■4月4日 第4戦 U20日本代表 76-7 U20ウェールズ北部選抜

ここまで、勝てるゲームを落として3戦3敗。
3戦目のU20ウェールズ選抜戦は、チームとしてのコアな戦い方ができつつあるのを感じさせた充実した内容だったとはいえ、敗戦は敗戦。「本大会に向けて、いいイメージ持つためにも勝ってツアーを終わりたかった」チーム全体の気持ちをそう代弁した有田主将の言葉どおり、チーム全体が勝利に飢えた状態で迎えたツアー最終戦。U20日本代表はここまで溜まっていたフラストレーションを一気に吐き出すかように、12トライを奪って76-7という大差でU20ウェールズ北部選抜に快勝。18日間にわたったウェールズ遠征での有終の美を飾った。

ウェールズ北部選抜の突進を必死のタックルで止めるSO市原(右下)とCTB南橋(左端)   ルースボールを奪い合うLO三輪谷。セレクションマッチの意味あいもあっただけに、各自が持ち味をアピールした   この日の先発フロントローはPR稲垣、HO鈴木、PR田中。セットプレーは安定していた   激しいタックルでウェールズ北部選抜の突進を止めるCTB南橋
ウェールズ北部選抜の突進を必死のタックルで止めるSO市原(右下)とCTB南橋(左端)   ルースボールを奪い合うLO三輪谷。セレクションマッチの意味あいもあっただけに、各自が持ち味をアピールした   この日の先発フロントローはPR稲垣、HO鈴木、PR田中。セットプレーは安定していた   激しいタックルでウェールズ北部選抜の突進を止めるCTB南橋

「遠征自体にセレクションという位置づけがあったので、まずは前の試合でプレーしなかった選手を起用した」(薫田監督)そんな意図もあった、最終戦の先発メンバーは以下のとおり。

1.稲垣、2.鈴木、3.田中、4.柳川、5.三輪谷、6.小野寺、7.有田、8.杉本、9.横山、10.市原、11.鶴ヶ崎、12.南橋、13.仲宗根、14.長野、15.正海

このうち6人は第3戦のU20ウェールズ選抜戦でプレーしなかったメンバーだった。

日本は開始5分にスクラムでプレッシャーをかけて敵ゴール前でPKのチャンス。HO鈴木がサイドを突いた後、NO8杉本が飛び込んで先制(仲宗根ゴール成功で7-0)。12分にはSO市原のロングキックで敵陣に入った後、相手のクイックスローにプレッシャーをかけてターンオーバー。順目に素早く展開して、CTB仲宗根、WTB鶴ヶ崎とつないで12-0とリードした(仲宗根ゴール失敗)。

「2トライを取った後は自陣ゴール前からでもチャレンジして、トライを取り切ってみることをゲームプランとして臨んだ」(薫田監督)ということもあり、この後、日本はさらに積極的なアタックを仕掛け続けた。18分。ラックからのアタックで、タイミング良くタテに走り込んできたFB正海にパスが渡ると、ウェールズDFは反応できずに3トライ目(仲宗根ゴール成功19-0)。24分にはキックチェイスでプレッシャーをかけてターンオーバー。こぼれ球を拾ったCTB南橋が好判断でWTB長野にパスを通して、そのまま長野がスピードで走り抜けた(仲宗根ゴール成功26-0)。さらに33分に、敵陣深くのラインアウトからウェールズ入りしてから練習し始めたドライビングモールでトライ(トライNO8杉本、仲宗根ゴール失敗31-0)。前半終了間際にも、自陣に攻め込まれながらSO市原のタックルからターンオーバー。左タッチライン際をLO柳川、WTB鶴ヶ崎とつないで大きくゲイン。中に切れ込んだ鶴ヶ崎に寄ってきた長野がパスを受けて外にDFを振り切り、90mトライを決めてみせた。

サイズを生かした激しいプレーぶりが評価され、ブラインドFLとして起用された小野寺   ウェールズ選抜戦に続き、後半SOに入った立川は指令塔として終始落ち着いたプレーぶりをみせた   前半12分にトライを奪うなど、力強い走りを評価されてマン・オブ・ザ・マッチに輝いたWTB鶴ヶ崎   2人がかりでウェールズ北部選抜の突破を止めるLO柳川(左)とFL山下(右)
サイズを生かした激しいプレーぶりが評価され、ブラインドFLとして起用された小野寺   ウェールズ選抜戦に続き、後半SOに入った立川は指令塔として終始落ち着いたプレーぶりをみせた   前半12分にトライを奪うなど、力強い走りを評価されてマン・オブ・ザ・マッチに輝いたWTB鶴ヶ崎   2人がかりでウェールズ北部選抜の突破を止めるLO柳川(左)とFL山下(右)

日本は、後半開始と同時に9人を入れ替え(1.稲垣→坪井、2.鈴木→有田、3.田中→小野、4.柳川→安井、5.三輪谷→松橋、7.有田→山下、9.横山→滑川、10.市原→立川、12.南橋→ハベア。前半40分時点ですでに15.正海→竹下の交替も行われていた)。ただし、メンバーが代わっても、日本が攻めまくる展開は変わらなかった。後半5分のWTB長野のトライを皮切りに、CTB仲宗根、FL小野寺、NO8杉本、SO南橋(立川の負傷で、SOとしてグラウンドに戻っていた)と、後半も計6トライを重ねた。

確かに、代表メンバーが並んだU20ウェールズ選抜と比べると、ウェールズ北部選抜の実力が劣っていたのは確かだろう。それでも、前後半で選手の顔ぶれがガラりと変わっても、ゲームプランどおり果敢にチャレンジしながらトライを重ねてみせたことは、このチームの攻撃ポテンシャルの高さを感じさせた。
「このツアーで目指してきたものが、60分間は出せた」と、薫田監督もプランどおりにトライを取り切れたことに関しては、この日の戦いぶりを高く評価。その一方で、後半20分過ぎにウェールズ北部選抜にこの日唯一のトライを許すなど、薫田ジャパンが意識的に取り組んできた「最後20分間をいかに集中力を切らさずに戦い切るかと」いう部分に関しては、まだまだ課題として残ったのも事実。大量リードしたこともあって、「最後の20分間は集中力が切れかけてた」(有田主将)面があったは、明らかだった。

そんなふうに、最後の20分間に集中力が切れた面があったとはいえ、全体的にはDF面でも第3戦で確立できた早く低く前に出る組織DFは機能。日本の多くのトライは守りでプレッシャーをかけて相手のミスを誘って奪ったものでもあった。
「しっかり前に出てプレッシャーをかけて、低くタックルすれば外国人が凄く嫌がることがわかったし、アタックではスピードと運動量で上回ってテンポよく順目順目でしっかりつないでトライがとれることもわかった」(FL山下)

結果的に敗れたとはいえ、代表組が顔を揃えたU20ウェールズ選抜に善戦しながら確認した「このチームの強み」を遠征最終戦で勝利という結果に結びつけたU20日本代表。事前に厳しい試合経験を積めないまま大会入りした昨年と比較して、薫田監督は「昨年のチームが大会1試合目を終わった後ぐらいの状態になっているかもしれない」という手応えも感じている。本大会まで残り2ヶ月。「個々のポテンシャルを最大限引き上げつつ、チーム力を高めて、本大会に臨む」(薫田監督)ことになる。