12月13日(土)、今年も東京・大崎の「ゲートシティーホール」において、第45回全国大学ラグビーフットボール選手権プレイベント「全国大学ラグビー トークバトル2008」が開催されました。波乱の展開となった各リーグ戦、初めて導入された選手権での抽選会など、今回も大いに語っていただきました。
こちらのトーナメントの組合せをご参考に、お楽しみください。

■「全国大学ラグビー トークバトル2008」出演者

○パネリスト
(あいうえお順)
岩出雅之監督(帝京大学)
木村季由監督(東海大学)
中竹竜二監督(早稲田大学)
林 雅人監督(慶應義塾大学)
○コーディネーター
上田昭夫(元慶應義塾大学監督、「IRBジュニアワールドチャンピオンシップ2009」トーナメントアンバサダー)
村上晃一(ラグビージャーナリスト)
○司会
黒氏康博(NHKアナウンサー)

 

黒氏 「それではまず、先日行われた抽選の結果、トーナメント表、決まりました。まず上田さん、このトーナメント表をご覧になっての、率直な感想はいかがでしょうか?」
上田 「慶應がですね、日大のところ、早稲田・関東のとなりとかにいかなくて良かったなという感じがしますね(客席から笑い)。慶應と帝京のところと、次のところを比べるとですね、どちらか勝ったほうが準決勝まで進んじゃうのかな‥‥とか」
黒氏 「いまのお話で、ちょっとお二方(慶應の林監督、帝京の岩出監督)の表情が硬くなったような印象がありますが‥‥」(客席から笑い)
上田 「ボクはあの、慶應のOBって立場じゃないんでね。毎試合毎試合、楽しい試合を観たいなと思って‥‥でもね村上さん、例えば『関西同士』だとか『同じリーグ同士』だとかが出てきちゃったところが残念かなという感じですね」
村上 「そうですね。同じリーグの1位と2位は当てないようにして、みんなが後で抽選をやるということですから、どうしてもそういうところが出てくるんですよね」
上田 「ええ」
村上 「関西代表としては、1回戦、関西が1校上がれるな…というですね」
上田 「初戦突破、間違いないですね」(客席から笑い)
村上 「去年、京産大しか突破できなかった」
黒氏 「そうですよね」
村上 「今年は、間違いなくひとつ突破するな…という」(客席ウケる)
上田 「そういう意味じゃないから!!」(客席ウケる)
黒氏 「"多くの大学にチャンスを与える"というのも、この抽選システムの狙いのひとつですからね」
村上 「福岡大学も、なかなか1回戦突破できなかったけれども、ちょっと可能性があったりして。今回抽選を導入したのは、去年までは少しこう…順位が決まってて、マンネリ化したということがあったと思うんですけども。今年はたまたまというか、もの凄い波乱で、順位がこれまでと全然違うので、別に公開抽選しなくても良かったのかもしれないくらいの、新鮮なカードになりそうな順位だったんですよね」
黒氏 「そうですね。さあ、それでは"当事者"の皆さんにお話を伺っていきましょう。まず、中竹さん‥‥いかがですか?率直なところ」
中竹 「はい。え~我々としては、本当に抽選に救われたという気がしてます」
黒氏 「おぉ~」
中竹 「本当を言うと、この抽選方式は反対ですけど。なぜかというとファンの皆さんからすると、凄い楽しみでいいかもしれませんけども。例えば勝った時のことを考えて、場所も最初決まってないので、全部可能性のあるところを押さえてですね」
黒氏 「なるほど」
中竹 「で、抽選決まった段階で全部キャンセルする‥‥。ということが起こると部に相当な負担がかかりますし。いわゆるアマチュアのクラブですからね」
黒氏 「ええ」
中竹 「これはちょっと厳しいかなというのがあるんですけども、今年はまあ、もう言ってもしょうがないので、我々としては早明戦で負けてしまったので、これをですね『何とか気合入れよう』ということではもう、関東学院さんは一番の相手で、そういう意味では、抽選に救われたなと、今年に限っては。けど、来年はやめて欲しいな、という」(客席ウケる)

