マッチリポート
トーナメント表


明治大学 19-12 拓殖大学

【1回戦/2009年12月20日(日) at 埼玉・県営熊谷ラグビー場】

冬の強い北風がプレーヤーを悩ますのが熊谷なのだが、この日は微風。いつもは力強くなびく協会旗も頭をたれたまま午後2時を迎えた。穏やかに晴れ渡った青空のもと、スタンドには多くのファンが集まった。

スコアボードを背に拓殖のキックオフで試合が始まる。2分。明治がまずチャンスをつかむ。自陣からバックス展開、CTB衛藤が大きくゲイン。ゴール前5mのスクラムを得るもアーリーエンゲージで最初の好機を逃す。立ち上がりからFWのボール争奪戦は激しい。また、両チームともボールを獲得するとBKへ素早く展開、ディフェンス面でも激しいタックルの応酬があるなど、スリリングな場面が続く。

均衡を破ったのは明治。7分。スクラムから供給されたボールをSO田村がキック。拓殖の蹴り返したボールを田村が再び高く蹴り上げる。ボールをうまくとった明治が素早く展開すると拓殖はハイタックルの反則。明治はボールをタッチに蹴り出し、ゴール前5mのラインアウトからトライを狙う。ボールをキャッチした明治はモールを押すと見せかけ、ボールを投入した2・伊吹へ素早く戻すとそのままゴール左隅に飛び込んで先制。ゴールキックはポストを叩いて外れるも5-0とまずリード。
明治の攻撃は続く。12分、FW・BK一体の連続攻撃に拓殖ディフェンスは戻りきれずにオフサイドの反則。明治は再びラインアウトからトライを狙う。今度は一転してモールを力強く押し込みゴールラインを越えるかと思われたが、レフリーはモールの前方のプレーヤーにオブストラクションがあったとの判定。

25分。明治は拓殖のラインアウトを奪うと右へ展開。WTB小泉がラインブレイクし、ラックのボールを素早く出すとSO田村が左へタイミングのよいパスをFL西原へ。さらに大外に走り込んだHO伊吹へラストパスを送るとこの試合二つ目のトライを再び右隅に決める。SO田村は慎重にゴールキックを成功させ、12-0とする。

時計が進むにつれ、拓殖が持ち前のボールをつなぐランニングラグビーを見せ始める。明治も負けじとボールを奪って切り返すなど一進一退の見応えのある攻防が続く。
32分。拓殖のキックに明治がレイトチャージの反則。ボールをタッチに蹴り出しゴール前5mでのラインアウトを得た拓殖。ボールがやや乱れ後退したが明治が再び反則を犯す。拓殖は速攻でゴール寸前に迫るとラックサイドを9・ニコラスが突いてトライ。12-7として前半を終えた。

風は相変わらず強まる気配がないまま後半が始まる。6分。拓殖がラインアウトで反則を犯すと明治はまたもタッチキックでラインアウトからの攻撃を選択。モールを10m押し込みゴールラインに達するがトライは認められない。その後の5mスクラムからもフォワードにこだわる明治が再三に渡ってボールをゴールへ持ち込むも、拓殖の執念のディフェンスがなんとか持ち堪えるという展開が繰り返された。この場面、最後は明治がモールでオブストラクションの反則を取られチャンスを逸する結果に。
リーグ戦では後半に強いところを見せていた拓殖。5点差は想定内だったはずだが、明治もなかなか疲れを見せない。お互いチャンスを作るも反則で得点にまで至らない場面もあり、あっという間に30分が経過。次に得点をあげたほうが勝利に近づくのではと思われる時間帯となって、試合は大きな動きを見せる。

グラウンドほぼ中央の明治ボールラインアウト。拓殖側にボールがこぼれると、CTBセージュが一気に加速、明治陣22mラインを越える。拓殖のフォローの選手がやや遅れたところ、明治のディフェンスが5人6人と取り囲むように行く手を阻む。セージュがたまらずに倒れるとボールを奪った明治が逆襲へ。
ボールをつないで相手陣深く攻め込むと途中からPRに入っていた17番榎が明治らしい力強い前進を見せる。ここから再びFWにこだわる明治。モールを作ってはゴールまで押し込むも、レフリーの手が大きく突き上げられることはない。いったい同じ場面を何度見たことか。

時計は33分。拓殖ゴール前の5mスクラム。スタンドでは誰もが、明治は意地でもFW勝負と見ていたが、ボールはあっさりとSH秦からSO田村へパスされる。次にボールを受けたCTB衛藤がトリッキーな動きを見せ、わずかにできたスペースにWTB川口が走り込んで短いパスを受ける。川口のスピードに拓殖の必死のタックルも届かずゴールポスト近くにトライ。ゴールも成って19-7。息を呑む攻防は明治のものとなった。

残り時間はわずか。拓殖はあきらめずに攻撃を仕掛ける。自陣深くからのラインアウトからバックスに展開すると再びCTBセージュが快走を見せる。明治陣22m、必死に追走した明治ディフェンスが足に絡むとセージュはボールをこぼして万事休す。
12点差のまま時計は40分を越える。ここから3分間、拓殖は意地の攻撃を続けると、最後はゴール前、相手ボールのラインアウトを奪うとゴールになだれ込みトライ。最後にボールを押さえたHOキャプテン吉田が大きく右腕を突き上げた。

