マッチリポート
トーナメント表


慶應義塾大学 7-38 帝京大学

【二回戦/2010年12月26日(日) at 東京・秩父宮ラグビー場】

帝京がリベンジを果たし、慶應を1トライに抑え準決勝へ

昨年優勝の帝京は今月4日の対抗戦で慶應に35-20で敗れたが、今回の選手権では前への激しいタックルと持ち味のFWを全面に出し、慶應の速攻を封じ込め、リベンジを果たした。
この日の秩父宮ラグビー場は晴れ、寒風吹きすさぶ中14,000人のファンが詰めかけ白熱の二回戦を向かえた。

前半、帝京のキックオフ、開始後まもなく、帝京にとってチャンスがやってくる。開始後2分、敵陣ゴール前10m中央モールコラプシングよりPKを得た帝京はスクラムを選択、強力FWのプレッシャーに耐えきれず、慶應がゴール前5mでコラプシング反則。この日FWに拘る帝京は再度得たPKを続けてのスクラムを選択、帝京はここぞとばかりにプレッシャーを掛け、慶應のコラプシングの反則を誘い、3分に帝京がペナルティトライを得て、10番森田佳寿がゴールも成功し先制。(7-0と先制)

前半8分、帝京が敵陣22m左サイドで得たPKを、10番森田がぺナルティゴールを決める。(10-0)
前半15分、帝京は敵陣ゴール前5mスクラムから、慶應がスクラムのプッシュを警戒したところ左サイドに展開し、8-12とクイックで繋ぎ、11番富永が左隅インゴールに飛び込みトライ。(15-0)
前半27分、帝京PKより10番森田がペナルティゴールを追加。(18-0)
前半32分、慶應自陣5mのマイボールスクラムに対して、帝京がスクラムでプレッシャーを掛けスクラムからのこぼれ球を帝京6番ツイが押さえトライ。(23-0)
慶應もBKの早い展開で攻撃を仕掛けるが帝京の前へのディフェンスによりミスが重なり得点に繋げることが出来ない。
前半37分、慶應は連続攻撃から敵陣22mのラックからSHがスペースの空いた5番村田に繋ぎ、そのままゴールポスト下にトライ。10番和田がゴールも決め(23-7)でハーフタイム。

16点差で前半を抑えた慶應のキックオフより後半開始、この時点でまだ慶應逆転のチャンスも有り、また後半は慶應が風上に廻る。
帝京は後半も徹底したFWでの攻撃を進めていく。
後半7分、帝京がスクラムのコラプシングより得たPKからタッチキックで前進、この敵陣22m左ラインアウトからのモールをそのままゴールラインまで押しこみ6番ツイがトライ。(28-7)
後半20分、帝京はゴール前中央左で得たPKをFWがモールでインゴールまで押込み8番柴田がトライ。(33-7)

帝京はFWでの攻撃を緩めずボールキープを図り、時間の経過とともに慶應の焦りも見え始める。帝京の前への激しいタックルは最後まで緩まず、慶應のチャンスを絶ち続ける。
後半39分、慶應の最後のチャンスとなるかと思われたBKの連続攻撃を慶應陣10m付近での12-11のパスを帝京14番鬼海がインターセプトし、そのままゴール右隅に駄目押しのトライ。38-7にてノーサイド、帝京が準決勝に駒を進めた。

帝京はチームの強みであるFWを全面に出し、昨年優勝をモノにした前へのディフェンスが戻ってきた。この試合はチームの大きな自身に繋がり、正月2日の東海との準決勝も激しいゲームとなるだろう。慶應は帝京に対抗戦で勝ったことにより、この日は受け身に回ってしまい慶應らしさが出せなかった点は悔やまれる。(高野敬一郎)

慶應義塾 7-38 帝京 慶應義塾 7-38 帝京 慶應義塾 7-38 帝京 慶應義塾 7-38 帝京 慶應義塾 7-38 帝京
会見リポート
 

慶應義塾大学の林監督(右)と竹本キャプテン
慶應義塾大学の林監督(右)と竹本キャプテン

慶應義塾大学

○林 雅人監督
「一度対抗戦で戦っている帝京さんは、地力があると理解していました。選手の力を今日という日に発揮できるようリードできなかったことがとても残念です。スクラム、セットプレー、ブレイクダウン、いずれの場面でも厳しい状況で、それなりの点数になったと思います。選手は一年間良くやってくれたのに、自分の力不足で勝たせてやれず、残念です」