中竹竜二監督(早稲田大学) 中竹竜二監督(早稲田大学)

 

黒氏 「ありがとうございました。では、慶應・林監督お願いします」
「私もですね、こういう抽選というのはですね、中竹監督が言われたように、今年で終わって欲しいなと思うんですけども(笑)、結果としては、強い早稲田や関東や東海が反対側のグループにいったことが非常に良かったなと思うんですけど‥‥左側(帝京の岩出監督)から凄いプレッシャーかかってますけども(客席ウケる)。まさか強い帝京大学さんと1回目にやると思わなかった。まあ‥‥死ぬ気でがんばろうというような感じです」
黒氏 「(関東大学)対抗戦、引き分けでしたからね…」
「そうですね。引き分けだったので。でもその後、凄く強くなられたので‥‥困ってます」(客席から笑い)
上田 「(林監督に向かって)雅人、ハッキリ言っていいからね、"トークバトル"だから」(客席ウケる)
「わかりました。あと10分くらいしたら、ちゃんと」(客席ウケる)
黒氏 「このトークバトル前に『ビールが欲しい』とおっしゃってた岩出さん、お願いします」
岩出 「どうも、失礼します。先週の土曜日、おかげさまで初優勝、対抗戦第1位の結果を得ることができまして‥‥(抽選が行われた)月曜日にはもう、その優勝が吹っ飛ぶような…本当に…短い余韻を味わって、切り替えていきます。組み合わせの部分は、今シーズンに関してはもう変わりませんので、まあ、慶應大学の胸を借りるつもりで」(客席から笑い)
黒氏 「あの、先程の控え室とはぜんぜん違う‥‥」
「ぜんぜん違いますよね」
上田 「控え室でのリーダーシップをとっていたのは岩出監督ですから。仕切ってました『(手招きをするジェスチャーで)どうどう…どうどう…』ていう感じでね(笑)」
岩出 「いじめないでください(笑)」
黒氏 「それでは、木村監督お願いします」
木村 「抽選そのものは、ウチの場合も本当に"まな板の上の鯉"といいますか。自分たちでクジ引くわけではないので…。よその大学さんが、引いていくのを順番に見ながら、一喜一憂しないように心がけて平静を保ってたんですけども。終わったあと皆さんから『おまえのとこ本当クジ運いいな』と(客席から笑い)。あの、何もしてないんですけど。そういうような言い方されて、よその大学に対しても凄く失礼だし。ウチは本当に1回戦をとにかくまず平常心でやるということがすべてですので」
村上 「早稲田と関東が当たると決まった時は、ちょっと喜んじゃったりとか?」
木村 「あ‥‥」(客席ウケる)

木村季由監督(東海大学) 木村季由監督(東海大学)

 

