日本代表 90-13 スリランカ代表
【2011年5月21日(土) at コロンボ、セイロニーズ・ラグビー・フットボール・クラブ】

text by Kenji Demura

日中の最高気温が50度にも迫ろうかという日もあったドバイから、試合3日前にスリランカに移動したジャパンの面々を待ち受けていたのは、これぞ南アジアの島国といった感じの凄まじいほどの蒸し暑さだった。

最高気温自体はドバイに比べるなら10℃以上下がるものの、湿度は70%を超え、じっとしているだけで汗が滲んでくる。

同じような蒸し暑さはタイでも経験していたものの、タイでの試合がナイトゲームだったのに対して、コロンボでのアジア5カ国対抗(A5N)最終戦は、会場となったセイロニーズ・ラグビー・フットボール・クラブの照明設備が貧弱なこともあり、キックオフ時刻はまだまだ南国の太陽が強烈に照りつける16時。

日没が18時台ということもあって、後半はまだ条件が良くなるものの、前半の40分に関しては、今回のアジア・中東遠征の中でも、最も過酷な条件の中で行われたのが、今季トップ5昇格を果たしていたスリランカとの一戦だった。

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恐らくは、そうしたラグビーをプレーするには苛酷すぎる条件も影響したのだろう。

アジアトップ5国の中でも、1ランク実力が落ちると言わざるを得ない相手に対して、すでに大会4連覇を決めていた日本は立ち上がり中々ペースがつかめない時間帯が続いた。
汗でボールが滑るのかノックオンやパスミスが目立ち、スクラムでの反則やラックでターンオーバーされるシーンもあった。

それでも、5分には敵陣10m付近でスリランカがボールを持ち込んだラックをめくり上げてターンオーバー。素早く右展開してCTB今村雄太がブレークした後、さらにラックから順目に攻めて、WTB宇薄岳央が余裕を持って走り抜けて先制。

ところが、続く8分には今季のA5N4試合で最も早い時間帯での失点となる逆転トライを、ここまで3戦勝ちなしのスリランカに奪われてしまう。

スリランカ陣22m付近まで攻め込んだ日本が今季取り入れているフラットなライン攻撃に移行したところで、SOショーン・ウェブからCTB今村へと渡るはずだったパスをスリランカWTBが狙いすましたかのようにインターセプトして、そのまま80mほどを独走。トライの後のコンバージョンも決まって、前半9分の段階とは言え、日本はすでにトップ5残留の可能性がほぼなくなっていたスリランカに対して5-7でリードを許すという、何とも歯がゆい立ち上がりとなってしまった。

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これまでの3試合でも、香港戦の香港WTBローワン・バーティーの100mトライや、WTB上田泰平の決死の戻りでトライを防いだもののカザフスタン戦でもインターセプトから独走されるなど、BKのフラットなパスがピンチを招く場面はたびたびあった。

「安易な飛ばしパスとかが多いんで、ちょっと気が利くWTBだったら絶対狙われる」(この日、代表 60キャップを記録したWTB小野澤宏時)
そんな危惧が現実となって、リードを許した日本。

「勝敗自体はまったく心配していない」
試合前にジョン・カーワンHCがそう語っていたとおり、いくら苛酷な条件とはいえ、世界ランキングを13位にまで上げた日本が今季A5Nトップ5に昇格したばかりのスリランカにアップセットを食らう可能性はほぼゼロに等しかったが、それでもスリランカがリードしたままの時間帯は意外なほど長く続いた。

「前半20分間は厳しい状況だったけど、みんな良く我慢していた」(FL菊谷崇主将)

前述のとおり、汗でボールが滑ることも影響してハンドリングエラーが多く、スクラムでの不可解なジャッジや明らかなラックへのスリランカの倒れ込みを見逃すレフリングへの対応に時間を要した面もあった。

「スクラムで何だかわからないけど反則取られて、チームに迷惑をかけてしまった」とは、この日は「1番」として先発した畠山。

本来右PRの畠山を左で先発させたのは、今後試合中にケガ人が出た場合などに、畠山が左のバックアップにも回れるように経験を積ませたもの。
その畠山は後半は右PRで先発していた藤田望に代わって川俣直樹が入ったことで、定位置である右に回った。

「後半は3番に戻ったんで思いっきり行かせてもらいました」
そんな畠山の言葉どおり、我慢の前20分間を過ぎたあたりから、スリランカの無秩序なプレーや不可解なレフリングにも対応し始めた日本は、前半25分にFL菊谷主将、PR藤田、SOウェブの突破などでスリランカゴールに迫った後、最後はラックからFLタウファ統悦が飛び込んで逆転。

以降、CTBアリシ・トゥプアイレイの5トライをはじめ、終わってみれば計14トライの90得点を奪う圧勝ぶりでアジアでの有終の美を飾った。「アジア5カ国はW杯に向けてのファーストフェイズ。UAE戦ではいいBK攻撃ができたし、今日は最初の20分よく我慢した後は落ち着いてプレーできていた。いいかたちでセカンドフェイズであるPNC(パシフィック・ネーションズカップ)に進んでいけます。いますぐPNCの試合やりたいくらい」(ジョン・カーワンHC)

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「宮崎合宿では、特にワイドな攻めの部分と、アジアではなかなか試せなかった新しいDFシステムを、課題として取り組んでいきたい」

4月21日に羽田を飛び立ってから1ヵ月強。厳しい環境での試合、そして試合が続いたアジア・中東遠征だったが、チームの一体感は確実に高まり、W杯へつながるポジティブな課題が見えてきたという意味でも、意義ある過酷なアウェーツアーだったことは間違いないだろう。

5月22、23日にいったん解散した日本代表は、再び40人にスコッド数を増やしたかたちで、6月1日からの宮崎合宿に臨む予定となっている。

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