──後半の指示は?
「前半、トライ数が3対1で、アタックしている時間から考えると良く獲ったし、ギリギリひっくり返せる可能性があると感じていました。後半は風上で、帝京さんは対抗戦の時よりディフェンスが前に出てきており、そこでわざわざランすることはやめようと指示しました。スタイルに固執するのでなく、勝つためのスタイルがあると。ただ、後ろへキックを使った場合、自分たちの手にボールがないので、ペースが落ちてしまい、どう取り返すかが課題でした」

──後半、先に点を取られたが?
「特にそこから展開の指示は出しませんでした。ブレイクダウンの状態が良くなく、セットピースとブレイクダウンの時間が長く、ギアを入れ替えた効果は感じられませんでした」

○竹本竜太郎キャプテン
「今日は、監督とやってきたラグビーをやろうと臨みましたが、ブレイクダウンでやられました。自分たちの持ち味を出せた部分もありましたが、力が足りなかったと思います。後輩たちに託すしかないので、卒業までにできることをやっていきたいと思います」

── 一度勝った相手だったが?
「接点の激しさが違いました。対抗戦の結果は関係ありませんでした」

──帝京のFWの圧力は?
「もともと僕たちより身体が大きくて、強いと見ていましたが‥‥、強かったです。しっかり1対1でやりたかったが、やられてしまいました」

慶應義塾 7-38 帝京 慶應義塾 7-38 帝京 慶應義塾 7-38 帝京 慶應義塾 7-38 帝京 慶應義塾 7-38 帝京
 

帝京大学の岩出監督(右)と吉田キャプテン
帝京大学の岩出監督(右)と吉田キャプテン

帝京大学

○岩出雅之監督
「一言、選手の頑張りに尽きると思います。タックルで勝負しようと臨みました。最終的に大差がついたのは、これまで、対抗戦で厳しく教えてもらったことを学生がしっかり受け止めて、たくましく出してくれたからだと思います。タックルとFWで相手の嫌がることをしっかりやろうと臨みました。対抗戦はチャレンジでしたが、選手権は勝負です。周りへの感謝とともに選手を讃えたいと思います」

──ピークはじっくり?
「ピーキングには3つあります。一つは技術。9月から10月は失敗していいからやってみろと、完成よりチャレンジでした。二つ目は体力的なこと。4年間かけてやってきたことは戦略とかみ合わせれば裏切られないということです。三つ目は心。3年前、早稲田に対抗戦で勝ったときは、私も未熟でしたが、達成感があって、その後、気持ちが抜けてしまう経験をしました。帝京は礎がやっとできた若いチームです。一旦下がってから上げるのは困難ですので、ワンサイクルでやっています。もちろん、対抗戦も勝ちたいです。今年のチームは苦しかったし、学生もかなり溜まっているものがあったと思うし、一番厳しかったが、だからこそ、ここへきて帝京としての心の部分が上がってきたと思います」

──ブレイクダウンは?
「判断力が上がってきました。やみくもに入っていた、ディフェンスでのゲートオフサイドが対抗戦で目立ちました。時間がかかりましたが、まずはファーストタックルできないと、それからいつも良いタックルができるわけではないので、そのタックルの状態から15人が考えて次のディフェンスに移れるようになりました」

──次は、去年の決勝の相手だが、モチベーションは相手のほうが高いのでは?
「(吉田キャプテンの肩を叩いて)(その心配は)もう必要ないんじゃないかな? 決して我々は受けに回れる立場ではないし、対抗戦の厳しさを良い財産として、慶應さんの魂も受け継ぎ、油断はないと思います」

○吉田光治郎キャプテン
「対抗戦で負けた相手にリベンジしようと3週間準備してきたことを、すべてが良い方向に出たことに満足しています。慶應さんの粘りに対してしっかりできたことは、自分たちのとても大きな自信になりました。関東学院さん、慶應さんに勝ち、準決勝、決勝に向けてとても良い勝利だったと思います」

──ピークはじっくり?
「対抗戦に関しては、選手起用も、目指すラグビーもチャレンジが多く、自分たちがどこまでボールを動かせるかチャレンジでしたが、相手が上回っていることが多く、とても苦しみました」

──後半は無理にアタックせず、ボールをキープしたが?
「風下だったので、ボールポゼッションを上げないといけないと感じていました。キープして時間を使うことで、相手のあせりを生み出せたと思います。点を取られないラグビーを心がけました」