日本代表 46-8 カナダ代表   日本代表 46-8 カナダ代表   日本代表 46-8 カナダ代表   日本代表 46-8 カナダ代表

マッチリポート
リポビタンDチャレンジ2009


日本代表 46-8 カナダ代表

【2009年11月15日(日) at宮城・ユアテックスタジアム仙台】

対カナダ戦最多得点で仏W杯からの進化を示したJAPAN

2019年のワールドカップ日本開催が決定した後、初のテストマッチ。しかも‘07年フランスワールドカップで劇的なドローを演じたカナダ代表が相手。世界ランキング13位のカナダに対し、同14位のJAPANが挑む形ではあるが、TLの充実・PNCの経験・ホーム戦とあって、勝利への期待と現在の日本代表の実力がどのぐらいのものであるのかを見極めたいファンの関心を集めての第一戦となった。

カナダ15番 プリチャードのキックオフで試合開始。日本代表の不用意なキックオフサイドからカナダ15番 PGを狙うも失敗。こぼれ球に殺到するカナダをうまくかわして形成したラックから10番 ウェブのタッチキックにカナダのレイトチャージ。序盤は双方の反則やアンフォースドエラーが目立った。特に日本代表は、キッキングゲームとグラウンドをワイドに使って攻略するプランが徹底され、エリアマネージメントの安定と一瞬の隙を見逃さないスピードでビッグゲインをするものの、50-50パスや不安定なラインアウト、スクラムでのアーリーエンゲージの反則でチャンスの芽を自ら摘む。
それでも鋭い出足で激しいディフェンス(DF)をカナダ攻撃陣に浴びせてターンオーバーや反則を誘い、タテにヨコにすばやく攻め立ててテリトリー・ポゼッションともに日本代表が圧倒する。

前半9分、カナダ陣ゴール前5mのラインアウトモールを押し込んで、最後は6番 リーチが右に飛び込み先制のトライ(5-0 10番 ゴール不成功)。 前半17分、日本代表のノットロールアウェイからカナダ15番 PG成功(5-3)。 やはり実力伯仲で接戦が展開されるかと思われたが、カナダは日本代表のプレッシャーに慌てる場面が多く、反則を重ね、これを10番 ウェブが前半20分(8-3)、23分(11-3)と立て続けにPGを成功させてカナダを突き放しにかかる。
前半37分、カナダ陣ゴール前10m左中間、相手ボールスクラムから地元・宮城気仙沼出身、3番 畠山を先頭に猛烈にプッシュし、ターンオーバーしたボールを8番 菊谷がそのまま持ち込んでトライ。10番 ゴール成功でリードを広げた(18-3)。 前半39分10番 ウェブのパントを追った12番 ニコラスが、キャッチしたカナダ選手を絶妙のタイミングでタックルし、ターンオーバー。すばやく展開し、13番 平がカナダDFラインのギャップを突いてゴールライン直前までビッグゲイン。カナダの必死のタックル受け、ダウンされたボールをサポートの15番 有賀が拾ってすかさずゴールに飛び込みトライ。10番 ウェブのゴールも成功し、25-3で折り返した。

後半も主導権は日本代表が握り、8分、後半開始から13番 平に替わって登場した21番 トゥプアイレイが右展開で受けたボールをライン際インゴールに蹴りこみ、敵と競りながら抑えこんでトライ。10番 ゴール成功(32-3)。 後半11分、この日何度も格の違うランを見せてカナダDFをパニックに陥れた11番 小野澤が左タッチライン際を敵に囲まれながらも「ラバーマン」の真骨頂を発揮してトライ。10番 ゴール成功(39-3)。 後半35分には、初テスト 2番 堀江がポスト右にトライ。10番 ウェブから替わった22番 アレジがゴール成功(46-3)。 このままノートライに抑えることを観衆は期待したが、カナダも意地を見せ、後半39分、22番 日系4世のネーサン・ヒラヤマがDFライン裏にけりこまれたボールを好捕し一矢を報いるトライをあげた。10番 ゴール不成功(46-8)。 日本ラグビーが最も古くから交流をしてきたカナダに46-8というこれまでの最多得点でノーサイドとなった。

