東日本大震災復興支援チャリティーマッチ
日本代表 vs トップリーグXV
日本代表 vs トップリーグXV

text by Kenji Demura

ドリームマッチ。
そう呼んで差し支えないだろう。
6月26日、東京・秩父宮ラグビー場で、日本代表とトップリーグXVの対戦が実現。
2003年にスタートしたトップリーグの歴史をひも解いても、その選抜チームが日本代表と試合をするのは史上初の出来事となる。
今回は、まだまだ大震災の後遺症に苦しむ被災者を支援するためのチャリティーマッチという位置づけで行われることになったのだが、元々多くのトップリーグファンが待ち望んでいた夢の一戦と言ってもいい。

「なるべく多くのチームから選ぶことも念頭に置きながら、各チームのキャプテンと相談してメンバーを決めた。いいキャラクターとスキルを持っていて、しかもそのキャラクターとスキルを試合で出すための勇気を持つ、素晴らしい選手ばかりだと思う」
6月15日に発表されたトップリーグXVメンバー27人に関して、そんなふうに語ったのは、エディー・ジョーンズ サントリーGM兼監督。
当日、トップリーグXVの指揮を執る。

日本代表にとってはW杯に向けた新ジャージを着用した初の試合となる   日本代表候補でもあるWTB山田章仁(パナソニック)など、スター選手が勢揃いするトップリーグXV   引退したSHジョージ・グレーガンももう1度だけ日本のファンの前でプレーするために駆けつける   アジア五カ国対抗時は日本代表だったFB田邉淳(パナソニック)はトップリーグXVの一員としてプレーする
日本代表にとってはW杯に向けた新ジャージを着用した初の試合となる 日本代表候補でもあるWTB山田章仁(パナソニック)など、スター選手が勢揃いするトップリーグXV 引退したSHジョージ・グレーガンももう1度だけ日本のファンの前でプレーするために駆けつける アジア五カ国対抗時は日本代表だったFB田邉淳(パナソニック)はトップリーグXVの一員としてプレーする

メンバー発表記者会見には、エディーさんことジョーンズ監督と、トップリーグXVメンバーを代表して山田章仁(パナソニック ワイルドナイツWTB)が出席したのだが、山田自身は本来出席するはずだったトップリーグXV主将を務める廣瀬俊朗の"代役"としての登場だった。

記者会見で廣瀬の代役を山田が務める──。

その事実を紹介するだけで、今回のトップリーグXVメンバーがいかに豪華な顔ぶれが揃っているか、うかがい知ることができるはずだ。

"敵将"となるジョン・カーワン日本代表HCをして、「いい選手ばかり」と言わしめるメンバー。

IRBパシフック・ネーションズカップに向けた日本代表30人(30人以外にも一部日本代表スコッドは、トップリーグXV入りが見送られたメンバーも数人いる)、そして現在NZ遠征中の日本A代表が選抜対象になっていないとは、にわかには信じられないのだが、それも「トップリーグの人材の深さを表している」(ジョーンズ監督)のは間違いないだろう。

たとえば、前述の山田、そしてPR金井健雄(サントリーサンゴリアス)は、PNCスコッドからは漏れたものの、50人のW杯スコッドには含まれているし、FB田邉淳(パナソニック)は先のアジア五カ国対抗4試合中2試合でジャパンの一員としてプレー。さらに、1年前のPNCサモア戦、トンガ戦でジャパンの勝利に貢献したCTB金澤良(リコーブラックラムズ)など、今回日本代表側で戦わないことが不思議な選手が多く含まれる一方、NO8箕内拓郎(NTTドコモレッドハリケーンズ)、FL佐々木隆道(サントリー)の主将経験者を筆頭に、HO松原裕司(神戸製鋼コベルコスティーラーズ)、LO熊谷皇紀、LO/FL浅野良太(以上NECグリーンロケッツ)、CTB大西将太郎(近鉄ライナーズ)といった前回W杯メンバーが多い点も、W杯イヤーのジャパンの国内初戦に相応しいと言えるかもしれない。

もちろん、彼らとて、いまだにジャパンでプレーしていてもまったくおかしくない実力の持ち主たちであることは、改めて書くまでもないだろう。

さらに、昨季で現役を引退した代表キャップ数世界記録保持者のSHジョージ・グレーガン元豪州代表(元サントリー)も、「日本への感謝のため」にシドニーから駆けつけ、成長著しいSO君島良夫(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス)と指令塔コンビを組むことになる。

グレーガン以外の外国人勢としては、FLヘイデン・ホップグッド(トヨタ自動車ヴェルブリッツ)、同スティーブン・ベイツ(東芝ブレイブルーパス)、NO8モセ・トゥイアリイ(ヤマハ発動機ジュビロ)、SOピーター・ヒューワット(サントリー)、そしてWTBカーン・ヘスケス(福岡サニックスブルース)がメンバーに含まれている。

こうして、ざっとメンバーを紹介しただけで、彼らがジャパン相手にどんなラグビーを披露してくれるのか、楽しみは広がるばかり。

唯一の不安点は、トップリーグXVとしてのチーム練習が試合前2日間に限られてしまう点だが、それでもジョーンズ監督は「かつて、バーバリアンズの監督として同じような条件でワラビーズ(豪州代表)と対戦したこともあるし大丈夫。100%勝ちにいく」と、あくまでも強気だ。

NO8箕内拓郎(NTTドコモ)元日本代表主将など、トップリーグXVにはジャパンを知り尽くしたメンバーも顔を揃える   カーワンジャパンの新顔SOマリー・ウィリアムス(豊田自動織機)も出場機会がありそうだ   今季初の国内ゲームでチームの成長ぶり見せたいカーワンジャパン   トップリーグXVを率いるエディー・ジョーンズ監督
NO8箕内拓郎(NTTドコモ)元日本代表主将など、トップリーグXVにはジャパンを知り尽くしたメンバーも顔を揃える カーワンジャパンの新顔SOマリー・ウィリアムス(豊田自動織機)も出場機会がありそうだ 今季初の国内ゲームでチームの成長ぶり見せたいカーワンジャパン トップリーグXVを率いるエディー・ジョーンズ監督

トップリーグXVに関する記述が多くなってしまったが、W杯まで残り2ヵ月半。翌週にはPNCのサモア戦を控えるカーワンジャパンにとっても、貴重な"ガチンコ勝負"の場になる。

「相手がモチベーション高く試合に臨んでくるのは間違いないでしょう。でも、こっちはこっちでPNCでスタメンで出られるかセレクションがかかっているんで必死だし、サモア戦に向けていい反省ができるような試合にしたい」(菊谷崇主将)

HOやSOにケガ人が出ていることもあって、青木祐輔(サントリーHO)、そしてマリー・ウィリアムス(豊田自動織機シャトルズSO)といった、アジア五カ国対抗時にはメンバー外だった選手にもチャンスが与えられることになりそうだ。

そして、W杯でカーワンジャパンが着用することになる新ジャージもこのチャリティーマッチが初のお目見えとなる一方、チャリティー用に選手たちがコンセプトやデザインを考えた日本代表チャリティーTシャツも当日限定発売される予定となっている。

日本にとって忘れられない年となってしまった2011年の「いい思い出」として記憶の片隅に残すためにも、当日は芝の状態も見違えるようになった秩父宮ラグビー場へ、いざ。