上田 「だけど東海は、1回戦で早稲田や関東学院と当たる可能性があったわけで」
木村 「そうですね」
上田 「たしか(関東大学リーグ戦1部)優勝が決まったときのコメントでも、大学選手権でまずどこと当たるか、そればっかり気にしていたような。ホッとしたでしょ」
木村 「え、まあ‥‥」
上田 「ねえ、優勝した監督は堂々としてていいんだよ」
黒氏 「それでは、個別の映像を観ながら話を進めていきたいと思います。まず『早稲田対帝京』11月1日に行われたゲームの映像を観ながら皆さんで話を進めていきたいと思います。J SPORTSさんの映像をお借りしています」
黒氏 「中竹さん、改めてこの試合を振り返って」
中竹 「まあ、ウチの生命線のところですね。帝京さんの一番強いFWのフェーズですね。ここを止めるのが今年の早稲田の強みで、ここで勢いを止めたいと思ったところをやられたんで…これをやられた時点で、試合はちょっと‥‥」
黒氏 「岩出さん、いかがですか?」
岩出 「今の(映像で)ブレイクダウンの接点の部分と、セットプレーの後のスクラムの部分で、どれだけ早稲田さんにプレッシャーをかけることができるかということで…そこはしっかりできた試合で良かったと思います」
黒氏 「相当喜んでらっしゃいましたよね」
岩出 「そうですか(笑)。本当に嬉しかったことは確かですし、チームが育っていくまでに、時間かかりましたから…。そういう意味では、ひとつ山を越えた、というふうに思います」
上田 「あの、FM放送室の前で、ノーサイドの笛が鳴る前にもう、コーチ陣と握手をしてましたね。放送でもお伝えしましたけども」(客席から笑い)
黒氏 「村上さんはどのようにご覧になりましたか?」
村上 「そうですね。今年は関西ばっかり行ってて、この日は現場にいなかったんですけど、映像を観て、やっぱり帝京強いなと思いましたね。ディフェンスが非常にいいですよね」
上田 「ターンオーバー2回…、こぼれ球含めて3回ありましたかね」
黒氏 「林さんはこのゲームは、ひとつ参考になったでしょうか?」
「そうですね。嫌な部分が参考になりました(笑)」
黒氏 「木村さんは、この両チームはどのようにご覧になってましたか?」
木村 「まあ、リーグ戦とは関係ないので。他人事のように」(客席ウケる)
黒氏 「おっしゃるとおりです」
上田 「村上さん、この試合と早明戦と、何となく早稲田に似ている部分が、ちらっと見られたような気が」
村上 「そうですね。同じような感じで負けた気もしますね。そのへんは中竹さん、どんなご感想を」
中竹 「現象としては同じですね。やっぱり接点の部分で受けてしまっているので、まあ、原因はちょっと違うかなと思うんですが」
上田 「今年は早稲田が2敗するという珍しい結果でしたね」
黒氏 「中竹さんはこのゲームの後、選手たちとどういう話をされたんですか?」
中竹 「負けるべくして負けましたね。まあ、今年はいろいろヤマがあるからっていう話をしてたんで。"こういう経験をすれば人は必ず学んで強くなるっていうもんじゃないよ"っていう話をして、(客席から笑い)やっぱり、そしたら明治戦もおんなじような試練が来てですね。今年はだから"Dynamic Challenge"というスローガンを掲げて、逆境を乗り越えていかないとね、という話はしました」
黒氏 「豊田君をキャプテンにしたこと自体が"Dynamic Challenge"だっておっしゃってましたね」(客席ウケる)
中竹 「まさにそうです。最初から最後までそれでいいです。2敗しようが、これが今年のラグビーです」
黒氏 「それでは今度は、早稲田のいいところが出て、林さんが『見たくない』と言っていた早慶戦の映像をご覧いただきましょう」
黒氏 「(映像を観ながら)林さん、このあたりどうでした?」
「後半の入りとしては最高だと思います」
黒氏 「後半に入ってから中竹さんどうでしたか」
中竹 「選手たちは、たぶんいつでも行けるっていう感じでしたけれども、なかなかそれがうまくいかなくて、フラストレーションが溜まってって」