引き分けから二年、着実に進化したJAPANの勝利に沸いたユアテックスタジアム仙台であったが、不用意な反則と不安定なセットプレーは、世界ランキング10位以内を目指すチームとしては大きな課題に見えた。また、今日は大勝したとは言え、前回ワールドカップ以後、政府の支援でハイパフォーマンスプログラムをスタートさせ、強化に本腰を入れ始めたカナダも、連敗を免れるために第二戦は相当の覚悟で臨むと思われる。そして、2011年ニュージーランド開催のワールドカップにJAPANが出場権を獲得した場合、同じプールでカナダと対決することはほぼ間違いなく、当面、ライバルとしてしのぎを削る相手として認識しなければならない。2019年開催国にとって、国際競技力向上が最優先の責務である日本ラグビーは、ひとつの勝利に酔うことなく、さらなる高みを見据えて、第二戦への準備を進めるだろう。国内のラグビーへの注目度を上げる原動力となるような戦いを期待したい。

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会見リポート

日本代表

◎日本代表
○ジョン・カーワン ヘッドコーチ
「勝ったことと課題が見つかったことに関してはHappyである。そして、その課題には、ポジティブなものとネガティブなものがある。これらをとらえて今週つめていき、次回に邁進していきたい」

○菊谷崇キャプテン
「80分間しっかりたたかえたこと、キックからのターンオーバーでトライへつなげたことなどはよかった。反対に、キックで簡単にボールを与えてしまった点や、ラインアウトなどは修正すべき点もたくさんあった。しかし、チャンスからトライへつなげたのはよい結果だと思う。今週、修正をかけてベストな状態で次に臨みたい」

──ポジティブなものとネガティブなものとはどのようなものか。
○カーワン ヘッドコーチ

「ポジティブな点は、ターンオーバーからチャンスを築けたこと、ディフェンスでのプレッシャーがよかったこと。ボールを継続することで最終的にチャンスにつなげられたので、われわれが意図していたことができた。試合前にフロントローに『ヤングサムライになってほしい』と伝えた。キャップ数の多い相手に対して彼らはよく戦った。今後の成長が楽しみである。逆に、ネガティブな点は、ラインアウトのミスが多かったこと、ボールの継続という点でもう少し辛抱してボールをまわさないといけないのに容易にはなしてしまったこと、それとストラクチャーのところです。今週その点を修正していきたい」

──ネガティブな点としてキックの使い方なども含まれるのか。
○カーワン ヘッドコーチ

「その通りです。判断の場面で、ボールの継続かキックかは、今後必要になってくるところ。前半でも、せっかくカナダを追い詰めたのにボールをはなしてしまったところがあった。今後の修正点である」

──多くのトライの中で、どのトライが今のJAPANにとって1番手応えを感じるベストトライか。
○菊谷キャプテン

「ライアン(ライアン・ニコラス)がパントでタックルして、ターンオーバーからトライへつながったもの。あれが僕の中ではやってきたことができたと思ったもの」

──ミスの後のスクラムからターンオーバーして、菊谷選手のトライにつながった。あのスクラムの前に、若手フロントローに何かいったのですか。
○菊谷キャプテン

「僕がラインアウトを選択してミスが出てしまったので、ミスは気にしないでこのスクラムが大事だから集中しようといった」

──そのスクラムはどう押したのか。
○菊谷キャプテン

「一度受けてから、レッグドライブしました」

──今日はたくさんトライをとったことを評価しますか、それともノートライに抑えられなかったことを課題に感じますか。
○カーワン ヘッドコーチ

「その通りです。本来であればノートライに抑えたかった。しかしそれはわれわれのレベルがおろそかになるという局面があったからだと思う。これに対して、カナダは最後まであきらめずにJAPANに立ち向かったために結果を出すことができた。今週、メンタル面でそういったことをなくすよう修正したい」

──素晴らしかったゴール前のディフェンスはどういうことを意識しあっていたのか。
○菊谷キャプテン

「あそこは全員が頑張ってディフェンスする場所として、言わずともみんなが意識してくれていた。また、そういう人たちの集まりなので。だから特に何かがというわけではなく、全員が盛り上げてくれた。ひとつになれたその結果がターンオーバーだったと思います」

──ラックはどうでしたか。
○菊谷キャプテン

「そうですね。リーチや北川をはじめとしてみんながボールに絡んでくれたので、相手の球出しが遅れてディフェンスのセットができ、前半は対応できた」

──1年前のアメリカ戦から比べて、どういったところでチームが成長していると感じますか。
○菊谷キャプテン

「アメリカ戦からやっている戦術が頭に入ってきている。それに新しいメンバーもなじんできてくれて、本当にやりやすい。サポートしてくれるメンバーも頑張ってくれているので本当にやりやすい。いい代表チームとしての1週間をすごせた」

──レベルが上がってきていると感じますか。
○菊谷キャプテン

「トップリーグが終わって集まって、セレクションをしてと、タイトなスケジュールだったが個人でそれぞれきちんと調整してきてくれた。みんな結構レベルが上がっていると思う」

