
ニュージーランド オールブラックス 32-19 オーストラリア ワラビーズ
【2009年10月31日(土) at東京・国立競技場】
オールブラックス、対ワラビーズ7連勝
満員の観客の中で、ニュージーランドの国歌「アオテアロア」につづき、オーストラリアの国歌「アドバンス・オーストラリア・フェア」。そして、黒衣に身を包んだ選手たちのハカ。そう、夢ではない。ここは、東京の国立競技場だ。ラグビーファンなら一度は生で見てみたいと思うオールブラックス対ワラビーズのテストマッチ、ブレディスローカップの東京での開催がまさにこの日、現実のものとなった。
ニュージーランド オールブラックス、オーストラリア ワラビーズとも、最近の数年は11月をウインドウマンスとして、国内のトップレベルの試合は休みとし、国の代表チームの海外遠征を行う月とすることが多い。今年は、両チームとも、英国・アイルランドの4カ国とのテストマッチを含む欧州遠征を行い、欧州へ行く途中での遠征での第一試合として、東京でオールブラックスとワラビーズが対戦することとなったのだ。遠征チームの選手であるオールブラックス33名、ワラビーズ35名から、それぞれ、この日のスターティングメンバーの15名とリザーブの7名の計22名が3-4日前に発表されている。
オールブラックスは9月19日にウェリントンで行われた対ワラビーズ戦(33-6)のメンバーを中心にして、No.8ソーイアロ、CTBコンラッド・スミスが怪我からスターティングメンバーに復帰している。ワラビーズでは、この遠征で初めて主将となったロッキー・エルソムが主将をつとめる初試合となる。また、ワラビーズの名CTBモートロックが怪我の治療のため日本に寄らず欧州に直行し、副将でもあるベーリック・バーンズは試合の2日前の東京での練習で足首を痛めて、今日のメンバーからは外れている。
この2チーム間の成績を見ると、今年のトライネーションズでの3試合はニュージーランドの3勝。昨年からの通算でもオールブラックスが6連勝中である。
オールブラックスとしては、対ワラビーズの連勝を続け、この後の欧州でのグランドスラム(英国・アイルランドの4カ国に全勝)を狙いたい。一方、ワラビーズは、今年のトライネーションズでは対南アフリカであげた1勝のみであり、また、今年のブレディスローカップは既に3勝をあげているオールブラックスが獲得することは決定しているが、東京での対オールブラックスに勝利して、欧州遠征・グランドスラムへのはずみをつけたいところだ。
試合は、さすがに世界のトップレベルのチーム同士だけあり、激しいブレイクダウンに、スキのないディフェンスが続き、なかなか、両チームとも、トライチャンスにはつながらない。最初の10分間あまりは、ワラビーズが敵陣に攻め込む時間が多く、5分と12分にSOギタウがPGを入れ、0-6とリードして、ワラビーズとしては試合へのいい入り方となった。しかし、オールブラックスも14分にSOカーターがPGを入れ3-6とした後、20分には敵陣ゴール前での展開からFLマコウ-LOドネリー-FBムリアイナ-FLマコウ-WTBシヴィヴァトゥとつなぎトライ(ゴール成功)、10-6と逆転した。
両チームともにPGで追加点を入れた後、33分にオールブラックスのWTBシヴィヴァトゥが危険なタックルの反則でシンビンとなった。ワラビーズは、この人数での優位な時間帯を生かし、ゴール前に攻め込んでモールから出たボールをSHゲニアから受けたブラインドサイドWTBヘインズが右隅のコーナーポスト脇に飛び込み、トライ(ゴール成功)、13-16と逆転し、前半を終了した。
後半、シンビンから復帰したばかりのWTBシヴィヴァトゥの好タッチキックでオールブラックスがゴール前に迫った後、モールから出たボールをCTBコンラッド・スミスが中央をタテに抜け、トライ(ゴール成功)、オールブラックスが20-16と逆転した。その後も何度かトライチャンスはあったが、ミスもあり、なかなか決めきれない。すると、満員の観客席から「All Blacks!!」の声援が聞こえてきた。そんな声援に力を得たのか、オールブラックスだけでなくワラビーズも選手の動きは反応の速さも、タックルの激しさも、ディフェンスの集中力も、スタミナも落ちない。さすがに世界のトップレベルだ。しかし、少しずつ、ワラビーズが自陣で戦う時間が多くなり、そこでペナルティを取られると、オールブラックスの名キッカーSOカーターが間違いなくボールをゴールポストに入れ、点差を拡げてくる。ワラビーズも最後まで、追加のトライを狙って攻め続けるが、オールブラックスの好ディフェンスにより、追加点はなかなか取れない。
SOカーターは最終的に、この試合でコンバージョンを1回もはずすことなく、6PG、2Gと8/8の成功率で、最終スコアを32-19として、オールブラックスが今年の4回のワラビーズとの対戦を全勝、昨年からの対ワラビーズでは通算7連勝で終えた。オールブラックスにとって来週以降の欧州でのグランドスラムを狙える期待が高まった。
日本のラグビーファンに世界のトップレベルのラグビーをたっぷり見せてくれた夢の時間は、あっという間に終わってしまった。(正野雄一郎)
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