マッチリポート
トーナメント表


筑波大学 22-29 東海大学

【1回戦/2009年12月20日(日) at 東京・秩父宮ラグビー場】

東海大、薄氷の勝利
リーグ戦を3連覇し、念願の「大学日本一」を狙う東海大は大型のFWを入念に整備して秩父宮に登場した。マイケル・リーチに続きHO木津を日本代表へ育て上げ、大学レベルでのFWの突破力は抜きん出ている。対する筑波は強力FWの帝京を破るなど対抗戦を盛り上げ、結果3位で選手権に進んできた気の抜けないチーム。この両チームが似ているのは、4年生が少なく、メンバーは3年生以下が主体。東海大はLO三上、SO阪本と1年生が2人。筑波はHO彦坂、FL鶴谷、No8山崎、CTB中鶴、WTB彦坂となんと5人のフレッシュマンが出場した。

東海大の立ち上がりは、一人ひとりのコンタクトの強さから強烈なタックル、そしてラックサイドから広いスペースまでの安定したディフェンス網が際立った。筑波のアタックをしっかりと受け止め、チャンスと見れば思い切って前に出てボールを奪う。自陣でも15人が決してバランスを崩さず守り続け、筑波のハンドリングミスには迷わず前でボールを奪い、ディフェンスが寄ってくれば外への展開と見事な判断。
12分、19分とWTB宮田が奪った連続トライは全てディフェンスからの切り替えし。SH鶴田、FB豊島のディフェンスにおけるチームのコントロールは的確。FLマイケル・リーチ、No8マウも強烈な突破だけでなく、冷静にタイミング良いパスでチーム15人をグラウンド全体に走らせるなど、この大会のスタートとしては万全な立ち上がりと思えた。(前半3-15)

しかし、後半、筑波の堅く小さくまとまったモール攻撃がこのゲームに火を着けた。6分、相手ゴール前でのラインアウトから作ったモールにBKまでが参加して粘り強く押し切り、HO彦坂がトライ。13分、今度は東海大が強力なラインアウトモール。長身のLO三上、FLマイケル・リーチの高さは制空権を圧倒。ボールキャッチから縦に長いモールを組んで前進し、HO木津がトライを返す。(8-22)
そして後半21分、東海大はNo8マウをインパクトプレーヤー前川に替えて逃げ切りを図るが、最後の20分をペースダウンし、トーナメントの怖さを味わうこととなる。

筑波は23分、再度ラインアウトモールを鋭く押し込み1年生HO彦坂が2つ目のトライで追い上げる。(15-22)
さらに終了間際の38分には、テンポ良くボールを動かし、ラックを連取して前進。最後は、1年生WTB彦坂が力強い突進から東海BKのタックルを振りきってトライ。トライ数も並んでゲームは振り出しに戻った。(22-22)
この激闘はなんと後半47分まで続き、最後は目を醒ました東海大FWの突進から1年生LO三上がゴールに飛び込んで決着をつけた。(22-29)

1年生の思い切った判断、1年生とは思えない力強さが、このゲームを全く予想外の展開へと引き込み、最後の最後まで勝利の女神を迷わせた。192cmの東海大LO三上はラインアウトにおける際立つ獲得力だけでなく、ブレイクダウンでも激しく身体をぶつけ続け、強い執念でチームの勝利を呼びこんだ。この試合に出場した両チーム7人のフレッシュマンの活躍は、選手権1回戦の秩父宮を大いに盛り上げ、トップリーグに負けない大学ラグビーの魅力を集まった観衆に強く印象付けた。(照沼 康彦)

筑波大学 22-29 東海大学 筑波大学 22-29 東海大学 筑波大学 22-29 東海大学
会見リポート
 

筑波大学の古川監督(右)と梅田ゲームキャプテン
筑波大学の古川監督(右)と梅田ゲームキャプテン

筑波大学

○古川拓生監督
「ちょっとまだ、整理できていないのですが‥‥。特に、前半は東海さんの懐の深いラグビーというか、持ち込んだときにカウンターをくらうラグビーをされたと思います。ゲームを終わって考えてみると、スコアで筑波は勝っていこうと、5点と3点を積み重ねて勝負しようと準備してきました。結果的にスコアで上回れなかったことは残念ですが、選手たちは本当に良くやってくれたと感じています」

──どんなゲームプランで?
「うちは対抗戦を含めて、トライを量産するチームではないし、東海さんはリーグ戦3連覇を誇る強いチームですので、そんなにトライを獲れるとは思いませんでした。FWで圧力を掛けるのがうちの強みですので、それがグラウンドでどれだけ出せるか、PG、コンバージョンも凄く大事でした。東海さんを分析するとモールとバック3のトライが多かったので、東海さんが5点を獲る中で、こちらは3点、7点を積み重ねていこうとプランニングしていました」

○梅田紘一ゲームキャプテン
「前半は、少し相手のペースで、ディフェンスからターンオーバーで一気にトライまで持っていかれたのが非常に大きかったと思います。後半は風上になって、ブレイクダウンの強さやアタックなど、すべてを出し切れたと思います」

──強いFWに対抗できたが?
「対抗戦の後半はうちもモールでトライが獲れ、強みと思っていましたので、パターンとしてモールも選択肢のうちでした。もちろん、モールトライは狙っていました。1対1で上回れなくても、数で上回れば獲れると感じていました」

筑波大学 22-29 東海大学 筑波大学 22-29 東海大学 筑波大学 22-29 東海大学
 

東海大学の木村監督(右)と菅生バイスキャプテン
東海大学の木村監督(右)と菅生バイスキャプテン

東海大学

○木村季由監督
「今日はありがとうございました。ご覧のとおりの試合で、本当に自分たちがやろうとしたことがここまでできなかったのは、今シーズン一番でした。筑波さんの厳しいプレッシャー、ひたむきなプレーに自分たちのやりたいことをやらせてもらえませんでした。80分で修正できなかったことも大きな反省点です。トーナメントだから最終的に勝てたことは良かったですが、2回戦が今日と同じでは厳しいと思いますので、もう一度やり直します」

──前半、2つトライを獲って、いけると感じたのでは?
「特にそういうことはないと思います。前半のエリアマネジメントが全然できていなくて、あれだけミスしてこれだけで良く抑えていたという感じでした。きっちり修正するしかありません。決してゆるんでいたわけではありません」

──最後の時間帯は?
「そうですね‥‥。しびれますよね。あの時間帯。敵陣に入ったのが二度目でしたから、良く落ち着いてあわてずに獲りきったなと思います。あそこに練習で時間をかけているところでしたから、うまく我慢できたと思います」

○菅生健人バイスキャプテン
「やろうとしたことがあまりできず、ディフェンスも下に入ろう、下に入ろうという意識はあってもうまくいかず、アタックも前に出られない試合でした。次は修正したいと思います。練習でできないことは試合でできるわけがないと、つくづく感じさせられました」

──うまくいかなかったわけは?
「立ち上がりからどんどん行こうとしましたが、後半、先手を相手に取られ、どんどん相手のペースになってしまいました」