Text by Kenji Demura

オールブラックスのCTB、マア・ノヌー選手
オールブラックスのCTB、マア・ノヌー選手
photo by Kenji Demura (RJP)

世界ランキング1位のオールブラックスとニュージーランドでのワールドカップで対戦。
NZ戦メンバーに選ばれた22人とっては、間違いなく人生で1度きりの経験となる。
しかも、試合2日前に発表されたオールブラックスのメンバーは、NZは今大会一のスターになりつつあるCTBソニー・ビル・ウィリアムスこそリザーブに回っていたものの、FLリッチー・マコウ主将、SOダン・カーター、開幕戦を欠場したFBミルズ・ムリアイナも顔を揃えた強力なものだった。

「日本はよくコーチングがされているチーム。ブレイクダウンはフィジカルで、スピードもある。彼らのペースでプレーさせることは危険だ」というNZ代表グレアム・ヘンリー監督のJKジャパンに対する認識もあり、「我々にとって最高のゲームをする」(同監督)ためのメンバーが並んでいたのだ。
その後、コンディションなどの問題から、前記の3人など、ビッグネームが次々にメンバー落ちしていったが、1番から15番までスキのないメンバーが揃っていると言っていいだろう。
マア・ノヌー、コンラッド・スミスのCTB陣、開幕戦で2トライを記録したWTBリチャード・カフィなど、決定力のあるBKが並ぶ。

開幕戦のトンガ戦でも、ターンオーバーからの一気のカウンターアタックでトライを重ねたが、グラウンドのどこであれ、ジャパンがボールを離した瞬間から、オールブラックスの高速アタックの脅威にさらされることになる。
「日本としてはとにかくボールをキープし続けること。キックもただ蹴るだけではなく、相手のプレッシャーになるようなかたちで使わなければならない。DFでのプレッシャーも大切になる」
NZ生まれでオールブラックスと対戦することを望んでいたものの、当日はスタンドから仲間の奮闘を見届けることになるCTBライアンニコラスは、NZ戦のゲームプランに関してそう語る。
ちなみに、開幕戦で後半NZに対してボールキープを続けて健闘した元オールブラックスでもあるトンガ代表イシトロ・マカ監督も、「危険なBKプレーヤーが揃うオールブラックス相手にはとにかくボールキープを続けるしかなかった」と、NZ相手にはボールキープが重要となることを力説していた。

対する日本はフランス戦の先発から10人を入れ替えた、6日前とは全く異なると言っていいメンバーで世界最強チームに臨むことになる。前述のとおり、攻守の大黒柱と言っていいニコラスライアンやフランス戦で全得点(2トライ、1ゴール、3PG)を叩き出したSOジェームス・アレジや、そしてそのアレジのトライに結びつくラストパスを出すなど落ち着いたプレーで攻守にメリハリをつけていたSH田中史朗などが欠場する。

「メンバー全員がハードワークをしてきた。30人全員の貢献がなければ、W杯目標を達成することはできない」
ジョン・カーワンヘッドコーチはフランス戦から10人を入れ替えた意図に関して、そう語った。
フランスでプレッシャーを受け続けたスクラムの核となるFW第1列も総入れ替え。
川俣直樹―青木祐輔―藤田望の3人は8月米国戦と同じ組み合わせ。
開幕戦では、トンガのスクラムに苦しんだNZだが、セットに関してはこの1週間での一番の修正ポイントでもあった。
日本としてはフランス戦以上に、セットでプレッシャーを受けると、オールブラックスの破壊力の餌食となる確率が上がるだけに、若いフロントロー陣の健闘を祈りたい。
フランス戦で途中出場して自信をつけたPR藤田望は「オールブラックスにもいけるんじゃないか」。

LO大野(右)、HO青木など、初戦ではプレーしなかったフレッシュなメンバーで世界ランキング1位に挑む
LO大野(右)、HO青木など、初戦ではプレーしなかったフレッシュなメンバーで世界ランキング1位に挑む
photo by Kenji Demura (RJP)

前回の日本とNZの対戦は言わずとしれた1995年W杯での17-145の惨劇。
16年前のオールブラックスは2本目と言っていいメンバーで日本戦を戦ったのに比べ、今回はかなりベストに近い構成。
本物のオールブラックスたちを苦しめて、「出場チームのなかで最も成長している代表チームであることを証明したい」と、カーワンHCは抱負を語る。
前述のニコラスやアレジと言ったフランス戦でも活躍たした主力を温存したこともあって、NZの先発メンバーに海外出身者は2人のみ(FLマイケル・リーチ、SOマリー・ウィリアムス)。これは、ここ2年間のJKジャパンの試合の中で最小の数字。
日本人選手の実力がどこまで底上げされているのかを試される一戦ともなる。