関東学院大学 5-21 早稲田大学 関東学院大学 5-21 早稲田大学 関東学院大学 5-21 早稲田大学 関東学院大学 5-21 早稲田大学
マッチリポート

関東学院 5-21 早稲田

(1回戦/2008年12月20日 at埼玉・県営熊谷ラグビー場)

復活の関東学院、早大ディフェンスを崩せず
1回戦屈指の好カードは、昨年度優勝の早大と一昨年度まで6年連続で決勝を戦ってきた関東学院の対戦。関東大学対抗戦においては帝京、明大に苦杯をなめた早大が、ライバル関東学院との対戦に今までにない激しさを見せた。
早大の勝因はCTB陣の強烈なタックル。関東BKのオープン攻撃に、長尾、宮澤が思い切って飛び出す。一歩でも前に出るという強い意志を見せながらマークの腰に鋭くささり、タックル。瞬時に起きてジャッカル、だめならスイープ。このディフェンスへのこだわりが、関東自慢の安藤、草下、土佐のFW第3列から仕事を奪い、この対戦のポイントとなるブレイクダウンの決着をつけた。

早大BKの執拗なディフェンスは、シーズン後半元気の無かったFWを少しずつ前に出し目覚めさせた。2次、3次からキャプテン豊田、フッカー有田らが迷わず前に出始めると、タックル、ターンオーバーから大外への展開でビッグゲインを繰り返し、早大のリズムが戻ってきた。
勝負を決めたのは後半24分、スクラムからSO横にブラインドWTB中濱がライン参加。裏へ出ると外のセーフティゾーンに走り、そこへ思い切ったアングルチェンジでFB田邊が飛び込んでトライ。ELVルールからSO山中をスクラムから浅く、広めにポジションさせた早大BKのスキルが、ここでも関東FWの2線防御を突破した。
この日の関東は最後まで自分たちのペースが掴めなかった。SOに田瀬を起用し、再三展開を図るが、ブレイクダウンの劣勢が影響し、BKラインの数が少ないフェイズを早大ディフェンスに狙われた。苦しい局面でFW土佐、原田が身体を張ったプレーでラックの基点となり攻撃のリサイクルを図るが、かつてランとキックを織り交ぜて早大ディフェンスを惑わせたアタックスキルは発揮できなかった。

関東本来の持ち味は、ブレイクダウンの強さを起点とした15人の展開力。そしてSH、SO、FBがつくる素早いリズムが強力FWを前に前にと押し上げてくる。そんな関東のラグビーが局面では垣間見えたが。
ノーサイドの歓声の後、早大は関東の選手たちをスタジアム正面で待ち受けた。敗れた関東の選手たちに涙はあったが、苦難の時間を乗り越え復活した関東の強さを、ライバル早大は確実に受け取った。
この熊谷での熱闘に集まったラグビーファンは、キャプテン土佐を柱とした確実な関東の復活を見たといえる。(照沼康彦)

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会見リポート

関東学院大学の桜井監督(右)と、土佐主将
関東学院大学の桜井監督(右)と、土佐主将

関東学院大学

○桜井勝則監督
「非常に良いコンディションのなか、また、多くの観客のなかで早稲田と戦うことができた。勝てれば素晴らしいといえるのだが、残念ながら負けてしまった。ただし、最後のトライは来年に続くトライだったと思う。土佐キャプテンを中心に4月からいろいろな状況のなかで、夏合宿で最初に早稲田と戦い、最後も早稲田と戦うことができた。悔いは残るが選手をほめてあげたい」

──SO起用も含めて、早稲田のどの点を攻めていこうとしたのか。
「FWのディフェンスが厚いので、アウトサイドセンターの外側を攻めていこうと考えていた。最後のトライは、ボールを動かし続けたからで、自分たちがやろうとしたことができた。前半からボールを継続し、動かすことができていれば(結果は)違っていたとは思う。スタートメンバーも狙いどおりであったが、それ以上に早稲田のディフェンスが強かった」

○土佐誠主将
「点差が開いたが、これが実力だと思う。最後の試合になってしまったが、選手には全力を出すように伝えたし、力を出しきった結果であるから、(負けはしたが)いい試合だと思う」

──トスに勝って陣地を選択したが、この判断は。
「考えたのは、風向きと陽の当り方で、キックを多用した陣地の取り合いとなると思った。最初に有利になるようにと思い、陣地を選択した。後半に風向きが変わったが、気にはならなかった」

──再起をかけた1年ということで、生活環境の見直しなどがあり、グラウンドに集中できなかったのではないか。この点で難しかったことは。
「昨シーズンは10月下旬で(シーズンが)終った。そこから自分たちの学年でスタートした。ラグビーをした期間は短く、ほとんど、生活の見直しや、ボランティアをしていた。最初はほとんどラグビーはできなかったが、自分としては、こういうところが見直すべき点だと思っていたので、そのことが影響したとは思っていない」