最終スコアは19-12。接戦となったものの終始リードを保った明治が伝統校の底力を見せた結果と言える。拓殖も関東大学リーグ戦で強豪に揉まれた力は確かなもの。個性豊かな選手もそろって魅力的なチームであった。

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会見リポート
 

拓殖大学の遠藤監督(左)と吉田キャプテン
拓殖大学の遠藤監督(左)と吉田キャプテン

拓殖大学

○遠藤隆夫監督
「前半、想定内の点差で後半勝負と考えていましたが、こちらの攻撃時間が短く、明治さんの足を止められなかったです。うちのパターンに持ち込めなかったのが敗因です。ブレイクダウンで負けているところが多く、攻撃の継続を許してしまい、逆転できると考えていたのですが時間がなくなってしまいました」

──セージュ選手が素晴らしい走りを見せる場面もあったが。
「裏に出たプレーについては、サポートが遅れてしまったということと、セージュ自身もまだ低いタックルに対応できていないところがあるので、今後の課題だと思います」

──両チームともブレイクダウンでの反則が多かった。
「立ってプレーしているのか、寝てしまっているのかというところだと思います。確実に立ってプレーができるというスキル、パワーをつけないと実力が上のチームには勝てないですね」

○吉田竜二キャプテン
「明治のコンタクトの激しさに自分たちは受けに回ってしまい、自分たちのやりたいことを出せる時間が少なすぎました。ペナルティも多くてやりたいことをできずに負けたという感じです」

──明治の足を止めたかったということですが
「後半20分には自分たちのペースにもって行きたかったんですが、マイボールをキープできていなかったので、相手の足が止まる時間が遅かったなと感じました」

──リーグの強豪と比べて明治の印象は?
「対抗戦でもリーグ戦でもやはり上位校は強いと思います。そんな中では明治さんは自分たちと同じ5位ですので、そんなに力の差を感じずに戦うことができました」

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明治大学の吉田監督(左)と西原キャプテン
明治大学の吉田監督(左)と西原キャプテン

明治大学

○吉田義人監督
「大学選手権は負ければシーズンは終わるということで、自分たちが今年やってきたことを前半からしっかりプレーしようということで試合に臨みました。12月6日の早稲田との試合、とくに前半の闘志を前面に出してトライを取れたということを選手が一人ひとり、その気持ちを持って試合に臨めるかというところが今日のポイントだと考えていました。戦略的にはFWが主導権を握るために、相手を圧倒できるように準備し試合に入りました。
拓殖さんもさすがにリーグ戦で強豪相手に戦ってきたチームだけに簡単にはトライを取らせてもらえなかったですね。ゴールラインを越えてあとはグラウンディングするだけというところまでいきながら、それがなかなかできなかったところで波に乗れなかったかと思います。そんな中でもバックスが練習をし続けてきたプレーが、拮抗した展開の中でトライにつながって、成長を感じました。まだまだボールの継続であったり一人ひとりのプレーの選択などは修正改善していかなくてはならないところです。とにかく勝てたということは次のステップに進めるということで良かったと思っています」

──ゲームプランのできたところ、できなかったところは。
「FWで崩していきたいというプランを持っていましたが、とくにラインアウトからのモールでトライを狙っていくプレーはできていたと思います。ただ、オブストラクションで結果的にはトライにはなりませんでしたが…。ボールをしっかり継続していけば相手ディフェンスにギャップができると考えていましたが、フィニッシュのところでミスが出たり、精度の高い継続というわけにはいかなかった」

──細かなところでミスが目立ったが、次に向けての修正点は。
「基本練習については反復練習を積んでいますが、相手のプレッシャーが厳しい中で、もっともっとボールを大切にしていかなくちゃいけないというところを、再度徹底していく必要があるなと考えています」

──拓殖には強力な外国人選手がいたが。
「体格的なハンディはありますが、我々も一対一の接点のプレーにはこだわりを持って強化していますので。拓殖さんには一人でトライを取りきれる選手がいますので、ブレイクされた後にもしっかりと連携をとって止めていこうとは言ってありました。一週間前にはトップリーグの三洋さんに出向いて、より高いレベルの選手から接点でのプレーを学ぶという練習もしてきました」

──トリッキーなサインプレーもありました。
「FWが劣勢な状況の中でもBKで一発でトライを取りきれるように練習を積んできました。あの試合のあの状況の中で取りきれたということにはバックスの成長を感じました。タイミング的にもスキル的にもパーフェクトなトライでした」

──二つのトライをとった伊吹選手について。
「監督に就任したときから素晴らしい選手との印象は持っていましたし、最終学年ということもあって、勝ちたいという気持ちも強く、信頼をしています。活躍してくれてよかったなと思っています。早明戦の時には怪我をして退場してしまったのですが、しっかりと直してきてくれました。チームにとっては大切な選手です」

○西原忠佑キャプテン
「今日の試合は7対3くらいの割合で明治が攻めている時間が多かったので、それを少しでもスコアにつなげることができたことが勝因だと思います。ただ、自分たちのラグビーをそう簡単にはさせてもらえなかったです。ポンポンと2本取れたあとは、攻めている時間が長かったこともあって軽いプレーがあったりミスが出てしまったことが少ない点差の原因だったかと思います」

──次の試合に向けての課題は?
「素直に今日の勝利は喜んでいいと思うんですが、ブレイクダウンに寄るスピードをもうワンテンポ早くしたいです。次の相手は関西のチャンピオンを争うレベルの高いチームですから、そこがより大事かと思います」

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