マッチリポート
トーナメント表


帝京大学 17-17 関東学院大学

【1回戦/2009年12月20日(日) at 東京・秩父宮ラグビー場】

好ゲームで引き分けも、トライ数差で帝京大が2回戦へ

対抗戦グループ4位の帝京大、リーグ戦グループ2位の関東学院大は、両チームともそれぞれ対抗戦優勝の早大、リーグ戦優勝の東海大と実力差はなく、今年の大学ではトップレベルの実力を持つチームであり、1回戦では注目の一戦である。

平均体重106kgとトップリーグチーム並みの帝京大の大型FWに対し、関東学院FWの平均体重は98.8kg。関東学院FWも大学レベルとしては決して小さくはないのだが、帝京大FWに対し互角の戦いができるのか? また、今シーズンはケガのため、これまでの試合出場はごくわずかしかない帝京大の司令塔SO徳永が、大学選手権でどの程度、復帰・活躍できるのか? 早大が1回戦を勝ち上がった場合、2回戦で早大と対戦するのは昨年度の決勝対決の帝京大か、あるいは、2007年まで6年連続で早大と決勝対決をした関東学院大か? と、みどころはいっぱいである。

試合は激しいブレイクダウン、両チームの好タックルの連続で、締まった試合展開となった。
前半9分、関東がFL安藤のカウンターアタックからの2度にわたる好走で敵陣ゴール前まで進み、PKを得て、PGをSH大島が決めて関東学院が3-0とリードした。しかし、13分には帝京大が敵陣22m付近のスクラムからFLツイ-SO森田と関東のディフェンスをかわし突進、さらに2次攻撃から出たボールを再びFLツイがゴールポスト下に持ち込みトライ(ゴール成功)し、帝京大が7-3と逆転した。両チームの高い集中力での好ディフェンスが続いていたが、27分、帝京大はWTB富永がハイタックルでシンビンとなり、その後10分間を14人で戦うこととなった。関東学院もこの好機に得点を取ろうと敵陣に攻め込むが、帝京大もディフェンスをよく踏ん張り、前半は関東学院をノートライに抑え、7-3のスコアのままで前半を終えた。

後半には帝京大はSOを森田から徳永に替えたのが功を奏し、後半1分に敵陣に攻め込むと、2次攻撃、3次攻撃とSO徳永がよくボールを生かし、最後は徳永からのパスを受けた右WTB伊藤が右隅にトライ(ゴール不成功)し、帝京大が12-3とリードを拡げ、このまま勝負が決まるかと思えた。
しかし、関東学院もよく守り、よく攻め、後半21分には中盤でのピッチを横に広く使った左右への展開から、バックスにライン参加したHO渡邊から飛ばしパスを受けたFL安藤が帝京大ディフェンスを3人、4人とかわしてそのまま独走してトライ(ゴール成功)、帝京大12-10関東学院と点差をつめ、試合の行方はわからなくなった。さらに、帝京大FLツイがシンビンで、関東学院が人数的な優位となった後半26分には、ゴール前のラインアウトからのモールにバックス選手まで参加して押し込みトライ(ゴール成功)をとり、帝京大12-17関東学院と逆転した。
その後の再三の関東学院のトライチャンスを凌いだ帝京大は、FLツイがシンビンから復帰した後、敵陣ゴール前でトライにこだわった攻撃を続けるが、体格的に劣る関東学院FWが良いディフェンスを続け、帝京大もなかなか得点はとれず、ロスタイムに突入した。3分のロスタイムもそろそろ使い切ると思われたころ、帝京大がゴール前のペナルティキックからFWで攻め込んだボールを、FLツイからパスを受けた右WTB伊藤が右コーナーフラッグ脇に飛び込んだ。伊藤選手はタックルを受け、体はコーナーフラッグに触れながらも、ぎりぎりインゴールにタッチダウンするプレーで、微妙な判定となったが、平林主審によりトライが認められ(ゴール不成功)、17-17の引き分けでのノーサイドとなった。

大会規定によりトライ数の多い帝京大が2回戦進出となったが、両チームとも最後まで集中力を欠かさないディフェンスが続き、互角に戦った好ゲームであった。
2回戦で帝京大は早大と対戦することとなったが、2回戦もこの日のような好ゲームとなることを期待する。(正野雄一郎)

