの2本のPGで加点していったものの、カナダは後半35分にSOアンダー・モンロのトライ、さらに終了1分前にモンロが今度はPGを決めて、とうとう試合は23-23の同点に。
20年ぶりの勝利を目指す日本は、残り時間が少ない中、ボールをキープし続けながら攻め続け、試合終了直前にはアレジが勝ち越しDGを狙ったが、弾道は大きくゴールポストから離れた方向へ。
4年越しの死闘はまたも両者譲らぬ引き分けで試合終了となった。

カナダ代表 23-23 日本代表

「持てるものは出し切った。後悔はしていない」(LO北川俊澄)
それは、この日プレーした全員に共通する思いではあるだろう。
間違いなく不完全燃焼に終わったトンガ戦の後を受けての最終戦だっただけに、チームが「出し切ってくれた」ことは素直に喜びたい。
ただし、「それでも勝ちきれなかった」という事実を正しく認識できるかどうかも、4年後、あるいは8年後の歓喜のために、絶対に避けては通れないものではある。
「何が足りなかったか、いまはわからない」
自らが引っ張ったジャパンを「素敵なチーム」と表現した菊谷主将はW杯勝利に届かなかった理由に関して、そう正直に語った。
選手全員が出し切った感があっただけに、その気持ちは痛いほどよくわかる。

一方、そんな菊谷主将の最大の理解者であったかもしれないFW最年長の大野は「キクちゃんを勝たせてあげられなかった」と、悔やむ一方、この4年間のJK体制でジャパンが掴んだ最大の収穫を「自信」という言葉で表現した。
大野同様、前回の引き分けも知るWTB小野澤は試合後、カーワンHCと抱き合いながら、「勝てなかった」と珍しく自分の感情を解放。ただし、ザワらしく勝てなかった要因を「もっとやるべきこと、詰めるべきことがあった。一番はDFプレッシャーの部分」と冷静に振り返ることも忘れなかった。
何よりも、本物の世界と戦う中で選手たちが掴んだ「日本はどうしたらW杯で勝てるか」という感触こそ、重要なはず。
中には、W杯での経験をふまえ、「海外で修行する」(HO堀江翔太)と宣言する選手もいる。もちろん、それはW杯でジャパンが勝利するための本当の一助になるための宣言でもあるはずだ。
そうした多くの選手の「W杯でジャパンが勝つためにはこうするべき」というエネルギーを集約できるような、確固たるビジョンが示された強化体制の構築を望みたい。

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