黒氏 「『ラスト10分のゲームをやりたかった』って先程おっしゃってましたよね」
中竹 「そうですね。あそこまでいくのに時間がかかって。あの10分が、毎回どんな試合でも出るわけじゃないので…。『前半から出せるようにしましょう』という話はしましたね」
黒氏 「さあ続いてリーグ戦です。東海大学と関東学院大学の11月30日の試合です」
黒氏 「試合前のイメージと、戦ってのイメージ、どうだったんですか?」
木村 「前半、風下だったんで…非常に関東学院さんも個々に強いプレーヤーがたくさん居るんで、接点の話たくさん出てるんですけど、そこで後手にまわらないようにということで、話はしてたんですけども。セットプレーが少し不安定でしたね」
黒氏 「しかし、終盤はかなりいいかたちができましたよね」
木村 「…そうですね。落ち着いて攻める時間が後半はあったんで、それでやっぱりペースをつかんだんでしょう」
黒氏 「そしてこの後は、徐々に東海ペースになってきました」
木村 「そうですね…。練習で成功したことないんですけどね」(客席、大爆笑)
黒氏 「そうなんですか(笑)それがやっぱり今年の強さですか」
木村 「いやあ、ちょっとずつ、しぶといところが出てきたんではないかと」
上田 「"粘り"が出てきましたね、東海は。シーズン深まれば深まるほど、まとまってきたというか」
黒氏 「今度はいろいろなデータを見ながら、今シーズンを振り返っていこうと思います。まず、村上さんに挙げていただきましたが」
村上 「(各チーム成績のデータを見ながら)得点・失点、数字を見ていくと、もちろん当たり前なんですけども、上位のチームはディフェンスが非常にいいですね。失トライが少ない。それから総失点も少ないですね。得点力に関しては、唯一対抗戦で、早稲田が帝京を上回ってますけれども。他のリーグは得点力・失点ともに1位のチームというのは、それなりに相応しい数字を出してますね。関西学院もそうなんですけども、非常にディフェンスを強調しているチームが多いなという気がしますね」
黒氏 「トップに立ってらっしゃいます岩出監督、いかがですか?」
岩出 「もう少し、あと20~30点取っといたら良かったかなと(笑)。どちらにしても、ゲームの組み立てとして、大方のゲームは自分たちの"強み"を出すために、ディフェンスのほうはしっかりとやろうということで、いつも送り出してますので。そういう意味では、対抗戦の"失トライ数"が少ないということは、しっかりと選手たちががんばってくれたということで。また、それを軸に我々のラグビーでどうトライできるか、クロスゲームにうまく持ち込みながら、ゲームの安定性をこう勝ち取ったなということで、いいシーズンだったんじゃないかと思います」
黒氏 「そして、早稲田。中竹さんはいかがですか?」
中竹 「まあやっぱり"トライ取られてるな"というのが正直な感想ですね。去年なんかやっぱり勝ってる時は、全然取られる感じはなかったんですけども。今年は数字としても点を取られ過ぎてるなという認識はありますね。まあ取る点数に関しては、あんまりこだわってませんので。実力は失点のほうが如実に出るので、このとおりだと思いますね」
村上 「得失点差がだいぶありますよね、3位と」
黒氏 「マイナス64ですからね…」
村上 「マイナスで3位って…凄いですね(客席ウケる)31トライも取られてる」
中竹 「慶應のデータはないんですか?」
「分かってるのに‥‥」
上田 「慶應は日体大に負けてるから(この表に)出られないんですよ」
「グサっときますよ」(客席、大爆笑)
村上 「でも殆どのファンの人は、慶應が3位だと思ってるんですよね」
「ありがとうございます!」
上田 「でも、今シーズンみたいに抽選があると、3位も4位もあんまり関係ないんだよね」
「そ、そうですね」
上田 「抽選に強いか弱いかで決まるかもしれない」(客席から笑い)