帝京 17-17 関東学院 帝京 17-17 関東学院 帝京 17-17 関東学院 帝京 17-17 関東学院
会見リポート
 

関東学院大学の桜井監督(右)と安藤キャプテン
関東学院大学の桜井監督(右)と安藤キャプテン

関東学院大学

○桜井勝則監督
「今日は素晴らしいコンディションの中、大勢のファンの方においでいただき、素晴らしく強い帝京大学さんと良いゲームができたと思います。結果としては引き分けで、我々は次のステップに進めなかっただけと捉えています。ゲーム内容としては、あれだけ大きなFWに対して、そうとうやられると覚悟していましたが、ラインアウトもほぼ完璧にプランどおりできたと思います。最後はトライを獲られて同点にされたのですが、あそこに行く過程にチームとして弱さが出たと思います。残りのロスタイムに相手陣で試合できれば良かったのですが、自陣ゴール前に行かれたのは修正すべきところです。だが、我々としては『関東復活』ということでいいのかなと感じています」

○安藤泰洋キャプテン
「今日の試合は、結果は引き分けて、トライ数差で負けたんですが、自分でも、どこが負けたか良く分からなくて‥‥。まあ、でも、去年の負けと違って、ひたむきにできたので、関東ファンも帝京ファンも、悔しい気持ちを出したり、感動の涙を流してくださったりしたのでゲーム的には良かったと思います」

──帝京FWにスクラム、ラインアウトで互角以上に戦ったが?
「ラインアウトに関しては、色々な試合を見ながら作戦を立て、スクラムは小さい分、皆のまとまりで勝負すると臨みました。ゲームに関しては、自分たちがやってきたことを信じて、結束して、だから五分以上の試合ができたと感じています」

──相手のウィングがいない時間帯もFWで攻撃したが?
「特別、シンビンは意識していませんでした。後半途中からゲインできると、皆、体で分かり始めて一気に追い上げて行けました」

──どこが負けたか分からないとおっしゃったが?
「悔しいけれど、後悔はないです。夏はインフルエンザで試合ができず、8月31日からずっと朝も6時半から練習してきて、自分たち選手はやれることをすべてやりきったので、悔しいけれど後悔はありません。ブレイクダウンは間違いなくこっちのほうが行けていると8人全員が感じていました」

──最後に同点のトライの判定が出る前は?
「‥‥まあ、‥‥やられたって感じじゃないですか」

帝京 17-17 関東学院 帝京 17-17 関東学院 帝京 17-17 関東学院
 

帝京大学の岩出監督(右)と野口キャプテン
帝京大学の岩出監督(右)と野口キャプテン

帝京大学

○岩出雅之監督
「今日の相手の関東学院さんとは、多分、交流戦時代から、少なくとも僕が覚えている限り、勝っていない相手です。学生以上に、関東さんの躍進に挑戦し、打ち砕かれた経験から、今日は思い切って我々の成長を実感したいと臨んだゲームでした。最後の最後は、色々な思いでしたが、過去に多くの監督さんがおっしゃったように、私も信じる気持ちで見つめていました。内容は帝京のブレイクダウンに人数をかけて来られて、その中で力で再ドライブをかけられ、少し対応ができませんでした。リーグ戦の強み、弱みを学びましたが、特にブレイクダウンを学ばせてもらいました。もう一度、ゲームマネジメントをしっかり学生と打ち合わせしたいと思います。ノックアウトゲームですので、このゲームを大きくプラスと考えて、関東学院さんの分も、今日の思いをすべて次のゲームに全力で注いでいきたいと思います」

○野口真寛キャプテン
「本当に今日のゲームは厳しいゲームでした。関東さんのブレイクダウンに自分たちが負けたことから、クリーンボールが出せず、今日の展開になりました。しかし、これまでの試合の経験と130名の部員の思いが、粘り強さをしっかり発揮できた試合にしてくれたと思います。関東さんのゲームで良い経験をさせてもらいました。凄い力になったと思います。次の試合は関東さんの分もがんばります」

──最後の同点トライの場面では?
「最後は、インゴールにどれだけ近いか、エリアを獲得しつつ、判断してFWで突っ込んでモールにしようと考えました」

──判定の瞬間は?
「‥‥ドキドキしました」

──ショットを狙ったのは?
「あと10分ありましたので、得点を狙いました。(岩出監督が『その前のPGを狙うのが定石で、そこが、ゲームマネジメントをもう一度打ち合わせるという意味です』とコメント)」

──FWで苦戦は予想外では?
「スクラムに関してはお互いがエンゲージのタイミング、高さが合いませんでした。モールも自分たちの練習不足だと感じました」