Text by Kenji Demura 試合開始前、地元テレビ局で繰り返し流されていたのは、16年前の映像だった。 そう。映画『インビクタス』でも使われた、1995年南アフリカW杯「ブルームフォンテインの惨劇」。 「立ち上がり、スローに入ってしまった」(NZ代表グレアム・ヘンリー監督) FLマイケル・リーチがNZボールのラインアウトを奪い、SH日和佐篤が素早い出足で対面のアンディ・エリスをつぶす。 日本のしつこいプレーに手こずった証しとも言えるだろうが、地元ファンからのブーイングを浴びながらも10分にはNZがPGを狙う場面もあったが、これもSOコリン・スレードが失敗。 「日本は良いストラクチャーを持っているチーム」 16分にモールで日本DFを崩した後、再びCTBノヌー、FBトエアヴァとつないで、WTBリチャード・カフィが早くも今大会3個目となるトライを挙げて、オールブラックスは一気にギアアップ。 「前半だけで13ミスタックル。これではNZ相手には難しい」 最終スコアは83-7。 それでも、16年前のブルームフォンテインでも、日本が一矢(奪ったトライ自体は2トライだったが)を報いたシーンは印象的だったのと同じように、この日も日本が唯一奪ったトライに関しては十分賞賛に値するものだった。 前半から卓越した状況判断と厳しいプレッシャーの中でも自分の最大限のパフォーマンスを見せて本物のインターナショナルレベルの選手であることを体中で発散していたWTB小野澤宏時が、一瞬フワッと浮いた相手のショートパスを見透かしていたかのようにドンピシャのタイミングで現れてきてインターセプト。そのまま40mを走り切った。 「相手が大量点を取っていたので、ああいう雑なパスが来ることは予想できた」 小野澤同様、日本チームの中では判断の早さに裏打ちされた反応のいいプレーぶりが際立っていたFLリーチは「オールブラックスが今までの相手と一番違ったのは、サポートの早さ。ラインブレークされると、僕らも戻っているけど、相手のサポートポレーヤーが次から次へと現れてくる。悔しいけど、いい経験になったし、切り替えて次の試合に臨みたい」と語り、PR川俣直樹も「オールブラックスのワイドな攻めを経験しちゃえば、逆にトンガとかは近場で来るので、何とかなる」と、今回の苦い経験を次戦以降に生かしていこうという雰囲気が、試合終了直後すでにチーム全体に漂っていたのも事実ではある。 この日オールブラックスの主将を務めたHOケビン・メアラムが「最初は低いスクラムに戸惑ったし、クイックラインアウトも機能していた」と認めた通り、セットなどでも通用する部分があったことも間違いない。 単純なスコアの差で言うなら、16年前の128点差から76点差に縮まった。 |