黒氏 「続いて、トライランキングですね。さすが中濱寛造君は17トライ。あの(早稲田の)西辻選手(19トライ、2000年)の記録に、あと2トライと迫ったんですが」
村上 「早稲田のウイング2人で、30トライも。これは凄い数字ですよね」
黒氏 「しかも田中渉太選手は、『中竹さんに14番に起用してもらって感謝しています』と言ってましたけど、この14番起用が当たりましたもんねえ」
中竹 「そうですね。記者の方たちなどにも、どうして11番じゃないんですか?って言われたこともあったんですけども。どう考えても僕たちは14番だなと思ってて。本人はずーっと『11にこだわります』っていっていたけれども、14にしてから劇的に良くなったんで」
村上 「それは分かりやすく言うと?」
中竹 「え~。こういうのは林さんが、一番詳しいかと思いますが‥‥(客席から笑い)どうしてもスクラムもそうだし、ラグビーってこう、右ラインのほうがボールが回ってくるスペースが広くなる。で、左ラインのほうは、大体スクラムでもハーフが居ますし。そうすると"強いほうに11番(左ウイング)、速いほうに14番(右ウイング)"というのが、いわゆる普通の起用の考え方なんですね」
黒氏 「田中君は、左手のほうがハンドオフが強いっていいますしね」
中竹 「そうですね」
黒氏 「あと、どうしてもボールは右手で持つんで、右サイドのほうが走りやすいっていう」
中竹 「それなのに、なんで11番にこだわってたのか、よく分かんない」(客席、大爆笑)
中竹 「往々にしてあるのは、高校時代の得意パターンにみんなほとんどとらわれるんですね。フロントローもそうで、高校時代にやったほうが得意ですって言うんですけども。そもそも大学のスクラムなんて、経験値はあんまり関係ないですからね。右左も関係なくて。ウイングもそうだと思いますし、ロックもそうだと思います。それをきちっと言えば、みんな素直なんで『やっぱボク14ですね~』って」(客席から笑い)
黒氏 「洗脳しましたね」
中竹 「いえいえ。自分が気づいてくれたかなと」
黒氏 「中濱君の17トライについてはどうですか?」
中竹 「今年の早稲田の戦い方がよく出てるなと思ってて。去年は最終的に豊田が、バーっと。よそのチームからは『早稲田はモールだけだ』とかって言われてですね。いや、本当はそうじゃなかったんですけども。モールで取りきっちゃうんで、モールが多かったんですけども。本来、理想としてはウイングでトライ取るのが、我々のやりたいラグビーで、今年はそれが‥‥最後のほうはね、ちょっとあれですが」
黒氏 「3位には、帝京の伊東君が入っています」
岩出 「彼は2試合しか出てないんですよ。そのうちの1試合で4トライをして、あと1試合で2トライ。来シーズン以降は期待してます。秋からの復帰で、ちょっとまだコンディションがしっかりしてないところがあるんですが。先程の右ウイング・左ウイングに関してですけど、"右にしか走れない"って子もいますよね?どうですかね?」
中竹 「得意なステップのほう、というのはありますね」
岩出 「それ、前ウチのウイングで足の速い選手、Kっていたんですよ。右にしか踏めないんですよ」
中竹 「彼は14番でしたよね?」
岩出 「14番です。だから抑えられると…」
中竹 「田中は両方踏めますよ」(客席ウケる)
岩出 「高校時代、11番ですよね」
中竹 「そうですね。高校時代11番ですね。早稲田でも3年間11番ですけども」
黒氏 「(東海の)木村さん、いかがですか」
木村 「6(トライ)ですからね‥‥リーグ戦は少ないですよね」
黒氏 「なにか理由は?」
木村 「おそらく、どこからでもトライが取れるようなチームづくりをやってきたので、それが理由かと思います。それに去年はモールからトライというのも多くて、今年はボールを動かしているときが多いので」
上田 「やはりELV(試験的実施ルール)が導入されたので、モールで攻められなくなったというのが大きいですね」
黒氏 「次は得点ランキングです。こちらもやはり中濱君がトップ、次ぎに田中君です」