──愛されるチームを目指したいと言っていたが、1年を振り返ってできたか。
「強いチームになりたいということで、復活するのであれば以前のような戦績を残すべきだと思っていた。初戦で負けてしまったので、以前のような力はないと思う。これからの後輩の頑張りに期待する。それで愛されないかといえば、今日の試合を見て心が動かされた方が少しでもいたとしたら思いが届いたと思うので、愛されるチームになれたのではないかと思う」

──早稲田に負けたことと、初戦で負けたことでは、どちらを強く受け止めたか。
「初戦で負けたことが自分としては大きい」

──ここで終ったが、相手が早稲田だったということについてはどうか。
「特にないが、強い相手だし、毎年戦ってきた相手なので、僕らが特別な相手と呼ぶには、事件を起こして下に落ちたチームなので、もう一度強いチームに戻ってから言うべきであり、逆に、早稲田が、自分たちのことを特別な相手と言ってくれたことはうれしく思った」

──今年はどのようなシーズンだったか。
「ラグビーだけではなくて、いろいろなことがありすぎてつらかった。(これからも)こういうことはないと思う。最後まで戦えて、自分に任されたことはやりきったと思っているので、いい経験ができたと思う」

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早稲田大学の中竹監督(右)と、豊田キャプテン
早稲田大学の中竹監督(右)と、豊田主将

早稲田大学

○中竹竜二監督
「今日のゲームの位置づけとして、豊田キャプテンで、ダイナミックチャレンジというスローガンのもと、このチームは、荒ぶるを歌うまでに必ず逆境が訪れると1年間言ってきた。夏合宿でも逆境があったし、今シーズンは2敗もしたし、かつ、1回戦で負ければ終りという、早稲田の歴史においても1回戦負けはどん底と言われる状況だった。このような時こそ守りに入るのではなく、がけっぷちで大胆なジャンプをしようと言ってきた。このような状況で勝ち取った勝利なので、非常に重みのあるゲームである。豊田が一番体を張っていたと思う。リーダーとして頑張ったのが、今日の勝ちにつながったと思う。素晴らしいゲームだった」

──早明戦に負けて、大学選手権の組合せが決まって、厳しい状態での2週間だったが、試合に向けての準備状況と、また、今日の試合での勝利を確信しのはいつか。
「勝つつもりで準備はしてきた。昨日の練習を見て手ごたえを感じた。練習はもちろんのこと、選手の顔つき、決意表明も素晴らしかった。負けるはずはないと思った。その代わり、今日のゲームプランは、ロスタイムに逆転勝利をするくらいの準備をしてきた。最後の最後までそのつもりで見ていた。ゲームとしては、点差は関係なく、ロスタイムで差がつくくらいの内容であった。(ディフェンスに)こだわったほうが勝つということで、早稲田が一枚上手であったし、手ごたえも感じていた」

──田邊の起用について。
「期待通りである。ゲームコントロール、キック、勝負どころでのトライと、山中をサポートしながらゲームをコントロールしていた。もっと成長してほしい」

○豊田将万主将
「春夏、対抗戦とやってきて、関東が一番強かった。そのチームに勝ったことで、早稲田は他のチームにも勝たなければいけないということが、改めて実感できた。次に進むには、本当にいい試合であった。関東は強い相手であった」

──早稲田の歴史ということであるが、試合に臨むにあたって、このことがプレッシャーとなったのか、あるいは、逆境の中で、背中を後押しされていると感じたのか。
「1回戦で負けることは来年以降に影響が出ると思うので、ここで負けることについての責任とプレッシャーはあった。伝統ということについては気にしなかった」

──早明戦に負けて、大学選手権の組み合わせが決まって、厳しい状態での2週間だったが、試合に向けての準備状況と、今日の試合での勝利を確信しのはいつか。
「やるまで確信はもてなかったが、昨日の練習も、いつもどおりで特別なことはしていないが、みんなが腹を括って、覚悟を決めて背負っているものの重さを実感できた」

──関東のどこがすごかったか。
「どこというか、一つひとつのプレーすべてであり、関東とやっていると実感した」

──最後に土佐キャプテンに声をかけていたが、何を話したのか。
「土佐は、僕にはわからない思いであるとか、大変な苦労があったと思うので、きつかったろうと、いろいろな話をした。お前が下を向いてはだめだ。関東が終わってしまうといった。本当にしんどそうであった。土佐がキャプテンとしてやってきたから、関東は強かったと思う」