──ヤングサムライの3人の一人一人に一言を。
○カーワン ヘッドコーチ

「まず3人に対しては、大学から高いクォリティを持っていると感じます。今日の試合の前に、ずっとタイトにいこう、押されても受けずに立ち向かっていこうと話したところ、それをその通りにやってくれた。前半はセットでのペナルティも多かったけれど、気持ちをしっかり持ってやってくれた。畠山にはシニア選手として若手を引っ張ってくれと話した。彼は8キャップということで、それをよく出して若手を引っ張ってくれた。堀江は高い才能のある選手だと思う。ですので、いつものそのままの自分でやってくれと話した。つまり、ラックでのボールへの絡みやヒットの部分です。川俣に対しては、インターナショナルサイズを備えているということで、ラックにヒットし、そして激しくボールに絡んで欲しいと話しました。まだ課題は残りますが、よくやってくれたと思います」

──ワールドカップ日本招致決定後の初のテストマッチでこのように快勝したことについて。
○カーワン ヘッドコーチ

「こういった形でサポーターの方も日本に招致されたらどういう雰囲気なのかということを感じていただけたと思う。われわれもそれに則したプレーができたことをうれしく思います。そして、JAPANとして観客の方や皆さんにチームとしてどういった方向性に向かっているかをわかってもらう非常に重要な試合だったと思います。今回こういった形で示せたが、もちろん来週もいい試合をすることが大切です。今われわれは世界ランキング10位に向かって邁進しているのですが、そのためにはまず13位になることが必要になってくるので、皆さんにJAPANが真の成長をしているという感触をもっていただけるような形にしていきたいと思います。そういったことで来週もエネルギッシュでエキサイティングな試合をしていきたいと思っています」

日本代表 46-8 カナダ代表   日本代表 46-8 カナダ代表

カナダ代表

◎カナダ代表
○キーラン・クロウリー ヘッドコーチ
「われわれのミスが多かったため、攻撃の機会が得られなかった。ボールをとれなかった」

○パット・リオダン キャプテン
「JAPANが強いことはわかっていたが、今回はこんなに差がついてしまった。しかし、今回わかったことを来週に向けて修正していきたいと思います」

──実際にやってみて想像以上のところは。
○クロウリー ヘッドコーチ

「同じぐらいのランキングだが、PNCでの厳しい試合がJAPANにとっていい経験になっていると思う。トップリーグも代表の底上げの一役を担っている」

──カナダの場合チャーチルカップがあるが、何か大きな違いがあるのか。
○クロウリー ヘッドコーチ

「ほとんど一緒で大きな差はない。われわれも夏にその経験を積んで、今回いいラグビーを見せたかったのだが、結果は残念なものとなってしまった」

──今までのJAPANと違うところは。
○リオダン キャプテン

「前回の試合では、強くてスピードもあって、気持ちの入っているチームと感じた。今日の試合ではキッキングがよかった。コンタクトエリアでは我々の方が少々優位でしたが、今日のJAPANはグラウンドを広く使って、すばやいラグビーをしてきた」

──スクラムについては。
○リオダン キャプテン

「非常に低かった。前半に3回もフリーキックをとられた。前回対戦したときよりも非常に進歩していると感じた」

──今回呼びたかったけれど(ケガやヨーロッパにいて)呼べなかった選手はどれくらいいるのか。
○クロウリー ヘッドコーチ

「6名です。しかし、若手の選手にとってよい経験になったし、今後につながればと思っている」

──JAPANの戦い方にヘッドコーチの性格のようなもの感じるところはあったか。
○クロウリー ヘッドコーチ

「JKの影響は出ていると思う。彼が日本代表のコーチになって3年経つが、大きな影響を与えているし、その結果がJAPANに出ていると思う」

──JKは効果的にニュージーランドの選手を入れているが、カナダにはそういうルートみたいなものはないのか。
○クロウリー ヘッドコーチ

「カナダ国内のシステムとして現状では無理。ただ、国内で選手育成プログラムをしているので、ナショナルチームを強化させるような方向で動いている」

──前半ハンドリングエラーが多かったのは、来日によるコンディショニングによるものなのか、それともJAPANディフェンスのプレッシャーのせいなのか。
○リオダン キャプテン

「JAPANのディフェンスのプレッシャーによってミスを犯してしまった。また、それによってチャンスを与えてしまった。ですので、コンディションによるものでは一切ありません。JAPANの速いディフェンスに対して修正をして来週に臨みたい。前半に3回もフリーキックをとられた。前回対戦したときよりも非常に進歩していると感じた」