関東大学対抗戦A
中濱寛造 早稲田大学 85点
田中渉太 早稲田大学 65点
大澤雅之 日本体育大学 56点
関東大学リーグ戦1部
文字隆也 法政大学 91点
三友良平 日本大学 54点
市原編夢 東海大学 39点
関西大学Aリーグ
宮本啓希 同志社大学 78点
小樋山 樹 関西学院大学 69点
大久保教全 同志社大学 60点
村上 「関西では、同志社のトライゲッターの大久保選手、それから関西学院の長野選手は、本当に速いですね。
上田 「大学だとトップリーグとちがって、ペナルティゴールをあまり狙わないじゃないですか。ということはトライゲッターが得点ランキングでも上に来る、ということですよね」
黒氏 「次にキーワードから語っていただきましょう。波乱、です」
村上 「常連の明治・大東・京産大・大体大‥‥今回はいないですよね。いかに各リーグで波乱が起き、順位が変わったかということです」
上田 「関西リーグがね、京産大が同志社に負けたら最下位、勝てば5位なんてことになって、関西がまったく予想がつかなかった。あとは対抗戦で早稲田が久しぶりに負けたこと‥‥あ、初戦で慶應が日体大に負けたっていうことも(笑)」
中竹 「そうですね、波乱でなく、実力の結果という部分もあるのかと。帝京さん、明治さんとは力負けで、早稲田が負けて波乱というのは、相手チームに対して失礼かなと正直、思います」
上田 「夏合宿で帝京の試合を観ましたけど、非常に安定していましたね。ふたりの外国人選手も含めて」
村上 「リーグ戦はどうなんでしょうかね」
木村 「リーグ戦は、やってみないと分からないみたいなところもあって、入替え戦に行かなくてよかった、なんて思いも頭の隅にはありまして‥‥けっこう難しいんですよね」
黒氏 「波が大きいチームが多いとか」
木村 「はい。ゲームが大味になることが多いのも、そのへんに原因があるのかもしれません」
上田 「大東大も全敗だけれども、点差は少ない。あれが、タラレバで勝っていたら勢いづいていたかも、というのがリーグ戦ですね」
木村 「そうですね、はい」
上田 「たしかに10月のリーグ戦は‥‥ちょっと緊張感がないというか‥‥」
木村 「それがリーグ戦のいいところなんですよね」(客席ウケる)
上田 「なんか、のどかというか、秩父宮の東スタンドのお客さんものどかなんだよね」
黒氏 「次は"初優勝"。帝京大学は創部39年目で初優勝です」
岩出 「だいぶ時間がかかりましたけど、たいへんうれしく思っています。これまで多くの方達にお世話になりまして、その積み重ねの結果と思います。その方達と共に、そしてその方達に感謝できる優勝になりました。またここまでのあいだに、その裏返しに多くの敗戦があったわけですが、早稲田・慶應・明治さんに挑みながら、跳ね返されながらいい勉強ができた積み重ねが、この結果につながったと思っています」
上田 「帝京は去年、対抗戦で早稲田に8-61でしたか、負けてますし、しかも4位からですからね」
黒氏 「去年、大学選手権の準決勝が転機になったとか」
岩出 「一番の転機というか、はっきりとチームの方向性が定まったのは、対抗戦の早稲田戦でした。勝ったゲームは意外に反省点が多い。負けたゲームは、負けていくことで、ネガティブな発想でなく、出来のよかった点がたまっていきますので、早稲田戦でトライを多くとられた原因とか、我々のゲームの運び方とか、しっかりと見えたゲームがそこでした。そこから(大学選手権の準決勝で早稲田と対戦した)正月までうまく成長してくれましたので、そこで何が足りなかったか、というところからスタートしたのが今年の新チームですので、いいステップアップができました」

