■4月1日 第3戦 U20日本代表 17-38 U20ウェールズ選抜

6月に控えるU20世界ラグビー選手権に臨む薫田ジャパンの骨格がはっきりした。そんな有意義なゲームになったと言っていいだろう。対戦相手が、当初予定されていた地域選抜からU20ウェールズ選抜に"格上げ"となった遠征第3戦。U20ウェールズ代表組が17人で、そのうちフルプロフェッショナルが8人という今遠征で最強と言っていい対戦相手に対して、U20日本代表は過去2戦とは全く異なる戦いぶりを披露してみせた。
「ひとりひとりがいかにファイトできるか」(薫田監督)
そんなベーシックなテーマが与えられ、セレクションマッチ的な位置づけもあった2試合を経て未来のレッドドラゴンと対峙したU20ジャパンは、間違いなく80分間闘い続けた。

タックルにいくCTBハベア(下)と指令塔として好リードを見せたSO立川(上)。この日のU20はチームとして核となる戦い方を示せた   6カ国対抗出場選手も含まれていたU20ウェールズ選抜に対して、日本も粘りあるプレーで対抗した   第2戦に続きFBとしてフル出場を果たした竹下(左から2人目)とフォローするFL小野寺   攻守に体を張ったプレーぶりを見せたNO8高井だが、後半30分に危険なタックルを受けて退場を余儀なくされた
タックルにいくCTBハベア(下)と指令塔として好リードを見せたSO立川(上)。この日のU20はチームとして核となる戦い方を示せた   6カ国対抗出場選手も含まれていたU20ウェールズ選抜に対して、日本も粘りあるプレーで対抗した   第2戦に続きFBとしてフル出場を果たした竹下(左から2人目)とフォローするFL小野寺   攻守に体を張ったプレーぶりを見せたNO8高井だが、後半30分に危険なタックルを受けて退場を余儀なくされた

今年の6カ国対抗(U20)時の主力も含まれていたとはいえ、あくまでもコンバインドチームであり、まとまりという意味ではいまひとつの面もあったU20ウェールズ選抜に対して、立ち上がりから日本は優勢に試合を運ぶ。日本のスピードある攻めについていけずにウェールズは反則を繰り返しながら後退。3分には、この日プレースキッカーを務めたFB竹下がPGを決めて先制した。日本は過去2試合では見られなかった粘りあるDFを見せて、前半20分過ぎまでリードをキープ。それでも、立ち上がりはバラバラだったウェールズ選抜が時間の経過とともにチームとして機能し始めると、一瞬の隙をついて決定力のあるBK陣が日本のDFラインを切り裂くシーンが多くなる。

20分に日本ボールのスクラムにプレッシャーをかけられターンオーバー。SOにタテ突破を許した後、右に大きく振られて左WTBにタッチライン際を走り抜けられて初トライを許す。27分にも、相手BKに右、左と連続して大きく振られると、次第にDFラインが薄くなり、今度は右WTBがトライ。さらに30分には、キックチェイスのギャップをつかれて、相手CTBに60mを独走されて、点差を3-19までに広げられてしまった。
10分間に3トライを重ねられた日本だったが、前半終了間際には再び敵陣でプレーする時間帯が多くなる。攻め込みながらのパスミスやノックオンのミスでトライに結びつけることはできず、ハーフタイム前のラストワンプレーで選択したPGも竹下がミス。そのまま3-19で前半を折り返すことになったが、テリトリーでもボール支配でも互角に近いパーセンテージで戦えたことで、これまでの2試合とは違った手応えを感じて後半を迎えることになった。

