帝京 23-17 慶應義塾 帝京 23-17 慶應義塾 帝京 23-17 慶應義塾
マッチリポート

帝京大学 23-17 慶應義塾大学

(1回戦/2008年12月20日 at東京・秩父宮ラグビー場)

慶大、後半猛追するも、学生王座を狙う帝京大、力の差を見せる
今年から、16チームの組み合わせを公開抽選で決めたため、1回戦から対抗戦グループの強豪同士の対戦となった。10月19日に行われた対抗戦の試合では両チーム1トライずつの5対5の引き分けとなっており、対抗戦優勝の帝京大としてはその実力を見せ、学生王座を狙うスタートの試合としたい一方、慶應大としてはフィジカルでは帝京大が勝るとはいえ、この試合で敗戦となったらシーズンは終了してしまうため、なりふりかまわずしつこいディフェンスで勝利をもぎとりたい試合である。
前半は、両チームともよくボールを動かし、それに対してバックス、FWともよくタックルをして、なかなか得点を与えなかったが、24分に帝京大SH滑川がゴール前で蹴ったゴロパンを右サイドよりWTB鎌田がすばやくインゴールのボールに飛び込みトライをとり、帝京大が7-3でリードしてハーフタイムとなった。

後半に入り、慶應大のディフェンスが少し甘くなった隙を帝京大が突き、大きくゲインする場面が見られるようになり、2分にはゴール前スクラムより帝京大がスクラムトライをとり14-3と差を広げた。後半の中盤、慶應大バックスがボールを手にすることは多かったのだが、ロングキックで距離を稼ごうとして、両チームのFBでのキック合戦となることが多く、得点にはつなげられずに時間が過ぎてしまった。11点差のビハインドであった慶應大は、積極的にボールをまわしてトライチャンスを狙うべきであったと思われ、この時間帯は、結果的には残念な試合運びになったように思う。
後半28分には、帝京大はPGも決まり、20-3とさらに差を広げ、試合を決めたかにも思えたが、最後まであきらめていない慶應タイガーフィフテーンは、最後の10分は積極的にボールをバックスに展開し、WTB三木、LO立石で2トライを返し23-17まで猛追した。しかし、慶應が挽回に出たのが遅すぎ、6点差までつめた時点でノーサイドとなった。
最終的には、帝京大の実力がすこし上回った分、点差にあらわれた結果となった。帝京大はFW、バックスとも1試合ごとによくまとまってきており、これからの正月の試合が楽しみだ。(正野雄一郎)

会見リポート

慶應義塾大学の林監督(右)と花崎キャプテン
慶應義塾大学の林監督(右)と花崎キャプテン

慶應義塾大学

○林雅人監督
「今日はフィジカルで勝る相手に立ち向かう試合でした。夏、秋とBKに回されて獲られるシーンはなかったので、FWだけ押さえれば勝負になると臨みました。スクラムトライされるのは織り込み済みで、2つ目のキックから獲られたトライが誤算でした。スクラムが秋の試合より良くなかったし、ラインアウトのスローイングの精度が予想外に悪く、良いところでの攻撃が少なくなってしまいました。2トライ、2ゴール差の時点から、ペナルティで20-3に離され、ここが最終的には差がついたところでした。今年の慶應はとても良いチームで、花崎キャプテン中心にこれだけ4年生がまとまっているチームはないと思います。精一杯の指導で頂点に立たせてあげたかったが‥‥。残念です」

──両CTBの回復は?
「走ることにはダメージを受けてはいなかったので、万全でした。ただ、セットが組めず、竹本と増田の経験としてのコンビはありませんでした。帝京さんのタックル、スクラムは素晴らしかったと思います」

──蹴り合いになったのは?
「質量が勝る相手とは接点を増やすとまずいので、こちらから仕掛けたが、帝京さんの15番があれだけ飛ぶとは正直、驚きました。勝負どころで力を残すため、80分の中で、仕方なくやらなくては勝てません。でも、テニスみたいでしたね(笑)」

○花崎亮キャプテン
「今日はもう、『良い試合』などではなく、何としても勝ちにこだわらなければならない試合でした。ところどころ、もっとチャレンジしなくてはいけなかったのですが、想像していた以上に今日の帝京さんの出来は素晴らしく、慶應の力を出せなかったと思います。後半、最初からチャレンジしていればと、主将として責任を感じています。しかし、自分たちの林監督とつくってきたラグビーは間違っていないと思います。去年、素晴らしい先輩たちに決勝に連れてきてもらったのですが、今年はこういう苦い経験をしました。後輩たちがこの悔しい気持ちを晴らしてくれると信じています」

──想像していた以上の帝京とは?
「全体的に一人ひとりの前へ出る力があって、対抗戦のときより自信があったように感じました。うちも、崩されたトライではなかったのですが」

帝京 23-17 慶應義塾 帝京 23-17 慶應義塾 帝京 23-17 慶應義塾
 

帝京大学の岩出監督(右)と井本ゲームキャプテン
帝京大学の岩出監督(右)と井本ゲームキャプテン

帝京大学

○岩出雅之監督
「今回の試みである抽選で対抗戦のチーム同士の試合となり、しかも、秋の試合では5対5の引き分けた相手で、1回戦ではあるものの、ベスト4以上の試合になると思いました。1回戦というとまどいはありましたが、選手権で勢いに乗るためとプラスに考えて臨みました。学生も集中力を高めて臨めました。終盤、甘さも出ましたが、良い勢いのつく試合でした。2回戦以降は、より引き締まった試合をしたいと思います」

──ゲームプランどおり?
「しっかりセットプレーで安定し、スクラムからプレッシャーをかけようとしました。前半、スコアは7-3でしたが、選手たちのムードが安定していたので、ボールが動けばトライも獲れると見ていました。慶應さんは人数をかけてブレイクダウンに来るだろうと思いましたので、うまくはねのけて、接点の部分で空回りしないようにロースコアで安定した試合をつくろうというプランでした。我慢強く、激しく、思い切り良くと臨みましたが、緒戦の硬さも出るかと心配してもいました。お互い、ディフェンスは悪くないので、手堅いゲームになったと思います」

──対抗戦優勝は自信になったのか?
「実際、優勝は大きかったです。22名だけでなく、部員皆に喜び、エネルギーが与えられていることを、毎日、感じています。学生も苦しかったことを振り返って、充実していると思います。学生は勢いがありますので、喜びを部員たちとさらに共有し、一緒に喜んでもらおうと臨みました。1回戦で勇気付けられましたので、より粘り強く、油断せず28日に臨みたいと思います」

○井本克典ゲームキャプテン
「1回戦から慶應さんということで、自分たちも慶應さんも100%ずつ出せるという試合が現実となり、勝利したのは自信になります。これからの大学選手権での勢いになったと思います。後半、少し、慶應さんの勢いを受けたというか、勢いづかせたことが反省点です。今日は自分たちの成長につながった試合だったと思います」

──引き分けたときとの違いは?
「秋は、帝京が自分たちに集中できず、自滅したところがありました。今日の試合は集中できたのでこういう結果になったと思います」