1戦、1戦、成長、進化するチーム」を証明しつつ

豪州戦以上のパフォーマンスでプール戦初勝利を狙う

 

「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ2018」参加のためフランスに滞在中のU20日本代表が、現地時間の7日、プール戦最終戦となる対U20ウェールズ代表戦を戦う。

ここまで22敗ながら、自分たちのラグビーが世界のトップ国に対しての十分通用する感触をつかんでいる日本は、プール戦でオーストラリアを破り上位進出を狙うウェールズに対して「1試合、1試合、成長、進化するのが、このチームの特徴」(遠藤哲ヘッドコーチ)であることを証明し、金星を狙う。

  

「スピードとパワフルさをミックスしたアタックをした時は完全にドミネートできていた。負けという代償は大きいが、つかんだものも大きい」(遠藤哲ヘッドコーチ)

プール戦2戦目のオーストラリア戦では、初戦に続いての試合の入りの悪さからいきなり14点をリードされたものの、前半15分、20分とトライを重ねていったんは2点差まで追い上げ、後半も20分間は0-0と互角に戦った後、試合終了間際には「リザーブ全員が入った状態で取れたのは、あと3試合に向けてのいい軌跡」(同HC)となるトライも奪ってみせた。

豪州戦の最後にリザーブがトライを取り切ったことをウェールズ戦に生かしたい

敗戦の中にも「しっかり戦える感触はつかめている」(HO新井望友)と、世界で戦う自信も深めながら迎えるプール最終戦。

 

前述のとおり、ウェールズは初戦でオーストラリアを破ってはいるものの、「オーソドックスなラグビーだし、僕らが差をつけるのにはもってこいの相手。すばしっこさとか、動き出しの早さを前面に出す。動き勝つ、走り勝つというところ見せたい。こんなラグビーをジャパンはしてくるのか、というのを明確に出していきたい」(遠藤HC)と、日本のスタイルを十分に生かせれば勝利は見えてくるとU20日本代表首脳陣は分析している。

 試合に入りもポイントに。日本が先制する展開に持ち込みたい

当然ながら、ハーフタイム時点で「『勝てる相手だ』というのは全員が感じていた」(FL岡山仙治キャプテン)というオーストラリア戦以上のパフォーマンスを見せることが、過去10大会中3度ベスト4(準優勝1回)に勝ち上がっているウェールズを破るための絶対条件になるが、そのためには改善しなければいけないポイントがいくつもあるのは事実だ。

  

「ミスが起きても十分にそれを埋められる

トランジットでの力があればいい」(遠藤HC

  

「プレッシャーがかかる中でミスが起きている。トライを取られているのもミスからのターンオーバー」(遠藤HC

「せっかく、みんなディフェンスで体張ってターンオーバーしたボールなのに、簡単に捨てすぎている。自分たちにミスが続いて、後手に回ってしまった」(岡山キャプテン)

ここまでの2試合では、自分たちのミスから相手にカウンターアタックを許し、トライを奪われるケースが多く見られた。もちろん、ミスをしないのが理想だが、ミスが起きた時の対処の仕方もウェールズ戦ではポイントになりそうだ。

「ネガティブポイントを見つけて、そこをなくそうとするのだけじゃもったいない。ミスが起きても、それを埋められるトランジットでの力があればいい」(同HC

 

再び前の試合から中3日という短い時間で集中的に取り組まれたのも、攻守の切り替え=トランジションでの意識改革だ。

体育館での室内練習なども取り入れながら攻守の切り替え意識を高めるトレーニングは続けられた

 

加えて、前述のとおり、2試合連続して立ち上がりの入り方に失敗しているだけに、最初のキックオフから自分たちのペースをつかむことも金星の条件になるだろうし、オーストラリア戦では最後の20分で離されただけに、試合の終盤に「もう一度スイッチオンする、走れる意思を持つ」(遠藤HC)戦いができるかどうかも日本が際どい勝負をものにするための条件となることも間違いない。

 

「ボール回しながらキックを蹴っていくというところを練習からやってきたが、そのボール回すところで、ミスがあったり、相手に取られたりした」と、SO侭田洋翔が言うように、ここまでは日本が意図するキッキングゲームを仕掛けられていないのが現実だし、セットプレーの精度もまだまだ上げられるはずだ。

日本のキッキングゲームの出来も勝敗を左右しそうだ(写真はCTB森)

「スクラムはもっと低くできるし、ラインアウトは正確なプレーと細かいところを意識していけば、もっといい流れをつくれる」(HO新井)

 

ニュージーランド、オーストラリアという強豪国に「自分たちは11で勝つチーム」と、本気で挑んだからこそ浮上してきている種々の課題を修正できた時、金星は手に届くものとなる。

 

photo and text by Kenji Demura