ブレイクダウンで競り合うFL杉本(右)。試合後、チーム状態が上向きになりつつあることに安堵の表情を浮かべていた   突進をはかるPR吉田。チームとしてはセットプレーの安定も課題のひとつ   何度もウェールズDFを切り裂く突進を見せたHO有田主将。大黒柱が戻りチームは一枚岩になってきた(右はフォローするLO松橋)   3試合連続してアウトサイドCTBとして先発出場した仲宗根。ケガ人も多いがコアメンバーは固まりつつある
ブレイクダウンで競り合うFL杉本(右)。試合後、チーム状態が上向きになりつつあることに安堵の表情を浮かべていた   突進をはかるPR吉田。チームとしてはセットプレーの安定も課題のひとつ   何度もウェールズDFを切り裂く突進を見せたHO有田主将。大黒柱が戻りチームは一枚岩になってきた(右はフォローするLO松橋)   3試合連続してアウトサイドCTBとして先発出場した仲宗根。ケガ人も多いがコアメンバーは固まりつつある

「前半トライを取られても全員の気持ちが落ちないで、もう一度盛り返して前半を終わることができたことが後半につながった」
そんなHO有田主将の言葉どおり、前半終了間際のいい流れのまま後半を迎えた日本は、15分に相手のノット・リリース・ザ・ボールの反則で得たPKのチャンスからFWが早く仕掛けた後、途中出場していたCTB南橋が相手DFのギャップをタテに抜けて、そのままトライ。10-19に追い上げた。
「攻めに関しては、まだシンプルにタテに速く入っていくことしかやっていない」(元木コーチ)というBK陣だが、2戦目のウェールズ大カーディフ校戦でもそうだったように、早いテンポでスピードあるアタックを仕掛けていくと、相手DFが対応できないケースも多かった。

その後、試合は一進一退の展開が続くが、20分過ぎに自陣ゴール前のスクラムでプレッシャーをかけられた後、サイドを割られて点差を広げられる。この後、30分にNO8高井が危険なタックルを受けて退場。そのインターバルも影響したのか、残り10分間でやや集中力を失った感のあった日本はウェールズに2トライを献上。一方で、ラインアウトから有田の突破でつかんだチャンスに、ラックから途中出場していたNO8山下が飛び込んで1トライを返し、最終的には17-28のスコアで試合は終了した。

「今日はよく粘っていた」
試合後、そう語ったのは古田コーチ。確かに、セレクションという位置づけも影響したのか、全体的に淡白なプレーが目立った初戦、2試合目に比べて、切れてしまう場面はほとんど見られなかった。セレクションマッチを経て、コアメンバーが固まってきたことで、チームに一体感が出て来た面もあるだろう。
「練習やミーティングでの雰囲気も変わってきた」(FL杉本)
あるいは、世界と戦える軍団としての一歩をようやく踏み出したということになるのかもしれない。

薫田監督は「収穫も多かったが、代償も大きかった」と、このウェールズ選抜戦を総括した。収穫は、薫田監督が「空気」と称して来た世界と戦う意識がチーム内に芽生えてきたこと。そして、その中心になるべくチームの核も見えてきたこと。
この日、薫田監督の口から具体的に名前が上がったのは、FL小野寺とSO立川。小野寺は186センチ、110キロのサイズを生かしたハードなプレーがウェールズ代表クラスにも通用することを証明。「こちらにきてキッキングコーチに教えてもらったことで、キックも格段に良くなっている」(元木コーチ)という立川は、キックミスもあったものの、攻守に存在感のあるプレーを披露。田村のケガなどもあって、なかなか固まらなかった指令塔のポジションにひとつの答えを導く活躍ぶりを見せた。

その一方で、「代償」とはコアメンバーにケガ人が相次いでいること。2戦目の田村に続いて、この日は前述の高井、そしてLO安井も痛んだ。そんな故障者の分を他のメンバーでどれだけカバーできるか。
「キッキングスキル、タックルスキル」(薫田監督)
「アタックでいかに取り切るか。そして、最後の10分の集中力」(有田主将)
そんな具体的な課題の一方で、スコッド全体の底上げも現地時間4日に予定されている遠征最終戦(U20ウェールズ北部選抜)の課題となる。