岩出雅之監督(帝京大学) 岩出雅之監督(帝京大学)

 

黒氏 「今度は、大学選手権の初優勝に挑まれるわけですが」
岩出 「まずは初戦‥‥」(客席ウケる)
黒氏 「木村さんも初優勝に向けて‥‥」
木村 「え、(小声で)滅相もないことです‥‥去年も2回戦で慶應大学さんにこてんぱんにやられてますんで、まずは一戦一戦。(準決勝の)国立も経験していないことなので、そこを目指してがんばっていきます」
黒氏 「次はうまく使ったチーム、苦しんだチーム、ELVですね」
村上 「モールを引き倒してもいいと、モールに対する防御方法が増えたのは、明治にとっては非常に大きかったと思います」
黒氏 「6割がモールからのトライだったそうですから」
上田 「ここにいる4チームは、ELVをうまく使えているのではないでしょうか。ロングキッカーがいて、セットプレーが安定していて、ボールをけっこう動かすというところで」
黒氏 「林さん、キックをかなり多めに使っていらっしゃいますが」
「そうですね。使い過ぎという批判もあるので(笑)」

林雅人監督(慶應義塾大学) 林雅人監督(慶應義塾大学)

 

上田 「ELVでモールの練習が減ったということはあるんでしょうかね。木村さん」
木村 「練習は減ってはいませんが、見切りが早いですかね。だめだとなったら、次のプレーに切り替える。モールを使わないということではないです‥‥でも練習は‥‥してないですかね」
上田 「さっきと言ってることがちがうじゃないですか」(客席ウケる)「こういうのにだまされちゃあ、いけない。岩出さんは?」
岩出 「うちは減りましたね」
村上 「あとキックは増えましたねー。練習も増えているんでしょうか」
「もうテニスコートみたいに」(客席ウケる)
上田 「トップリーグでは、キックが多かったんですが、キックに対する布陣がしっかりしてきて、むしろボールを回すようになってきています」
黒氏 「次のキーワードは、リクルートです」
上田 「今年の早稲田はすごいらしい」
中竹 「去年とおととしと、上田さんのやり方を学んで、今年は成功しましたね。ほんとに。地方に行ってですね、『うち、落ちるから。落ちるけど、受験てそもそも、チャレンジすることだよね』」(客席ウケる)「『受かるかどうかわからないけど、チャレンジして受かった人間だけが、チャンスつかむんだよね』って話をしてですね、これまでなら恐くて受けなかったような人間が今年はすごく受けてくれてて‥‥初めてです、こんなに取れたのは‥‥受かってくれたのは」
上田 「(林監督に)雅人さ、慶應を希望している高校生にですね、中竹さんはご自宅に行って本人のご両親にも会って‥‥本人悩んだけど結局慶應に入るという選手もいますから」(客席ウケる)
中竹 「上田さんの話は大げさになって‥‥自宅には行ってませんし」
上田 「本人と両親には会ってるよね」
中竹 「本人には会ってますけど、両親には会ってません」(客席ウケる)
上田 「ごめんなさいね」
中竹 「上田さんは、2回目になると、いっしょに旅行に行ったとかってなるんです」(客席爆笑)
黒氏 「岩出さんはいかがですか」
岩出 「じっと待ち、ですね。今シーズン、うちで1年生で活躍している選手も、早稲田を落ちて、来たんですけれども‥‥早稲田さん、慶應さんが歩いたあとを、じーっと」(客席ウケる)
上田 「ボンドとツイの、ふたりの外国人、すごいと思うんですが、どういういきさつだったんですか。直接、口説いたわけ?」
岩出 「はい、ぼくがみて、いいなあと思って」
上田 「すごくチームに馴染んでいる感じなんですよね」
岩出 「外国人選手をとるポイントは、人間性ですね。プレーの質がよくても、日本の文化にどれだけ頑張って入ってきてくれるかだと思うんです。練習も生活も、君らの文化と違うけれども、ここは我慢して、と」
上田 「ジャパン候補だよね」
黒氏 「そのジャパン(マイケル・リーチ選手)がいる、木村さん」
木村 「はい(高校のときから)日本で生活してますからね。外国人選手というより、日本の文化をよくわかっているので、日本で育ったという表現のほうが正しいと思います。マイケル・リーチは、札幌山の手高校の出身で、そこの佐藤先生や地域の方があったかくて、その環境が彼にとってはすごくよかった」
村上 「日本人選手のリクルーティングではどんな努力を」
木村 「全国をまわって、とにかく信頼関係を築いていくしかないので。あと付属高校があって人的交流もしているんですが、最後の最後でよそに行っちゃって‥‥(笑)」