「勝てる相手」と感じながらもミスが響いて35点差での敗戦

一戦、一戦、成長を続ける自信を次戦のウェールズ戦で活かす


3日、「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ2018」参加のためフランスに滞在中のU20日本代表が、大会第2戦となるU20オーストラリア代表戦を戦い、19—54で敗れた。
前半29分までは12—14と互角の戦いを見せた日本だったが、要所要所でのミスが響いて、後半21分以降オーストラリアに4トライを重ねられるなどして、最終的には35点差での敗戦となった。

これでプール戦二敗となったが、その一方で「スピードとパワフルさをミックスしたアタックの時に完全にノミネートできていた。負けという代償は大きいが、つかんだものも大きい」(遠藤哲ヘッドコーチ)と、自分たちのラグビーが世界トップに対しても十分通用する感触もつかんでいるU20日本代表は、現地時間の7日、世界8強入りを狙ってプールA第3戦となるU20ウェールズ代表戦を迎える。

「ニュージーランド戦でも良くなかった前半の入りの部分を修正できなかった」
80分間、体を張り続けたFL岡山仙治キャプテンが、試合後そう悔やんだ立ち上がり。4日前に対戦したニュージーランドよりはダイレクトにフィジカルを生かすアタックを仕掛けてきたオーストラリアに、3分、6分と連続トライを許して、いきなり0−14とリードされる苦しい展開となった。

それでも、「自分たちは1対1で勝つチーム」(同キャプテン)を公言し、初戦の王者との対戦でも世界と戦える感触をつかんでいた日本は、前に出るディフェンスでオーストラリアのアタックを分断してミスを誘い、15分にはモールを押し込んでつかんだチャンスの後、ゴール前ラインアウトからFB山沢京平が強引に近場のスペースを突いてトライラインを超えた。
続く20分にも、FWが勢いよく前に出て敵陣22m内に入った後、「あそこはFWでこだわっていく地域だったが、外に大きなスペースがあったので、しっかりスペース見て蹴った」という好判断から、SO侭田洋翔が逆サイドで待つFL山本凱にキックパスをつないで連続トライ。
試合の4分の1が経過した時点で試合をほぼ振り出しに戻すことに成功した。


前半20分、トライを決めるFL山本。一旦は2点差に追い上げた日本だったが、最後は根負けした


初戦でウェールズに敗れているオーストラリアはプールA最終戦でニュージーランドと戦うだけに、上位進出のためには日本には絶対に負けられない状況。
そんな追い込まれた状況もあってか、2点差に追い上げられた後のオーストラリアは日本に対して最も優位に立てる部分をむき出しにするかたちで主導権を握りにきた。
すなわちサイズを生かしたパワープレーでボールキープ率を高め、29分、37分とFWが連続トライを決めたオーストラリアが28—12とリードを広げて、前半を終了した。

「本物のチームになりつつある。負けという代償は大きいが

つかんだものも大きい」(遠藤HC)

16点差にリードを広げられるかたちとなったとはいえ、ハーフタイムで日本チームに漂っていたのは、自分たちのラグビーを貫けば絶対いけるという雰囲気だった。
「前半やってみて『勝てる相手だ』というのは全員が感じていた」(岡山キャプテン) そんな感触どおり、後半に入っても「コンタクト1対1では負けていない。そこを武器にして、ディシプリンを守って、みんなで1歩1歩前に行けていた」(SH藤原忍)という強固なディフェンスで、ボールキープしながらパワフルに攻め続けるオーストラリアのアタックを止め続けた。


前に出て低いタックルで止めるDFは通用。自分たちのプレーに自信を深めてウェールズ戦へ

サイドが変わって20分を経過しても、後半のスコアは0−0というタイトなゲームが続いたが、最後の最後で日本は根負けするかたちになってしまう。
残り20分でインパクトプレーヤーを投入してボールを動かし始めたオーストラリアの攻めに後手に回るかたちで、21、24、27、30分と4連続トライを決められて、勝負あり。 後半、守り一方となってしまったことでの疲労の蓄積もあったのか、一気に緊張の糸が切れてしまうかっこうとなった。
「あの展開でも、走れるという意思を持つ、スイッチオンするという大切さ。それは選手たちもわかっているようで、試合後、『あそこで本気だったら走れるだろう』という声が選手の中から出ていた。理屈じゃない部分。本物のチームになりつつある。負けという代償は大きいが、つかんだものも大きい」(遠藤HC)


試合後「本気だったらまだ走れた」ことを確認するU20日本代表。さらなる成長につなげたい

そして、ハーフタイムで先発メンバーが「勝てる相手」と感じていた手応えは、試合終盤に投入されたリザーブメンバーが証明してみせることになる。
終了1分前に敵陣深くのスクラムから攻め切って、途中出場のCTBシオエリ・ヴァカラヒが意地のトライを返した。
「最後のトライを、劣勢の中取りにいくと決めて取れたのはチームにとって大きい。リザーブが全員入った状態で取れたのは、あと3試合に向けての、いい軌跡」(同HC)で、勝負どころで競り勝てなかった敗戦ではあったものの、ポジティブなかたちで世界の強豪との対戦を終えられた。


終了間際にリザーブメンバーでトライを取り切った点もポジティブになっていい要因だ

「試合の途中で、オーストラリアの方がしんどくなっている状況で、自分たちにミスが続いて、後手に回ってしまった。せっかく、みんなディフェンスで体張ってターンオーバーしたボールなのに、簡単に捨てすぎている。そういうボールだからこそ、ミスなくトライまで運びたい。アタックの継続さえできたら、ゲインもしっかり取れていたし、前半、いいアタックでトライも2本取れた。次のウェールズ戦ではミスなくアタックを継続し、振り回していくようにしたい」
167センチというサイズながら、日本のラグビーが世界で通用することを体現し続けるFL岡山キャプテンは、結果的に35点差をつけられての敗戦をそう総括。

そして、まだまだセットプレーやキックを使ったゲームコントロールという部分でも課題があるのは事実だ。
「もっと突き詰められた。スクラムではローネスをテーマに上げていて、もっと低くできる。まだ相手に合わせているところがある。もっと低くできれば、ボール出しのところとかで相手にプレッシャーをかけられたりする。ラインアウトは正確なプレー。細かいところを意識していけば、もっといい流れをつくれる」(HO新井望友)

「ボールを回しながらキックを蹴っていくというところを練習からやってきたが、そのボール回すところで、ミスがあったり、相手に取られたりした。次に向けてはミスなくコミュニケーションとりながら、試合を進めたい」(SO侭田)

ニュージーランド、オーストラリアという強豪に対して2戦2敗となった日本だが、まだ8強入りの可能性は残されている。
「1試合、1試合、成長、進化するチーム」(遠藤HC)という特徴を生かし、自分たちのラグビーが世界で通用する感触をつかんでいるU20日本代表は、プール戦初勝利をウェールズ戦で狙う。

text by Kenji Demura