●試合日 2011年9月16日(土)17:00キックオフ(日本時間)
●会場 ニュージーランド、ハミルトン「ワイカトスタジアム」
●試合結果

ニュージーランド代表 83-7 日本代表 (前半38-0)

Text by Kenji Demura

試合開始前、地元テレビ局で繰り返し流されていたのは、16年前の映像だった。

そう。映画『インビクタス』でも使われた、1995年南アフリカW杯「ブルームフォンテインの惨劇」。
まるで、いまだ破られていないワールドカップレコードを再び自分たちの手で更新するぞというニュージーランド人の総意の表れでもあるかのような、試合前のリピーティング。
ただし、試合前に両国の震災の被害者への黙祷も行われたハミルトン・ワイカトスタジアムでキックオフ直後の時間帯に展開された試合内容は、16年前のそれとは明らかに違うものだった。

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「立ち上がり、スローに入ってしまった」(NZ代表グレアム・ヘンリー監督)
開始4分にターンオーバーから一気のカウンターで最後はCTBマア・ノヌー、FBアイザイア・トエアヴァ、CTBコンラッド・スミスとつないで先制した後、日本がDF面で健闘して、オールブラックスに追加点を与えない時間帯が続いた。

FLマイケル・リーチがNZボールのラインアウトを奪い、SH日和佐篤が素早い出足で対面のアンディ・エリスをつぶす。

日本のしつこいプレーに手こずった証しとも言えるだろうが、地元ファンからのブーイングを浴びながらも10分にはNZがPGを狙う場面もあったが、これもSOコリン・スレードが失敗。
このところ試合の入りに失敗することが多かったジャパンとしては、開始15分を1トライ1ゴールのみの7失点で乗り切ったのは、相手が世界ランキング1位のNZということを考えるなら、まずまずの立ち上がりと言えなくもなかった。
ただし、日本にとっては「健闘」とも言えた時間帯も、オールブラックスにとっては、相手の実力や出方を見極めるものだったかもしれない。

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「日本は良いストラクチャーを持っているチーム」
あるいは、試合前からヘンリー監督がそんなふうに警戒していたことも、NZフィフティーンにとっては慎重に試合を進める要因になっていたのかもしれなかった。
そして、間違いなくアタック力では世界一のチームにとって、相手の弱点を見極めるのは15分で十分だったのだ。

16分にモールで日本DFを崩した後、再びCTBノヌー、FBトエアヴァとつないで、WTBリチャード・カフィが早くも今大会3個目となるトライを挙げて、オールブラックスは一気にギアアップ。
以降、ハーフタイムまでに4トライを加えて、38-0で前半を終了した。

「前半だけで13ミスタックル。これではNZ相手には難しい」
ジョン・カーワンヘッドコーチの指摘どおり、若手中心のメンバーで臨んだジャパンは、時間の経過とともにオールブラックスのアタックを止められなくなっていった。
後半に入っても前半の途中からNZに傾いた流れは、基本的には変わらなかった。

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最終スコアは83-7。

それでも、16年前のブルームフォンテインでも、日本が一矢(奪ったトライ自体は2トライだったが)を報いたシーンは印象的だったのと同じように、この日も日本が唯一奪ったトライに関しては十分賞賛に値するものだった。

前半から卓越した状況判断と厳しいプレッシャーの中でも自分の最大限のパフォーマンスを見せて本物のインターナショナルレベルの選手であることを体中で発散していたWTB小野澤宏時が、一瞬フワッと浮いた相手のショートパスを見透かしていたかのようにドンピシャのタイミングで現れてきてインターセプト。そのまま40mを走り切った。

「相手が大量点を取っていたので、ああいう雑なパスが来ることは予想できた」
まさしく一矢を報いるかっこうとなった小野澤だが、試合後は自らのトライを喜ぶよりは、破綻したDFシステムをどう残り2試合で再構築していくかに思いを巡らせているようでもあった。
「もう少しインサイドから圧力をかけていった方が……」

小野澤同様、日本チームの中では判断の早さに裏打ちされた反応のいいプレーぶりが際立っていたFLリーチは「オールブラックスが今までの相手と一番違ったのは、サポートの早さ。ラインブレークされると、僕らも戻っているけど、相手のサポートポレーヤーが次から次へと現れてくる。悔しいけど、いい経験になったし、切り替えて次の試合に臨みたい」と語り、PR川俣直樹も「オールブラックスのワイドな攻めを経験しちゃえば、逆にトンガとかは近場で来るので、何とかなる」と、今回の苦い経験を次戦以降に生かしていこうという雰囲気が、試合終了直後すでにチーム全体に漂っていたのも事実ではある。

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この日オールブラックスの主将を務めたHOケビン・メアラムが「最初は低いスクラムに戸惑ったし、クイックラインアウトも機能していた」と認めた通り、セットなどでも通用する部分があったことも間違いない。
世界ランキング1位のチームに対して多くの若手を起用したカーワンHCは、母国に対する大敗を受けて「若い選手たちにとっては次のワールドカップに向けて、いい経験になった」と語る一方、「我々のワールドカップは今から始まる」と宣言した。

単純なスコアの差で言うなら、16年前の128点差から76点差に縮まった。
その本当の意味、そして評価は、残り2試合、JKジャパンが目標の2勝を達成できるかどうかで大きく変わってくることになる。

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